日経ビジネスダイジェストに酒井耕一さんのコメントが入っていて、ちょうど自分が関心あった分野だったので早速読んでみた。以下に、その内容を抜粋した。
酒井耕一の「グローバル企業最前線」
イチロー氏、柔道家・山下氏から学ぶ 新年の号の企画で、シアトル・マリーナーズのイチロー選手と、柔道・五輪金メダリストの山下泰裕・東海大学教授とそれぞれお会いする機会があった。
米国でも年間200本安打を連続して放つイチロー選手と、現役時代に203 連勝を打ち立てた山下教授。
まさに世界を舞台に活躍する「グローバル・ジャパニーズ」と呼べるだろう。
イチロー選手と山下教授に共通していたのは、日本人としての強い自覚だ。
イチロー選手は、プロ野球選手の国別対抗戦である
「ワールド・ベースボール・クラシック」
に高い関心を持っていた。
今は日本代表として準備に余念がない。
山下教授も日本のお家芸である柔道を世界に普及させることに尽力している。
昨年末にもロシアに飛び、ウラジミール・プーチン大統領と会談した。
2人の言動から、日本人や日本企業が世界で活躍するための条件が多く読み取れた。
もちろん、世界を相手にしなくても、自己実現や向上のためにも役に立つ。 それらを5つにまとめてみると…。
▼イチロー氏と山下教授の5つのルール
1・好きな気持ちを失わないこと。
激しい練習と怪我を乗り越えて勝利を続けた山下教授は
「向上心があれば、稽古に前向きになれる」と言う。
つまりどんな厳しい稽古でも、自分の成長や技の向上につながるという気持ちがあれば、苦行にならないというわけだ。
逆にその気持ちがないと、
「やらされている稽古」
になり、苦痛が増すだけだ。
前向きな気持ちを保つのは、自分が好きで続けているというシンプルな気持ちを忘れないことだろう。
大変な時も、原点に返ることで気持ちを整理できる。
2・状況を受け入れること
200本安打を続けるイチロー選手は
「リラックスして打席に入ることはできない」と語る。
プロ選手として、大勢の観衆の声援を浴びる中で、ヒットを打ってこそ価値があるという信念だ。
周囲は安易に「気楽に」とか「自然体で」と言うのだろうが、そんな状況ばかりではない。
重圧を感じたら、無理に押しのけようとするより、重圧を感じる自分を自覚して受け入れることを繰り返した方がいいというわけだ。
緊張したり、不安に思ったりすることは誰にでもあるが、自分でそれを自覚するだけでも余裕があるということ。
リラックスより自己認識が大切だ。
3・結果だけでなく過程を大切に
山下教授は
「選手は優勝を目指すが、それだけでなく優勝するにふさわしい選手になることが大切」
と言う。
結果はもちろん大切だが、その過程もまた重要なのだ。
柔道を勝負と見れば、勝ちを追い求めるのは当たり前だが、武道と見れば、勝者にふさわしい振る舞いがなければ勝つだけでは意味がない。
結果ばかりを追い求めると、道の神髄に欠けてしまうこともある。
過程を重視して「ふさわしい言動」にも注意することが成長の糧となる。
▼企業人は「肩書」に気を取られがちと指摘
4・優先順位を明確に
イチロー選手はプロとアマの選手の違いについて、
「アマは自分がうまくできたことをよく覚えている。プロは自分が失敗したことをよく覚えている」と指摘していた。
プロともなれば、うまくいくのは当たり前で、失敗事例こそ後々まで検証と改善が必要ということだ。
なるほど誰にでも行動には「プロ」と「アマ」の部分がある。
例えば、英会話を仕事で使えるようにするにはプロ並みの取り組みがいるだろうし、旅行のためならアマでいいだろう。
自分の行動に色づけをすると優先順位が分かってくる。
自分の持つ時間とお金とエネルギーをどう最大効率化させるかは、プロ選手のみならず誰にとっても課題となる。
5・人を大切に
イチロー選手と山下教授はともに
「ビジネスのことは詳しくない」
と断りながらも、企業人が「偉さ」に敏感な点を指摘していた。
イチロー選手は
「社会に出ると自分を大きく見せようとする人が多い。しかし、その中に本当に大きい人はいない」と語る。
「ふさわしさ」を重視する山下教授も肩書ばかりを追い求める姿勢を嘆いた。
スポーツ選手から見て、企業人がそのように映っている面があるのだなと印象に残った。
要は、どんな相手に対しても肩書ではなく、自分の心を見せて、誠実に接しようということだろう。
組織にいるとその立場を優先しがちだが、時には視線を変えることも大切だ。
2006年はまだ11カ月あるので、5カ条を参考に活動してみてはどうだろうか。 (酒井 耕一)