別館 兄弟仁義

超常現象ドラマの兄弟愛と家族愛をうっとおしくつつくブログ

傷を舐め合ったカップルと傷をえぐり合う兄弟の話

2014-05-14 13:05:06 | シーズン8
不穏なタイトルだが、例によって重箱的鑑賞なだけ(笑)


サム・アメリア問題において、言い方は悪いが夫との両天秤や、はじめのうちはサムに高飛車な嫌な態度だったことで、かなり評判が悪いアメリアさん。
一番は、兄との仲に水を差したことだろうが。
サムが兄貴を捜さなかったという事実から見りゃ、別にどってことないと思ったがなあ。サムなら新しい彼女見つけるのがディフォな気がしたし。ただ彼女とのシーンがサムの回想だけで、正直なんの昼メロかと思った。
シーズン6のディーンとリサ&ベンのエピソードは上手く本編に入れ込んでいたのに、サムとアメリアの馴れ初めからその後に至るまでのほとんどが、特に肝心な時に思い出アルバムに浸ってしまうサムの回想シーンなのがね。なんか二人のことより話の流れを遮るようでよろしくなかった。
過去の話だからそうせざるを得なかったのか。むしろ1話か2話にまとめた方が良かったんじゃないか。でもそうすると、その回はシーズンきってのワーストエピとされたに違いないが(^_^;)

サムとアメリアが実際に会うエピソードでも、夫の留守を利用してサムに会いに来て、あまつさえそのままベッドイン。そのシーンは映らないものの、サムの大きなシャツを上だけ着(たぶん裸に)という、ファンを逆なでするシーンに大きなブーイングが。私としては、それが嫌というよりそのシャツは兄貴こそがだね…(自重)
でもあそこも、サムが先に彼女の家を覗いて(兄の嘘のせい)それに気が付いたアメリアが追ってきたので、彼女だけを責めてもしょうがない。サムバッシング派はドヤ顔しそうだが。

ただ考えてみてほしいのは、アメリアはサムのバックグランドは知らないままだったわけですよ。得体のしれないところはあるけれど、とても優しくて孤独で傷ついた青年としてのサムを愛しただけ。本当のサムを知ったら、彼女は現実的に離れたでしょうね。その方がいいし、あのまま一緒にいたら早晩ジェシカのような運命をたどってた。サムが彼女と兄との今までの生活の選択を迫られた時、『今戻れば受け入れてくれる。ぼくは幸せになれる』と言ったけど、それはまあ有り得ないよね。彼が選べば、何者も追ってこないというわけにはいかない。兄がその世界にいるなら当然。仮にディーンも脚を洗ったからといって、世界がウィンチェスター兄弟をほおっておくことはない。
本当はそれがわかってるから、サムも別れたんだろうけど。

私は彼女がサムのいたモーテルの部屋を訪れ、ドアを開けた時の顔に胸打たれた。
中には、優しい笑顔のサムが待っていてくれるかも…と期待してた微笑みが消え、綺麗に片付けられて、がらんどうの部屋のドアをうつむいて閉める。
彼女には死んだと思われていた夫がいて、彼との人生に戻る方が絶対に幸せになれるに決まってるんだけど(それに安全)。
それでも、傷ついた者同士、父親に傷のなめ合いにすぎないと言われても、彼のそばにいると安らぐのと返したサムを思い切るのは辛かっただろう。
海外では、いい気味だとまで言う人もいたようですが、みんなそんな非情な! オトナを気取るつもりは毛頭ないが、自分がそうだったらと考えてみてよ。
家の外まで来て入ってこなかったサムが、自分をまだ思っていてくれたと感じ訪ねて行ったアメリアを、夫のいる身でサムをまた誘惑しに来たビッチ扱いするのはどうか。
サムが自分を選んでくれるなら私もそうする、と言ったのは、夫への不実になるのか。アメリアと夫のとの問題はまた別にあるんだけどね。
彼女に相談せずいきなり軍に志願し、アフガニスタンに従軍、戦死したとされていた旦那。夫の行動が青天の霹靂だったということは、彼女は彼の望みをわかってなかったということだよね。夫を失ったことよりも、彼を理解できてなかったことに傷ついていたんでしょう。
そしてその痛みは、兄を慕いながらも、兄の望むままには行動できなかったサムの痛みと共鳴した。だから二人は惹かれあった。

二人の関係はまさに逃避だったわけだけど、それは罪でも間違いでもない。ただ、永遠には続きようもないものなだけ。
基本、サムがまた兄の元に行くのは当然でそうあるべきと思う私ですが(笑) それでもアメリアさんも可哀想だったよ…。


サムは、自分が自分の人生の選択をできるという、確かな証をいつも求めてきた。それをいつもいつも手酷く覆され、その度に自分だけでなく兄も傷つける結果になってしまった。二人で団結して世界を救い、続く道を選んでいても、やはり胸の痛みは残されたままだ。

