追越され嬉しきこころ番蝶
一会なれど朝に残れ夕ざくら
流れゆく花屑の末よき村か
やぶ蕎麦の暖簾の紺や白木蓮
春の来て春立ちどまる弥生尽 . . . 本文を読む
娼婦俳人と、いささか露骨な呼び方をされた鈴木しづ子が所属した結社「樹海」のバックナンバーが四十冊ほど手にはいった。
しづ子の句は、そのうち数冊にしか掲載されていなかったが、それとは別に面白い記事を見つけたのでご紹介したい。
俳句相撲というのがあったらしい。現在でも、こういうお遊びをやっている結社はあるのだろうか。
上品さが定着してしまった現在の俳壇では、こういう奇抜な行事はすたれてしまったにちが . . . 本文を読む
山口誓子はその女弟子である橋本多佳子に、俳句を作るときは男になれ、と言ったそうだ。
これはどういう意味なのか、初心の私に深い意味がわかるはずもないのだが、俳句は男の感覚で作れということなのだろうか。
最近では女だてらに大型トラックを運転する女性が増えている。
その化粧や仕草は従来の女性のものとは著しく違うのだが、へんに色気があったりする。
神輿を担ぐ女性がいる。
法被を着て、猿股を穿いて、格好は . . . 本文を読む
指細く目頭摘まむ春愁ひ
春陰は辛夷に白く包まれし
残業を伝えるメモも春しぐれ
牧場へと獣医急げり芽吹月
囀りの家ベランダの剥げしまま
ぷつつりと春の死す音土筆坊
腕吊りて桜見ている整骨院
. . . 本文を読む
辛夷丘に坂ゆらゆらと乳母車
若夫婦さくら若木の新興地
辛夷咲く夜白くして産まれし子
子等の声縫ひて初蝶飛びさりぬ
花影に縄跳びの縄夕暮れる
春陰や縄文土器の広き口
春陰の土管に既に三毛の猫
物の怪のごとく白猫辛夷の夜
目刺にて仕る酒猫の前
クルマの点検の間、近所を散策。新興住宅地の景をそこここに見た。
若い街。若い人々。すこしばかりバランスの悪さもあるが、春が横溢していた。 . . . 本文を読む
小梅橋渡れば向こう桜町
虫食の山門の肌つくしんぼう
花屑を尻に乗せ来し競走馬
エプロンをピンクに代えて春のカフェ
町中の法性寺は戦国の創建。なんとこじんまりとした山門であることか。戦国の大男なら頭を低くしてくぐったような小ささ。柱も可憐といえるほどの細さ。当時はぽつんとした山寺であったろうと想像される。なんでも新築改装するなかで、この物持ちのよさは好ましかった。
. . . 本文を読む
中断道先は野っぱら蝶生まる
半眼の象の耳より蝶たつ日
グラバー邸霞める海や蝶の夢
廃園に蝶追ふリボンの皇女見ゆ
初蝶の出窓横切る伊太利亭
初蝶を追ふ犬の目の老へり
護送車の格子に目あり黄蝶きて
蝶たてば正午をうてる時計台
廃園に園丁老ひて黄蝶くる
蝶孵る砂の時計を反すとき
蝶飛ぶや指さすゆびの細きこと
出生の秘密をもちて蝶生まる . . . 本文を読む
初花のはや散りにけり襟足に
花人の酔ひて忘れし煙草入
前髪と簪さくらの宝塚
用水の芥にもあり花の屑
先駆けて安行桜の勇みかな
けきょけきょと幼き声の初音かな
駄菓子屋の梅散り桜かわり玉
角立て意地張る春の金平糖
安行桜(あんぎょうざくら)をはじめて見た。早咲きの、遠目には桃の花に近い濃い色合で、もっぱら勇立っているような風情だ。それ程の情緒は感じられないが先駆けて咲 . . . 本文を読む
キューピーの浮きて見ている春の月
橋渡る下駄の音いづこの沈丁花
春月にぞろり和服の町会長
春灯にペコちゃん抱きて仕舞ひおり
春昼に巨漢カーネル・サンダース
薬袋を病む子に届け春霞
地蔵院前垂れ換へて春霞む
かはたれの橋に春着の立ち姿
口三味線など聞こへけり沈丁花
沈丁の香り色なす堀の闇
春愁や唐津の獅子の眼の曇り
かくれんぼ花粉に汚れし春の鬼
点眼 . . . 本文を読む
用水は町貫流し春の野へ
安行や春雨肩に紺法被
うらうらとまがりまがりてはるのみず
くるりんと傘回してる春の駅
配達を始めた。隣町の安行(あんぎょう)まで。ここは一村のほとんどが植木屋さん。ここにも春が爆発寸前で控えている。
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ふらここを漕ぐ妹さびし夜の庭
春愁や秒針に添ふ翳蒼く
頬杖の指長くして春の雷
春ショール腕逞しやアンダルシヤ
木の芽風眉白々と老院長
遠き目や老極道の春袷
春の夜の煙草の灰の長きこと
春の坂下りて花街に突入す
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純白の下着つけます雛の日
雛あられこぼれて子猫の目の動く
春うらら頭刈りあげ小商人
新店に蘭の香満てり雛の日
雛の目の先うららかにうららかに
春うらら大家の犬のあくびかな
新店の壁に招福北京凧
本日、久しぶりに帰宅。カミサンの実家に泊って帰る閑もなかった。ほっとして一句。
患者さん第1号は風邪の女性。ドイトのおじさん風が出ていったので不思議そうな顔をされてしまった。
やはりユニ . . . 本文を読む