日伊国交樹立150周年特別展シリーズの最後を飾る展覧会だそうです。
今回は久しぶりに友人と二人で鑑賞しました♪
これまで「レオナルド・ダ・ヴィンチー天才の挑戦展」「ボッティチェッリ展」、「カラヴァッジョ展」、「モランディ展」、「ポンペイの壁画展」、そして「伊東マンショの肖像画」を鑑賞することができて、いずれも美術界だけでなく歴史的にも重要な作品が目の前にいるのがあまりに凄くて奇跡のように感じました。なかなか海外には行けない私にはこれ以上ない恩恵でした。
「メディチ家の至宝―ルネサンスのジュエリーと名画展」が見れず、大好きなカメオブローチを見れなくて残念でしたし、そして「ミケランジェロ展 ルネサンス建築の至宝」も見れなそうですが、最後の「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち展」は鑑賞できました♪
そしてこの展覧会もとても美しい作品が並んでました。作品は全部で57点と多い方ではありませんが、とても見応えのある作品でヴェネツィアルネッサンスの色鮮やかで流麗で情感のある世界を堪能できました。
10月まで会期があるせいか、そして同時開催されているルノワール展に鑑賞者が行ってるせいか、会場内はそんなに人は多くなく、ゆったり見れました。
まず会場に入ってすぐ目に入るのは、ヴェネツィアルネッサンスの最初の巨匠。
ジョヴァンニ・ベッリーニ《聖母子》(赤い智天使の聖母)1485-90年
画家一族のベッリーニ家ですが、その中でもジョヴァンニ・ベッリーニは初期ルネッサンスの要素も残しつつ聖母マリアの上品な美しさ、赤ちゃんのキリストや天使のかわいらしさ、そして描かれた人物の心情がしみじみ伝わり背景の風景もとても美しく描く画家で大好きです。今回作品を直に鑑賞出来て感激しました。
聖母子の頭上に浮かぶ智天使は神の姿を見る事が出来る位の高い天使だそうです。この作品ではまっかっかな姿だけどお顔はやはり愛らしい。智天使が舞うのはそのまま神の祝福を表してるように思えます。そして膝にのせて幼いキリストを抱く聖母の手が優しげで、キリストの紅葉のようなお手てもいかにも赤ちゃんらしくて微笑ましいです。
この作品が描かれたころ、ジョバンニ・ベッリーニは50歳代。フィレンツェでは40歳代のボッティチェリがやはりロマンチックな聖母子や悩まし気なヴィーナスを描いています。ミケランジェロは多感な10歳代の少年期でラファエロはまだ幼児でウルビーノに在住。30歳代のレオナルド・ダ・ヴィンチはミラノ公国で活躍してました。
次に振り返って斜め向かいに展示されてたのがこの作品
ラッザロ・バスティアーニ《聖ヒエロニムスの葬儀》1470-80年
アーチが並ぶ教会で聖職者に見守られている聖ヒエロニムスの遺体。聖ヒエロニムスの傍にいつも傅いていたライオンが画面左端にいて悲しそうにしてます。
ちょっと謎めいた画面で、教会建築がとても詳しく描かれていて、特に向かって右端に見える斜めに見える祭壇画はその斜めの状態になった絵をとても詳しく正確に描いてます。なのに黒い装束の人の顔が、哀しい顔をしてるのはわかりますが、多分未完成。その周りの人は無表情に見えました。そして柱の陰からほんの少し見える人物が描かれてますがどんな意味があるのだろう?。
そして聖ヒエロニムスのやせ細り硬直した姿はリアルに遺体そのものです。とても気になり心に残りました
この時代の絵画だから聖母子の作品が多いのですが、聖ヒエロニムスの登場する作品も結構あり大概ライオンをお供にしてます。だけど、上半身で複数の人と一緒に描かれた作品にはライオンがいなくてちょっと寂しかったです。
カルロ・クリヴェッリ《聖セバスティアヌス》1480-90年
こんなに矢を打たれても生き残った聖セバスティアヌス。この作品では苦しそうで痛々しい。
ヴィットーレ・カルパッチョ《聖母マリアのエリサベト訪問》1504ー08年
イタリア料理のカルパッチョはこの人が好んだ食事から命名されたのだとか。