私、サムが最終話で言った、兄貴をいつも失望させ傷つけたことを懺悔したという告白の中に、ディーンを捜さなかったことは含まれてないと思うんだよ。あれはそのままサムの選択であり、そのことでディーンを酷く苦しめたことそのものは深く後悔してる。
でもサムは、それを選んだ自分を肯定はできなくても、それが自分だということを感じてる。
自分の性格を変えられるというのは幻想だからね。それで人を傷つけ、自分も苦しむ。それが人間。ただし選択は、その時の自分が選んだものであり、その結果を受け取るしかない。自分はこんな性格だから、それを選ぶしかなかったというのは言い訳。
サムは弟気質の我儘を兄貴に言うことはあっても、自分の選択に対してはいつも逃げずに向き合ってると思う。

コンベンションでカーヴァーさんにファンの一人が、この物語の主役はサムでディーンは脇役なんですか? ときつく問いただした人がいたそうで。
そんなことはないよと答えたみたいだけどね。向こうのファンはハッキリものを言うよね。
でもそれ、その子をなだめるための方便でしょ。スパナチュの主人公をまず先にあげるとすれば、それはサムでしょう。
いや私は兄贔屓ですよ。でもだいたいが主役でなくその周辺に目が行く私がディーン贔屓なのは当然だと思ってた(笑)
限りなく二人の兄弟が揃って主役なドラマ。でも二人の中でも、サムが物語のキーを始めから握ってる。悪魔の血から始まる。
そのサムをいつも助け、守り戦い共に歩む兄ディーンが、“もう一人の主役”であることは確か。でもクリプキは、サムから始まる物語を作り出したと思う。じゃなきゃ毎回ドラマの始まりに、「staring Jared Padalecki」、次に「Jensen Ackles」の順番でテロップされる意味がわからんじゃないか。ジェンの方がキャリアが上なんだから。
そして、そういうディーンの立ち位置と役割だからこそ、私は兄貴を愛しているのですよ。

ディーンの地獄落ちと復活以外は、常にサムがエポックとなることを起こしてる。そしてシーズン5で自己を犠牲にして地獄にルシファー&ミカエルと閉じ込められ、復活してロボサミとなり、魂を取り戻して、その壁を壊されルシファーが脳内に居座り、それもようやく解消されたところで。
一人になった。

サムは本当に疲れたんだと思う。カーヴァー氏の流れを肯定するよりも、私は創り手よりもキャラクターが実際にいるものとして、彼らの心情を思いやる方で物語を考えたい質。とくにスパナチュはそれだけ思い入れが深い作品なんだわ。

シーズン3で兄を失くして、取り戻すための努力は無に帰し、兄の遺言通り人々を救おうと力を求めた結果、ルビーに付け入られた。
トリックスターの罠かつ教えから、兄を失くした自分がボビーすら無視するハンターマシンになる可能性を知った。
究極の自己犠牲を経ても、世界はまた危機を迎え、戻された自分は魂を失い、兄をまた傷つけた。
彼の努力と選択がいつも正しい方向に行かなかったとは思わない。でも、どんなに頑張っても自分を犠牲にしても、変えられないことがほとんどだった。
またディーンを見つけるために奮闘しても、たぶんかなわない。そこには何か絶対的な力が働いていて、それが不実に思えるスパナチュ界の神の御業かどうかはともかく、サムがあがいてもどうにもならぬ流れがある。
本当は、サムなら兄貴がシーズン7のラストで消えたあと、天国に行けるとは思えないので(天界はあの有様だしキャスも消えたし)、地獄ならクラウリーからなんかアクションありそうだし、ローマンが一緒だったことからも、煉獄に飛ばされたことは察せそうなものなんですよね。賢いサム君なら。それが、「煉獄にいたのか!?」ってのはちょっとどうかと思うが(^_^;) そこはカーヴァーさんもちっと錬れよとは思いましたが。
ただ、どこにいたとしても、地上で一人きり、サムはかつて地獄から兄を助けられなかった時と同じく、何もできない。

またあがいて、ルビーならぬ悪しきものと組んでしまうより、休みたい。壁が壊れて直されても、その後も戦い続けてきた。
何かの助けを借りて、契約して兄貴を戻しても、また今までの繰り返しだ。自分には新しい人生を選ぶ選択は、本当にできないのか。
いわば、シーズン7までの果てしないループから、サムは抜けだしたかったんでしょう。同じことを続ける限り出ることはできないから。
1話で再会した時、狩りを続けている限り家族が死ぬだけ。そのせいで一人きりになったと兄に訴えている。

サムが姿を消したディーンを、“死んだものとした”のは、そうしないとまた永遠に続くループを繰り返すしかないと思ったからじゃないか。
じゃあ煉獄で、サムが捜してくれてる、待っていると信じて戦い続けたディーンはどうなるのよ! ってのはまた別にあるけれど(それを思うと泣けてくる私はやっぱり兄同化)


