この回については、語り倒します(笑)
ジェフリー・ディーン・モーガンのジョン・ウィンチェスターが復活。お馴染みEntertainment Weeklyの表紙もウィンチェスターファミリーが飾りました。
ボロ泣きしたよもう。でも半面???の部分も多かった。初見、かなり不思議な話だと思ったんです。
まず感じたのは、これって本当にダッド・ジョン?ということ。
鳴り物入りのゲスト出演のわりに、彼の出番自体はそんなにない。短いんだよ。
細切れのシーンで兄弟と語り合い、メアリーと触れ合っただけ。バンカーにしかいなかった(ラストはインパラ)。
ジョンが復活しメアリーもいる。ならば家族そろってファミリービジネス、レッツ狩り!みたいなことは1話では無理だろうが。それにしても冒頭から願いをかなえる宝珠を手に入れるくだりはともかく、それを地元の子らにインパラごと盗まれちゃうエピソードが入り、ジョン登場になかなか行かない。子供らとのいきさつは、あとで意味が出てくるんだけどね。
これはぶっちゃけJDMが超多忙で、さほど拘束時間を取れなかったからかとは思った。TWDのニーガンでブレイクして以来引っ張りだこ。
メタ事情は考慮した。それでもこのジョンが、2003年にサムがスタンフォードに行ってしまいディーンと狩りをしてた頃の、あのジョン・ウィンチェスターとは思えなかった。
穏やかで、優しくよく笑う。涙目で息子たちを愛情深くみつめてる。
これがあの鬼軍曹とは?! 無論成長した息子たちに事情を聴いたからだろう。でもそれをすっと受け入れるジョンって変じゃない? 時間の都合上?(^^;
はじめは、ジョンはこの事態を現実とは思っていないのかなと考えた。
なにせ息子たちの話が途方もない。あの時間でどの程度はしょったかわからないが、ジョンは悪魔やルシファーの存在は知ってたけど天使には会ったことないし、その上に神とか神の姉とかネフィリムとか死神とか。そんなにオールスターと戦ったり知り合ったりしたのか俺の息子たちは…ですよ。そんなの聞かされて、すいっと納得できるか?
むしろ、これはジンのような怪物に自分は都合のいい夢を見せられているのでは?、と思ったんじゃないかと。
でもそれにしては、態度自体が素直。疑っているようにも見えない。
ジンの夢だと判断したら、夢の中で自殺しなければ現実の自分は殺されてしまう。適当な所でそうするしかない。でもジョンはそんな素振りもなかった。
でもね。2度見て、あ、そうかと思った。
このジョンは、今の世界に生きていたらこうだったジョンなんだ。
宝珠が用意したのはディーン真の望み。それは単にダッドがタイムスリップしてくるだけじゃないんだ。
ディーンが求めたのは家族。失われた家族が今そろっていたのなら、どんな父だったか。
16年前から連れてこられたにしても、成長した息子たちの父としてこのひと時を過ごすよう、宝珠が用意してくれた父なんだよ。
宝珠の創った偽のジョンではないよ。癒された、あるべきジョン。
息子たちの苦闘と成長を知り、そして自分も父親ヘンリーに捨てられたのではなかったことを知った。そして次に聞こえたのはメアリーの声。
あのジョンは、父親に捨てられたと思わず、愛しい妻が生きていたらこうであったジョン・ウィンチェスターなんだよ。
前回ディーンがサムに今わの際の別れのような言動を繰り返し、その中にジョンの逆鱗に触れてよそにやられてたことを明かした件。なんで今それ言うかなと思ったんだが、あれはディーンの中にずっとあって昇華できずにいた想い。弟に言うつもりはなかった父への怒り。
もう残り少ない時間と決めたから、口に出した。
マムへの想いはシーズン12のラストで、洗脳されたメアリーの深層に入り、直接本音をぶつけられた。
マムに“本物のウィンチェスター・サプライズ”を作ってもらい、水入らずの食事で父に激怒された思い出を話した。今の母になら、その想いを伝えられる。残していくサムのことも頼むという気持ちもあっただろう。
ジョンが死ぬまでディーンはずっと父に従順だった。4歳にして弟を守り父親に従うという運命を選んだディーン。早く成長しようとした長男としてのディーンは、「親父がお袋の復讐をするのは当然。俺はそれを手伝ってサムの面倒を見ないと」と思ってる。