いろんな人が二人に関係なく過ごしていて、動物もリラックスしている。その中で二人だけが聖書の大切な物語を表してます。緩さがいいね(^_-)-☆
アントネッロ・デ・サリバ(アントネッロ・ダ・メッシーナに基づく)《受胎告知の聖母》1490-1500年
あ、この作品は知ってる!と思ったら模写でした。たしかにマリア様の表情がオリジナルより少し硬いです。
天使ガブリエルに受胎告知されたその時の表情を正面から描いている。鑑賞する私達は天使ガブリエルと同じ目線でマリア様を見つめることになるという構図で描かれた作品と説明が書かれてました。なるほど、斬新で心に鮮やかに残ります☆
アンドレア・プレヴィターリ《キリスト降誕》1515-25年
この作品では、廃屋のようなところで生まれたキリスト。手を胸に当てて我が子を礼拝する聖母マリアもじっと見つめるヨハネも吐息をかける馬も牛も可愛らしくてほっこりしました。
色合いがとても綺麗。
画面向かって左奥には天使が羊飼いに救世主が生まれたことを知らせています。画面に登場する人はみんな仕立てのよさそうな服を着ていて、建物の隙間から見える背景に休んでいる羊飼いがいてみんな幸せそうに描かれてる。
パリス・ボルドーネ《眠るヴィーナスとキューピッド》1540-50年
ベネツィアルネッサンスといえばジョルジョーネやティツィアーノは欠かせませんが、ジョルジョーネ作品は今回はありませんでした。でも、横たわるヴィーナスの始まりは確かジョルジョーネ、そしてティツィアーノ。草原の上で薔薇の花の付いた小枝を布に巻き付けながら眠るヴィーナスは気持ちよさそうです。肌の色合いとバラ色のたっぷりした布の取り合わせが美しい。薔薇のトゲは抜いたのかな?でなきゃさすがに痛いよね
ボニファーチョ・ヴェロネーゼ(本名ボニファーチョ・デ・ピターティ)《父なる神のサン・マルコ広場への顕現》1543-53年
展覧会場にはヴェロネーゼという名前の画家が二人いました。一人目がこの画家。この作品は本当は三蓮画でこの作品の左右に受胎告知する天使ガブリエルと受け止めるマリアさまの絵があるそうです。
受胎告知は3月25日で、ヴェネツイアの建国の日と重なるのだそうです。
ちょっと前後したけどヴェネツイアルネッサンスの巨匠のもう一人、ティツィアーノはかなり長生きしたそうで、70歳代の作品が展示されてました。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《聖母子》、通称《アルベルティ―ニの聖母》1560年頃
暖かい茶色の色合いに柔らかい筆致、見つめ合う母子の愛情深い様子が美しい。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《受胎告知》1563-65年
高さ4メートルもある作品。年齢を感じない情熱と、年齢を経て熟練した筆遣いの両方を感じる大作でした。粗い筆致なのにそこに確かな存在感があるのは絵の技術を極めた到達点の一つ。そして画面の中で天使も霊的な雲も絶えず渦巻いて動いているように見えて、情念みたいなものを感じました。
更にその次の世代の巨匠も3人紹介されてました。
ティントレット、パオロ・ヴェロネーゼ、パッサーノです
ヤコポ・ティントレット((本名ヤコポ・ロブスティ)《動物の創造》1550-53年
唸るような筆のタッチが印象的で、形を素早く正確にとらえて描き上げる画家だなあって思っています。衣服には稲妻のような白のハイライトが良く描かれていて、時々輪郭の周りにも白のハイライトを細い線で入れて際立たせています。群像の宗教画の印象が強いのですが、今回はこの天地創造の5日目(魚や鳥の創造)と6日目(陸の動物の創造)の様子を描いた作品のインパクトが強かったです。この作品でも唸るような筆致、衣服のハイライト、そして水辺に佇む動物の輪郭の周りに白いハイライトを入れてるのがわかります。お魚ギラギラします。何気に一角獣もいたり楽しい画面になってます。神様は輝くオーラを発して迫力があります!