そして、まったくの“一人”になったことも大きかった。
それまではボビーがいてくれたし、魂無しのロボサミだった期間ですら、一人で狩りをしていた時もあるけど、実はサミュエルじいちゃんと従兄たちの仲間とも合流してた。
サムは基本、守られてきた末っ子。誰ひとりいなくなった世界で、もう悪魔やらとも決してつるまないと決めた彼が、一人ぽつんと残されたと思うとね。
早く戻らねば!の兄貴の気持ちに。でもサムは女とノーマルライフに走ってた!(笑)
ボビー退場はシーズン7のセラ女史ショーランナーでだけど、その設定を、サムの新たな選択の下地のひとつに使ったのは、カーヴァー氏(シンガー氏も)。
彼はシーズン5でクリプキと共に離脱して、8で出戻り。それでスパナチュは元カノ発言したらしく、ファンは怒ったとか。でも作品をぞんざいに扱って不人気でストップなんてことになれば、ショーランナーたるご本人が力量を疑われるわけだからね。そんなことできるわけない。

ただ、私がアメリア、兄放置問題以上に引っかかっていたのは、実はケヴィン無視問題なんだよね。
これは本当にサムらしくない。
ディーンの言う通り、二人はケヴィンに対して責任がある。兄弟が石板を取り出さなかったらローマンが出してたはずで、いずれにせよケヴィンは覚醒する運命だった。だから兄弟があの道にケヴィンを引っ張り出したとは言えない。
でも、関わって協力してもらった以上、彼を放り出すのはしてはいけないこと。
サムはシーズン7で壁が壊れかけて入院させられてた時も、酷い状態なのにマーリーという女の子に憑りついた兄の霊をはらってあげたり、身代わりになったキャスを置いとけないとディーンに言ったり、責任感が強くて人を助けるために身を厭わない子だったはず。
それが、未成年にして夢も希望も絶たれて悪魔に攫われたケヴィンの必死の留守電も無視したのはどうか。
兄貴と違い、自分で何とかできるわけじゃない少年をだね。

ところが、自分でどうにかしたんだけどね、ケヴィン(笑)

このシーズンを見ていて、実はも一つ思ったのは、サムはやっぱり弟気質なんだということ。
ケヴィン、チャーリー、クリシー、そしてたぶんガースも、もしかしたらベニーもかな。みんな一人っ子なんですよね。
ガースはわからないし、ベニーは遠い昔に兄弟姉妹がいた可能性もあるけど。どっちにせよもう本当はひ孫がいる歳月、一人でいたから無効で(笑)
一人っ子の、“自分でなんとかするしかない”感の強さにかけては、語れますよ私(笑) 自身がそうだから。
私の友人にも一人っ子は多いんだけど、中にはかなり甘やかされた古典的な一人っ子もいる。認識が甘いのは、親が守ってくれてたからだということに気付いてない。
でもほとんどが、もう完全な自立型でしっかりもんです。親が厳しく育てたおかげ。
ハンターの父親と二人、壮絶に生きてきたクリシー。チャーリーは独りきりで12歳の時から生きてきたし、ケヴィンもガリ勉君の割には、あの強烈なママの元で育ったせいか、ここぞという場では自分の判断で動く。結局はクラウリーの意のままにはならなかったわけだし。
それに比べ、一人きりになったサムは、やっぱり傍らに誰かの存在を求めてしまうんだね。
ケヴィンの電話を無視した所業は何としても解せぬものの、ケヴィンを追えばまたハンター世界から抜け出せないことになる。サムの望みの流れとして、そこが食い違うから、させなかったんだろうけど。そこらはカーヴァーさんどうにか辻褄合わせてくれなかったかな。
ジャレも、ここも納得してないんじゃないかな。奴は頼りになる男だから(笑)

兄貴との約束を守っただけだ、と言うサムは、ディーンにこそそれを肯定してほしいんだけど、ディーンが傷ついてるのを見て自分も傷ついてる。
この兄弟のループは、やはり続く(^_^;)


弟が狩りを止めたことに、すぐに女の影を見つけるディーン(笑) そして彼自身は、煉獄での戦いだけの血みどろの日々に、ある種の純粋性を感じてもいたと言う。
“生き残る”ことだけがすべての世界で、キャスとベニーとは助け、助けられる間柄だったけど、“弟を守る”というディーンのDNAに沁みついた不問律は使われることはなかった。地上にいるサムを心配はしてただろうが。
だから、様々な葛藤に苦しんできたディーンにとっても、気持ちは良くないものの、煉獄はある種の逃げ場でもあったと。
その中で、相も変わらず責任と兄貴成分が出たのが、カスティエルのこと。
キャスに関しては、彼を語ろうとすると天使軍団に触れざるを得ないので、とりあえず後日。
キャスを除き、どの天使がダメでどれが良いのかとか関係ない。スパナチュの世界を広げたのも、面倒にしたのも天使のおかげだから、どうも彼らは厄介だ。
リヴァイアサンが終わったら、また天使に戻らざるを得ないんだね…。
今回もナオミがうっとおしかったとか言われてますが、彼女自身は確かに何をどうしたいのかサッパリわからん感じでしたね。でもわたし、彼女の、女優さんの顔好きなんですよ。おばさん的中間管理職にされてたけど、まだ結構若いし、眼が凄く綺麗だった。

またも長くなりました(^_^;) サブキャラあれこれについては、これまた次回に。



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