前回から引き続き、『悲しい出来事』の後篇です。
次の日の朝、お店に行くとやはりゴローさんは待っていました。
その日も、とても嬉しそうにしっぽをブンブン振って近づいてくるゴローさん。
軽く遊んであげていたら、大家さんが声をかけてきました。
「朝、小学生が登校中に吠えられていた、このままでは良くないから、県の保健所に電話をして引き取ってもらうように連絡をしておいたから。」
まあ、確かに仕方がないですよね。と返し、店の準備に取り掛かりました。
午後、お客さんがひと段落し、庭先で近所の方たちとゴローさんの事を立ち話をしていると、一台の車が。
近くの小学校の先生でした。
登校中に野良犬に吠えられた生徒に聞き、見に来たとの事。
既に大家さんが保健所に連絡している事を伝え、
それでも引き取りに来るまでに数日がかかる事を考え、引き取りに来るまでの間、店で預かる事にしました。
使っていない犬の首輪をお向かいさんからお借りし、店の裏手の木にゴローさんを紐で結びました。
ゴローさんは嫌がるのかと思いきや、心なしか安心した様子で、木を中心に嬉しそうにぐるぐると回ったり、「なでて、なでて!」とおねだりしてきます。
きっと本当に飼い犬だったんだろうなぁ、と改めて思いつつ、紐でつないでもあるし、数日で引き取りに来るから餌をあげても大丈夫だろうと思い、店で残った”おいしい”サツマイモをあげたら、とてもおいしそうに食べていました。
それからしばらく、
まるでうちの飼い犬のように相手をし、大家さんも餌をあげてくれるなど、協力をしてくれました。
その間、ゴローさんは朝とても嬉しそうに出迎えてくれ、毎日餌を食べ、安心して寝ているようでした。
そして私たちは、別の事を考えるようになったのです。
「ゴローさんを飼えないだろうか?」
老犬だし、人に懐いているし。
でも借りている身だし、家では既に別の犬を飼っているし。
引き取られても、里親が見つかるかもしれないし…と堂々巡り。
いずれにしても、その日が来るのを待つ事しかできませんでした。
そして、その日。
ゴローさんが引き取られる日。
その日の午前中、引き取りの職員2人がワンボックスの車で到着。
その車は後部に檻がついており、中には既に一匹のワンちゃんがいました。
そのワンちゃんも引き取られたのだと思いますが、きれいな首輪をしたカワイイ中型犬でした。
1人が先にロープの輪っかのついた棒を手に持ち、ゴローさんに近付いて行きました。
ゴローさんは近づいてくる職員にしっぽをブンブン振りながら
「遊んで、遊んで!」とばかりに前足をあげて立ち上げるような格好をしています。
その格好を無視し、職員は棒の先のロープをゴローさんの首にかけ、抑えます。
もう一人の職員が、
「首輪はいらないので、できれば外して下さい。」
首輪をはずし、棒の先に括られたゴローさん。
車の後ろまで連れて行かれた次の瞬間、
一本背負いのように、棒が振られ、ゴローさんは宙を舞い、そのまま車の檻に投げ込まれました。
”檻”のように見えた鉄格子は、外から中へ開くようにできており、
鉄格子にそのまま投げ込むと、犬が中に入っていくようにできていました。
刹那、「キャン」と一声挙げたゴローさんは、そのまま鉄格子のなかの犬となりました。
あまりに粗雑な対応。
もちろん、粗暴な野良犬がいる事も知っているし、病気を持っているかもわからない。
職員の方たちも仕事だし、危険な目にもあった事もあるだろう。
それでも!
分かっていた事ですが、なんだか怖くなり、
聞かずには居られませんでした。
「この子たちは、里親とかに紹介されたりするのですか?」
「いや、すぐに処分します。小型犬や子供の犬なら分かりませんが、このくらいの大きさだとそういった事はしませんね。引き取り手がいないので。」
そして、ゴローさんを乗せた車は何もなかったように次の現場へ移動して行きました。
やるせなく、
何も言葉が出てこない。
その後、私たちは色々な事を知りました。
ものすごくたくさんの数の犬たちが捨てられている事。
ものすごくたくさんの数の犬たちが殺処分されている事。
特に、茨城県の殺処分数は全国でワースト1であるという事。
これを知っていたら、行動が変わっていたとは言いきれませんが、
興味を持ち、そう言う機会がなければ知ることができない事実でした。
ゴローさんは近所の子供たちの他にも、
たくさんのご縁を引っ張ってきてくれました。
わずか数日でしたが、
一緒に過ごせた時間を感謝し、
色々なご縁をくれた事に感謝し、
色々な事を知る機会をくれた事に感謝したいと思います。
写真はゴローさんの”居場所”。
彼は自分の居場所を自ら掘って過ごしていました。手前の落ち葉がたまっている場所は、
彼の掘った居場所です。