だけど押し込めていた子供、4歳の時のままのディーンはずっと癒されぬまま彼の中にいた。
「マムがいなくなったのに、ダッドもまえのダッドじゃない。どうしてぼくとサミィにきびしくするの。まえのダディでいてくれないの?」
絶対に意識しなかっただろう、傷ついた子供のディーン。
そのインナーチャイルドが、今癒された。
サムはジョンに促され、言えなかった想いを伝えた。でもディーンは、かつての辛さを吐き出しはしない。ミカエルの件も、当然言ってないだろう。父親を目の前にして、また良き長男に戻ったわけじゃない。ジョンに誇りに思うという最大の言葉をもらい、家庭をもってほしかったと言ってくれた。今更勝手とは思わない。このジョンはまだ悪魔との本格的な戦いに入ってない頃の父。復讐が済んだら、息子たちを解放したいと思ってた。それを知ることができた。
そして幸せに満ちた父と母を見れた。ディーンは両親の仲が微妙になって、母が泣いてた思い出もある。でも二人が真に愛し合ってる姿を大人になった目で見て、その記憶も癒された。
ディーンはミカエルをどうにかすることを願ったはずだった。でも宝珠は兄の表面上の願いではなく、真の心の奥の願望をかなえた。
それは家族が揃うこと。
ミカエルとマラクの箱に入り、永遠に海底に閉じ込められる。そんな恐ろしい運命を回避することが、ディーンの一番の望みではなかった。
ディーンはサムほど先を考えて行動しない。耐えられない事態になって助けを求めることもある。
けれどミカエルが自分を乗っ取ったら、真っ先にサム、メアリー、キャス、ジャックを殺す。それから世界を滅ぼす。そんなことになるくらいなら、永遠にミカエルと箱の中を取る。
仮に宝珠がミカエルを抜き出してくれたとしても、他の誰かに憑依してやはり世界は危機に陥る。なら自分が閉じ込めてた方がいいと思うのがディーン。
ジョンは蘇ったのではなくタイムトラベルしてきた。その時点でディーンもこのままが続けられるとは思ってない。でも一度でいいから、家族4人での食事をしたい。
ディーンが心から望んだのは、ウィンチェスターの絆。母が、父が去り、弟と幾度となく亀裂が入っても、ずっと自分を根底から支え続けてきたものは、それだけだった。
未曽有の事態に、ディーンはそれを再確認したかった。
「お前には家族を作って普通の生活をしてほしかった」
その言葉に、「家族はいるじゃねえか」と答えるディーン。
父が消えても、母が、キャスが、ジャックがいる。そしてもちろん、サムがいてくれる。
不可思議で強い絆の奇妙な今の家族もまた、ディーンの愛する家族だ。
それをジョンも察してくれた。
息子たちは立派に育ち、二人で世界を救い、自分を捨てたと思っていた父親ヘンリーは孫を助けて家を与えてくれ、そして何よりメアリーがいる世界。
これが夢でも現実でも、この目の前にいる二人に後悔と謝罪、愛情を伝えられた。
ジョンも癒されたんだよ。彼が鬼軍曹になり息子たちに厳しくなったのも、メアリーを失ったからだけではないと思う。ヘンリーが賢人の仕事を取り、自分と母を捨てたと思ってた。
自分は二人の息子を絶対に守ると誓ったからこその束縛だったと思う。幼い二人を残して狩りに出かけることも多かったが、妻の復讐と共に次男の秘密を追求しなければ、二人を守れないと思っていた。
すべてをさらけ出し、息子たちの成長を見て、メアリーと再会できたジョン。
それがこの、穏やかな父。
メアリーの気持ちもね…。もう泣けるわ。一番シンプルに幸福の絶頂を味わい、また失った。つらい。
生き返ってからずっと、息子たちとジョンに与えた運命への罪の意識にさいなまれていた。でも異次元での自分が取引をしなかったことで、息子たちは生まれず最終戦争で世界は壊れたことを知った。
『愛する男を復活させるためでも、悪魔とは契約しない』という“正しい選択“をしたはずの異次元のメアリーは、子供を持つ幸せも知らずキャンベルのまま死んだんだよ。
自分が始めたことだと思っていたけれど、実は「ウィンチェスター神話」に引きずり込まれたメアリー・キャンベル。引きずり込まれて得た幸せと、失ったもの。
ジョンがそこにいるのを見た時のメアリーの表情、ほんと良かった。
残念ながらもう異次元ボビーとのことはなくなったね。ボビー自身も自分の家族のことから抜けられないし、メアリーはジョンと再会してしまった。
