綺羅の水脈 舟天空を漕ぎゆけり
無月千年 卵孵らぬ羊歯の森
羊歯に射す月光謀反を育てをり
天覧の勇者に羊歯の冠を
封印の九字切る修験わが祖親
心中の裳裾の紅葉明かりかな
陸沈す羊歯の胞子といふ闇に
メビウスの輪の鈴なりや羊歯の露 . . . 本文を読む
漢字一字でいきます。「術」「芸」「原」を入れて、当季で詠む。各一句。
他四句は当季雑詠。
兼題者は百鬼さんです。
よろしくお願いします。
○ 投句締め切り 11月20日(土)
ご健闘を。
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林檎割ると母の骨盤母遠し 磯貝碧蹄館
林檎の断面は、言われてみれば確かに骨盤に似ている。しかし、それは言われてみればの話であって、あの断面を見てすぐ骨盤を連想するのは並ではない。深層心理にある母性への胎内回帰の願望を読み取ることは容易だが、碧蹄館の句は直観を基にして、瞬時に迷いなく句として凝結する。その凝結力が魅力だ。母遠し、が乱暴だという見方もあろうが、押し切ってしまうエネルギーがある。 . . . 本文を読む
悠かなる神の一指へ雁の列 北 光星
いつも思うことだが、雁の渡りのあの整然とした姿は見事である。目的地に向かう迷いのなさ。わき目もふらず一心にゆく様子を下界の男は、ただ口を開けて見送っている。空の彼方に、あたかも神が一指を立ていて、それを指標にして一心不乱に飛んでいくようだと作者は感嘆を込める。いつも迷走ばかりの人間の哀しい願望が込められているとぼくは思う。
思はざる処で朽ちし木の実か . . . 本文を読む
先の土、日は、恒例の秋の祭だった。フラメンコ舞踊団のボニータスは土曜、RCのバザーは日曜と参加したので、商店会のほうの焼き鳥はまったく顔を出せなかった。疲れ切って、しみじみ年を感じた二日間であった。月曜の朝、店をあけている時、市長がクルマで通りかかり、「フラメンコ、よかったよ」と声をかけていったらしい。もともと気さくな市長なのだが、今は市長選と市議選の真っ最中。気さくなうえにも気さくになる。とは . . . 本文を読む
以前、長谷川秋子の句「春の星歩めば鈴の鳴る女」について書いたが、明らかにボクの早とちりが一ヶ所あった。母が長谷川かな女で、その美貌を受け継いでいると書いたのだが、秋子は嫁であり血はつながっていない。しかし美形の俳人であったことに違いはない。ここに訂正させていただく。
その秋子には「長谷川秋子全句集」(牧羊社刊)があり、1100余句が収められている。かな女の跡をついで「水明」の主幹となったわりに . . . 本文を読む
わが夜長森の夜長とつながれり 村越化石
秋の夜、弱弱しくなった虫の声を目を瞑って聞いているときなど、自然と一体化した自分を感じることがある。
昨日は信州の温泉場にいた。夜目覚めてガラス戸を開けると、谷川の水音が大きくなった。冷気を伴った山の空気に身が清められてゆくような気がした。目を閉じるとすぐそこまで迫っている山は決して沈黙していないことがわかった。何か語りかけてきているようだ。心の耳で . . . 本文を読む
長野市で開かれた薬剤師会の全国大会にカミさんのお供で行ってきた。行くことに些かの逡巡もなかったのだが、宿の手配が遅れたために酷いことになってしまった。長野市内の宿はとれず、土曜にやっと取れた宿は上山田温泉のビジネスホテル並みのところで、翌日曜はもっと離れてなんと鹿教湯温泉。3,000人くらいは参加したのだろうが、そうするとこんな状態になってしまう。長野市ではどこを歩いても首にカードをぶら下げた薬 . . . 本文を読む
秋蝶来机上「東方見聞録」 橋本榮治
俳句を作っていれば、漢字ばかりの句を作ってみたいという誘惑に一度は捉えられた経験がおありだろう。この一句、字面の硬さとは裏腹に、中身はすこぶる浪漫に満ちて柔らかい。一冊の本の置かれた机に秋の蝶がふわりと舞い降りた。その本が「東方見聞録」。恥ずかしながら、この本を実際に読了したことはないのだが、ジパングが黄金の国として紹介されていることは誰でも知っている。当 . . . 本文を読む
高き天ジェームスディーンの住むところ 有馬ひろこ
エデンの東、理由なき反抗を見たのは高校生の時だった。だから大げさにいえば、映画の青春と自分の青春が重なり、ジェームス・ディーンと自分とがオーバーラップした。そういう経験を団塊の世代は共有しているはずだ。そのジェームス・ディーンも、今は高き天にいる。高く澄んだ秋空の彼方に、失われた青春が見える。遺憾ながら、鋭敏で、傷つきやすく、脆い、柔らかな精 . . . 本文を読む
はだか電球ぬくき光りを秋の果に
「美と健康」と電子看板秋の雨
秋霖を楊枝咥て見ておりぬ
はろばろと来て喰はれけり牡蠣フライ
頬杖して売子も秋思洋菓子店
宮城谷昌光「管仲」読了。テレビでは龍馬伝も大詰めを迎えつつある。それにしても国を建てるということは、どこの国でも乱暴狼藉をともなうものだ。隣人も海峡上で被髪左衽。
建国の被髪左衽や萩に雨 . . . 本文を読む