あ〜。



心地良い疲労感に包まれています。
泣きました。

例によって、私のはレビューというより独り言に近い感覚的なものです。
ネタバレは、ストーリーに関する直接的なものは避けますが、してるっちゃあしてるので、念のため前情報なしで見たい方は読まないで下さいね。
評判が良くてロングランとなったこの映画、私はふわっとした情報だけで見に行きました。
俳優としての、草彅剛くんが好きなんですよね。役との距離感のとり方がとても好き。そして、テレビじゃなかなか彼の演技に会えないし。
(もうそろそろ解禁ですよね。来年のNHKとか)私にしては珍しくw、割引なしの料金で見ました。

率直に言ってこのトランスジェンダーの役は、彼のポテンシャルからいって普通の出来です。このぐらいはやるよな〜って感じ。むしろ助演に徹している気もしました。
そう。主役は新人の服部樹咲ちゃん(いちか役)……。
だと思いました。私は。
演技としては未知数な部分が多くて評価は難しい気がしたけど、存在そのものが良かったです。
剛くんはパサーで樹咲ちゃんがストライカー……みたいな役割。
出されたパスを受けてシュートを打つか打たないかは本人の選択に任される。
そして、ゴールの枠内に決まるかどうかは運にも左右される。
でも、彼女は自らシュートを打ち、きっちりゴールを決めています。
……ってなんでサッカーに例えてるのか、私。(笑)ルトー監督か。
決して洗練された映画ではないです。もうちょっと上手く表現出来るんじゃないかな〜と、素人目に思いました。
前半は『ビリーエリオット』を思い出しながら見てました。
ちなみに、私の人生における数少ない後悔のうちの1つは『ビリーエリオット』の日本初演を見に行かなかったこと。
これ、本当に後悔してるの!なんで初代ビリーズを見なかったんだよ、私!って……。(当時の仕事の都合で行けなかった、いや行かなかったんだよね。バカだよ私。
)

で、集中も途切れがちだったんだけど、終盤の海へ行くあたりから心をがっちり掴まれました。
あの映像なに

実写?加工してるの?
それぐらい悪魔的に美しかった。
あの空と海。そしていちかちゃんの踊り……。
そこまでで、かなりの傷を負ってるんですよ、彼女は。
どれほど背負わせるの?ってくらいに。
その上にまた……。
傷だらけ。心がぐちゃぐちゃでしょうよ。
どん底、いや地獄を見た彼女は、どんなバレエを踊るのか?そもそも踊れるのか?
それでも。
そう。それでも、彼女の「踊りたい」という気持ちは消えない。
芸術に魂を掴まれてしまった者の宿命ですね。
もう乗り越えるしかないのです。
そして、乗り越えさせてくれるのも、〈芸術〉というものなのかもしれません。
傷だらけの心を、めりめりと、新しい蔓(つる)が伸びるように包み、その傷を隠し覆ってしまう。
そしてどんどん上へ伸びていく。
花を咲かせるまで……。
ラストのコンクールの踊り。
ここで号泣です。😢
美しさに。
彼女の強さに。
筋肉の一つ一つに意志が宿っていて、動きの全てに生きることへの肯定が感じられて。
強い……強いよ、いちかちゃん。
涙を止められなかったです。
コンクールの結果がどうであれ、彼女は良いバレエダンサーになるでしょう。人々が見たいと思えるダンサーに。
そんなバレエを見せてくれました。
帰り道、歩きながら自分の背すじがすっと伸びているのを感じました。
いちかちゃんに強さを分けて貰った感じ。

見て良かったと思える映画でした。😊

※日本アカデミー賞 最優秀作品賞、最優秀主演男優賞受賞おめでとうございます!