また失ってしまったけど、特典でサマンサも言ってた。メアリーは区切りをつけたと思う。
ジョンとの生活も、問題のない理想の夫婦でもなかった。ディーンの回想にあった、ジョンが帰らない日。浮気があったのか喧嘩だったのか、それはわからないけれど。おそらくメアリーが隠していたことが、夫婦の間に溝を作ってたんだと思う。
それでも愛し合ってた。再会したジョンは、「これからもずっと夢中だよ」と言ってくれた。冷や水をかけるつもりはないが、ジョンはメアリーの死後にアダムを作ったし、他にも寝た相手もいた。メアリーも一度ケッチと寝たが、単なる発散。二人とも互いがいなくなった世界は灰色だった。
メアリーの運命は、ジョンと出会い息子たちを授かること。それがのちにどれほどの苦労を息子たちに与え、その場にいられない自分がいたとしても。この家族のサークルは必然だった。
メアリーは色んな意味で解き放たれたと思う。
だからこの先は、余生だったんだよ…。
ジェフリーは、放映された2019年がジョンが死んだ時と同じ52歳だったそう。シーズン1,2の時は自分より老けた役をしてた。2003年当時のように若返らせずに現在のジェフで演じたことが、アラフォーの息子たちにふさわしい父親になった。サマンサも30代始めのメアリーを演じるのに、いつもは少しだけ修正が入ってると思うが、今回は年相応に見えた。
成長した息子たちの両親としてのジョンとメアリーがそこにいた。
泣きはらして腫れぼったい目のメアリーが可愛かった。食事の時もずっとジョンを見つめてる。
30年の時をスリップした彼女は、成人した息子たちの母になることを自分に強いていたけど、ジョンに再会して一気に昔のメアリーに戻ってた。
そしてサム。賢いサムはタイムスリップの危険性をいち早く察知したけれど。
それでも成長した姿を父に見せて謝り、謝られたことの大きさ。正しかったと兄に言った想い。
シーズン4でマットが演じた若い頃のジョンに、自分が息子と知らない彼にそれとなく伝えてはいるんだよね。でも今初めて、息子としてジョンに向き合えた。
ダッドが死んだときのことを何よりも覚えてると言う告白に泣いた。私も同じ。間に合わなかった。
幼い心に傷を負ったディーンとは違い、サムは家族団らんの記憶がない。サムの知る父は、ずっと厳しく束縛するジョンだった。
知らなかった母との時間を得て、父と和解できた。
この再会は束の間で、また失われた。でも家族4人は心のうちを明かし、癒された。
本当ならシンプルに、「異次元のミカエルを殺してほしい」と宝珠に願えば話は終わってた。
けれど物語の都合上だけでなく、兄弟はいつでも困難を越えていく人生を選ぶ。
それに必要なのは、家族とその愛だけ。
ディーンの心の底の望みは正しかった。
ザカリアによると、2003年にジョンが消えた時点でウィンチェスター神話は消えている。ジョンを含めての壮大な計画だったということ。ジョンが息子たちを鍛えなければ、今の世界はない。
サムはあのままスタンフォードを出て弁護士になるのはわかるが、どういう道筋なのか鼻持ちならぬジョブズ似のケール野郎になり果て(ジェシカとも結婚してなさそう)、一人になったディーンは狩りを続けたが、細かい弟がいなくて雑だからか、ばっちり指名手配人。キャスはかっちん玉の天使戦士で兄弟を知らず、ジャックは死んで復活するどころか生まれもしない。
兄弟が出会い、別れた多くの人々とも出会わない。ジョー、エレン、チャーリー。ケヴィン、ジョディ、ドナ、沢山の絆。クラウリーやロウィーナ。そしてカスティエル。ヘンリー爺ちゃんも知らず、バンカーも閉められたまま。
もしかすると、ボビーとも親交がない。兄弟を助け、二人の絆を支えてくれた人。
サムとディーンの絆がない世界だから。
ファンにとってはまじありえない世界。けれど世界は続いてた。つまりはウィンチェスターじゃない誰か、たぶん他の「兄弟」がその任を負った。
ヒーローでも特別な存在でもない。けれど異次元を開けてミカエルをつれてくることもない世界。
それを選ぶこともできる。今の自分たちから見れば、平凡で痛みが少ないまま死んでいく男たちの人生を。
