齋藤百鬼の俳句閑日

俳句に遊び遊ばれて

俳諧逸話(四)越人の色事反省の句

2007年03月02日 | Weblog
 越人、蕉翁の門に入りはじめは極めて勤慎なりしに、其性来濃情の人と見えたり。
 ある時よからぬ艶聞あり。時々艾少婦(かほよきおんな)なんどの其家に出入せしこともありしかば、師翁其道心の堅固ならざるを怒りて疎遠のすがたになり行きしを、越人大に慙愧して

  うらやまし思ひきる時猫の恋

と悔悟の吟を寄せしかば、翁も其慙愧せるを憐みて之を許来の許にをくり、猿蓑集中に載せしめたりといふ。「俳諧百哲伝」

 越人=越智越人、肥後熊本藩士だったが致仕す。蕉門十哲の一人。

5 コメント

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越人のこと (草野ゆらぎ)
2007-03-03 18:02:15
このエピソードも、愉快(?)ですね。なにやら自分の事を言われているようで・・。 芭蕉も、渡邊淳一の小説を読んだら、目を丸くしてひっくり返るでしょうね。
こういうプライベートなことと、本業のことの関係をどう考えるか。いろいろな見方、考え方があります。
樽酒を呑ませてくれる、酒肆ででも話したい話題です。楽しみました。ありがとうございました。
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芭蕉は真面目すぎ (百鬼)
2007-03-03 20:00:56
芭蕉はご存知のように真面目一辺倒ですから。でも嵐山さんの本では「悪党」らしい。まだ読んでないですが広告では。女癖が悪いのは、俳人としてはいかんのですかね。そんなことないと僕は思うんですけどね。笑。
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去来抄における芭蕉の評 (我善坊)
2007-03-04 14:47:55
ご存知だとは思いますが、「去来抄」にこの句の芭蕉評が載っています。

先師(芭蕉)、伊賀より此句を書贈て曰、心に俗情あるもの一たび口に不出といふ事なし。かれが風雅是に至りて本情をあらはせりとなり。是より先に越人名四方に高く人のもてはやす発句多し。しかれども爰に至りてはじめて本性を顕すとなり。

芭蕉も彼の色好みを熟知していて、からかっているんでしょうね。
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芭蕉はえらい! (百鬼)
2007-03-04 21:53:38
恥ずかしながら読んでません。ショボン。
揶揄したわけですか。そのほうが越人には効き目はありそうですね。芭蕉はえらい。でも芭蕉先生は、やるんなら、もっと徹底してやってみろ! というタイプの上司ではなさそうですね。有難うございました。
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越人について (清水正明(清正))
2007-04-22 18:26:04
HPにて更科紀行の検証文を載せていますが、同行した越人は文字とおり越後の人だと思っていました。肥後の藩士越智越人とは全く知りませんでした。これから時々拝見させていただきます。
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