ヤコポ・バッサーノ(本名ヤコポ・ダル・ポンテ)《悔悛する聖ヒエロニムスと天上に顕れる聖母子》1569年
画面向かって左端に上目遣いのライオンがいます。様々な煩悩に悩まされながらも乗り越えて、聖書の翻訳に人生を捧げる聖ヒエロニムスを天上で聖母子が天使と一緒に見下ろしてます。聖ヒエロニムスは立派な体格をしている。でも傍に頭蓋骨が描かれていて、限りある時間の中で使命を達成することを決意しているように感じました
パオロ・ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ)《レパントの海戦の寓意》1572-73年頃
もう一人のヴェロネーゼ。この画家の「悔悛した聖ヒエロニムス」という作品が展示してあって、やっぱり足元でなついてる可愛いライオンが描かれていたので是非載せたかったのですが、画像が見つからず、もう1作品は工房作品でしたので、ちょっと物騒なこの作品を載せます。
圧倒的な画力と明るい鮮やかな色調がさすがパオロ・ヴェロネーゼ。雲の上にはマリア様と天使と膝まずいてお願いする人(ベネツィアの有力者なのだろうな)、下半分は迫力のある艦船の戦いの様子をとても細密に描き切っていてしかも一つの作品として統一してます。並々ならぬ達人!人々はマリア様に勝利して生活が維持できる事、そして無事に帰れることを祈ったのでしょう。でも、私には、戦争はもうおやめなさい、とマリア様がたしなめてるように見えてしまいます。
レパントの海戦は調べてみると1571年にオスマン帝国と教皇、スペイン、ヴェネツィア連合軍とで戦った海戦で初めてオスマンに勝利したそうです。そしてガレー船を使う最後の海戦だったとか。そうやって見ると船には無数のオールが突き出て船を漕いでます。漕いだ人は過酷だったろうな・・・。
パオロ・ヴェロネーゼはルーブル美術館に巨大な「カナの婚礼」の作品があります。
それから肖像画も展示されてました。女性の肖像画も3点ありましたが、いずれも微笑んではなくて、2点はかなり不機嫌そうな表情でした。多分良家の子女は簡単に笑顔を見せるのは良くなかったのだろうけど、だからといってこんな怒ったような顏で描かれなくてもいいのに・・・と一緒に鑑賞した友人とこっそり言い合ってました。画家ももう少し考えてあげればよかったものを・・・
その中でいいなと思った作品を載せます。
カリアーニ(本名ジョヴァンニ・ブージ)《男の肖像》1510-20年
これぐらいさり気ない表情なら笑顔じゃなくても素敵。黒い上着から白いシャツが見え深いブルーグレーの背景と色合わせがセンス良く、人物の肌色が引き立ってます。この作品を囲んだ額縁もとてもセンスが良く素敵でした。
すっきりとしたシンプルな形だけどとても凝っている。紺と赤地に金で繊細な模様が描かれてました。
ヤコポ・ティントレット(本名ヤコポ・ロブスティ)《サン・マルコ財務官ヤコポ・ソランツォの肖像》1550年頃
もう一回ティントレット登場!人物の描写もさることながら、衣服のビロードの質感がまた素晴らしい。更にこの作品の額縁にも赤いビロードがはってあってその上に金色の飾りが豪華についてました。
きっと豪華な内装の執務室に飾ってあって重厚感をたたえてたでしょうね。この作品の隣に息子のドメニコ・ティントレットの描いた肖像画もありました。この父子といえば・・・そう伊東マンショの肖像を描いた父子です!
鑑賞後、友人と1階のカフェでサンドイッチを頂きました。
飲み物は展覧会をイメージした「ヴァージン・ベリーニ」桃のジュースを炭酸水で割ったような飲み物でした( ^^) _旦
自分では気づかないことを友人が気づいて教えてくれたり、新鮮な視点で鑑賞が出来て楽しかったです♪
10月10日まで開催されてます