ディーンはそれに気がついた。自分たち兄弟が負った傷、苦しみ、痛み、別れ、悲惨すぎる人生。
でも多くの友情と助けと愛情も得た。失っても与えられ、互いにも与え合った。
失敗と後悔と罪悪感にまみれても、今の自分であればこそ、誇れる。今の自分と今の弟を。
たとえミカエルと箱に入る結末になろうと、弟と愛する者たちが必ず道を見つけてくれる。その信頼も取り戻したんだと思う。
ネタバレすれば、この先のエピソードで兄弟、特にディーンはファンからの非難を浴びる行動をとる。けれどそれも、彼の一番大事な「家族」ゆえの苦しみからだと思えば、よくわかるんです。
タイムトラベルものにはパラドックスがつきもの。一つの世界に違う二組の兄弟が存在することの説明は難しい。異次元や並行世界での兄弟なら、ボビーやチャーリーのように別人なのでわかる。けれどジョンが来た時から少しずつ別の兄弟に成り代わるとか、ちょっと考えただけでは?になる。ジョンが消えてからの兄弟と、今ジョンと再会した兄弟が融合するのか? いつよ。メアリー、ジャック、今のキャスも異次元から来たメンバーも、どの時点でいきなり消えるんだ。
歴史はその瞬間の選択で作られていく。ジョンが来た時点で別の時系列ができて、彼が帰らない世界も作られていくはず。メアリーも消えない世界が。
ジョンが加わった4人のウィンチェスターと、キャスとジャックも入れた家族の物語が始まる時系列も作られるはずだと思う。それも見たかったが、そうもいかないドラマ(^^;
でも2003年に戻ったジョンは、夢として覚えてた…。
未来に行った記憶が残ったまま過去に戻ると、歴史を変えてしまう恐れが出てくる。だから宝珠は記憶を残さないはずだが。
ディーンがそれで懲りたと言ってたように、ジョンが何かしらそれまでと変わった態度を息子たちに取ったり、賢人の館を探し出そうとしたりすれば、その時点で新しい時系列、新しい物語ができる。
夢としての記憶は、次第に薄れて忘れるのかもしれないね。だけど成長した息子たちに会ってしまったジョンは、何かしら変化が起きると思うんだよね。
「if」はロマンであり、アナザーストーリーは無限。けれど追うべきは、今の兄弟の物語。
タイトルの「レバノン」は、バンカーが人知れず存在する小さな町。
謎の二人組なれど、ちゃんと街の人とも知り合って付き合いがある。酒屋のおやじ、兄ファンの郵便局のおばちゃん。一か所にいられず、そんな付き合いはあり得なかった兄弟が。母と天使とネフィリムの家族もいる。
ウィンチェスターの名は伏せたかったんだろうが、母の姓であるキャンベルだと、実はサムはサミュエル・キャンベル。あのじさまと同じ名になる。ディアンナばあちゃんゆかりの兄はディーン・キャンベル。メアリーは息子たちが両親を思い起こさせる呼び名を使っているのを聞いてどう感じてたんだろう。
これはウィンチェスターの系譜であったバンカーに、キャンベルも融合したことになるのでは。メアリーが来たからだけでなく、家族の歴史がここで重なった。
シーズン4の100回記念は、こちらのミカエルを受け入れるかの話だった。ディーンとサム、アダムという3兄弟が揃った。
シーズン10の200回記念は、スパナチュ・ミュージカル(笑) 家族の歴史を女子高生たちがなぞり、自分たちの人生を外側から見た。
シーズン14、300回記念にして最後のぞろ目になるこの回もまた、家族のストーリー。
家族が癒される話だった。
これは大きな前振りでもあったと、あとで知る。
これを書いてる今、まだファイナルシーズンを通しで見ていない。けれどこの回を見た時に、やはり最後には「家族」の話に帰結する、それがスーパーナチュラルだと確信してた。
100回記念に出たザカリアと初期のキャスを再び登場させたというオツな演出。キャスファンには悪いが、このドラマの節目は必ずウィンチェスターの血筋の話になり、あとは脇に回る。
ジャックやバンカーの居候たちが留守なのも、宝珠が4人水入らずを設定してくれたのか。
でも初期キャスも、ファンにとってはプレゼントでもあるよね。
それにしても100回記念と300回記念で、それぞれ兄弟に殺されたザカリア先生、すごくない?(笑)
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