コメちゃんの悪性リンパ腫闘病日記

悪性リンパ腫になってからの生活の様子と病気についての考え方を書いていきます。

人喰いバクテリアについて

2018-08-02 19:32:53 | 日記
「人喰いバクテリア」とは何とも怖い名前だが
これに感染すると
指先や足先など四肢の末端部から
1時間に数cmもの速さで壊死が進行して
3割の人が亡くなってしまうという実際も怖い感染症で
こういう名前がついたのも頷けます。
今回はこの「人喰いバクテリア」を題材にして
細菌についての考察をしてみます。
そもそも身体にいる細菌の数は身体の細胞数の10倍と言われており
人間は細菌にまみれて暮らしていると言えます。
その細菌の中で病原性を持っているのは0.1%以下と言われており
私たちの生活環境で共存する細菌はほとんどが非病原性細菌ということになります。
病原菌と言われている細菌もその多くは病原性は弱く
環境が整わないと病原性を発揮しません。
この「人喰いバクテリア」の原因菌も
原因となる細菌は数種類ありますが
最も一般的なのはA群β溶血性連鎖球菌と言われています。
(他にグラム陰性桿菌のビブリオ・バルニフィカス Vibrio vulnificusも原因菌と言われています)
溶血性連鎖球菌は
細菌の細胞壁多糖抗原の血清型に基づいてA群からU群(欠番あり)に分類されるランスフィールド分類で
(ランスフィールド分類はストレプトコッカス科の様々な属を分類するための分類)
A,B,G群,および一部のC,D群に含まれています。
溶血性とは細菌によって赤血球が壊されることを言います。
つまりA群β溶血性連鎖球菌とは
ランスフィールド分類でA群に分類される
赤血球を壊す性質の
球がつながった数珠のような形になる球菌と言えます。
この細菌は子どもの咽頭炎(扁桃腺の腫れ)などを起こす、ごくありふれた細菌で
健康な人であっても
5~10%は、喉や皮膚に保菌している常在菌です。
通常では咽頭炎(扁桃腺の腫れ)などや
溶連菌(溶血性レンサ球菌)による皮膚の化膿性炎症である
丹毒を起こすくらいで
A群溶連菌に感染して後1~3週間に生じる全身性の非化膿性疾患の一つであるリウマチ熱によって
心内膜炎を起こすことが問題となりますが
命に係わるほどではありません。
ところがこのA群の病原性が変化して
「劇症型溶血性連鎖球菌感染症」になることがあります。
劇症型とは命に係わるような重篤な症状を呈する型という意味です。
これが「人食いバクテリア」です。
A群β溶血性連鎖球菌は通性嫌気性菌で
酸素の存在下でも、酸素が存在しない環境でも生育しうるということなので
いろんな環境で生育しうる、ごくありふれた細菌が
病原性が少し変化する(バクテリオファージによると考えられている)だけで
この恐ろしい「人食いバクテリア」に変わってしまうのです。
幸いなことに治療法は確立していて
溶連菌に良く効くペニシリンを大量(時間依存性抗菌薬なので効果のある濃度を長時間作用させる)に投与し
血中で一定の濃度を保つことができれば治すことができるみたいです。
ただし時期を失うとペニシリンが奏功しなくなることもあるようで
この原因を考えるには細菌の何が病原性を持っているのかが分からなければなりません。
細菌の病原性は
細菌の細胞壁を構成しているリポ多糖(リピドA)などの内毒素と
細菌が分泌放出するタンパク質あるいはポリペプチドである外毒素
にあります。
ペニシリン(細菌の細胞壁合成阻害作用)によって
細菌が死滅すると
細胞壁を構成しているリポ多糖(リピドA)などの内毒素が死骸として残ります。
これには抗菌薬が効かないので症状が進んでしまうのです。
つまり細菌の増殖がある程度進んでしまうと
ペニシリンで細菌をやっつけたとしても
大量の内毒素が残ってしまうし
それまでに細菌が分泌した外毒素を除去できないので
治すことができなくなってしまうと思われます。
これが先に述べた30%の方が亡くなるということだと思います。
「人食いバクテリア」に関しては
出来るだけ早いペニシリン大量(長時間)投与が大事になります。
時期を失うと内毒素を除去する血液浄化法(血漿交換、持続的血液濾過透析など)が場合の処置になります。
「人食いバクテリア」による病気を防ぐには
溶連菌に感染しないようにするのが一番ですが
感染を起こしやすい傷や水虫を治しておくというのも
気を付けておきたいことになります。
ごくありふれた細菌が命を脅かす怖い細菌に簡単に?変化するとは
ほんと怖いですね!


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