内藤環境管理株式会社の”あなたの分析室”だより

報道発表資料のお届けや、どんなことをしている会社なの?の疑問や化学分析のプロとしてのこだわりを解説!

第2回 -偏光顕微鏡によるアスベスト分析-

2014-12-26 11:02:31 | 技術情報 アスベスト分析

第2回 –偏光顕微鏡によるアスベスト分析-

 最近、アスベスト分析で“偏光顕微鏡”という言葉が話題にあがることが多くなりました。偏光顕微鏡によるアスベスト分析という馴染みのない言葉に戸惑うと思います。
 前回は、実体顕微鏡などについてご紹介しました。
 そこで、第2回目では、偏光顕微鏡によるアスベスト分析についてご紹介させていただきます。


 今回は、一部ではありますが実際に実体顕微鏡と偏光顕微鏡を使って、クリソタイル(白石綿)を見つけてみましょう。もちろん、実際の分析工程はもっと沢山たくさんあります。ご興味がある方は、弊社ザ・ナイツレポート「アスベスト分析方法の改定(2014年)」に詳しく記載されておりますので御一読していただければ幸いです。

 それではステップ1。実体顕微鏡でサンプルを観察します。



 これが実体顕微鏡です。粉じんが飛散しないようにカバーをかけています。

 実際にサンプルを実体顕微鏡で観察してみると・・・



 中央赤丸内に繊維が見えます。これを偏光顕微鏡で観察してみましょう。



 これが偏光顕微鏡です。先ほどの繊維を前処理し、スライドガラスとカバーガラスに挟み込み、飛散しないようにしてから観察をします。

 ステップ2。偏光顕微鏡で、形態、消光角、伸長の正負、多色性、分散色などの光学的特性を観察します。
偏光顕微鏡の中央に前処理をしたスライドをセットします。



 偏光顕微鏡の特徴として、サンプルをのせたステージが360°回転します。
 この様に、スライドをのせたステージが回ります。



 それでは、顕微鏡を覗いてみましょう。
 スライドを動かしていくと、下の写真にある様な繊維を見つけました。
 どのような繊維か、観察してみましょう。



 繊維の形に着目します。写真では波状の繊維の束が見てとれます。この様に、見つけた繊維の形を観察(形態観察)します。クリソタイルの繊維は写真のように、波状の形態をした繊維なのです。

 次に、多色性を見てみましょう。



 ・・・ほとんど何も見えません。実はこれでいいのです。クリソタイルの多色性観察では、“無色”というのが特徴なのです。この特徴を活かし、有色の繊維と無色の繊維を見分けることができるのです。クリソタイルの繊維は無色ですから、色が着いた繊維はクリソタイルではないとすぐに判断できます。

 次に、消光角を観察してみましょう。



 写真中央に繊維の束があるのですが、何も見えません。しかし、ステージを45°回転させると!



 繊維の束が見えてきました。連続的に見てみましょう。



 これはクリソタイルが“直消光”と呼ばれる現象を起こすからです。直消光は、繊維の長手方向が視野に対して垂直や平行の時に消光し、ステージを回転させ斜めの方向に繊維を向けると光りだし目視できるようになる現象です。

 次に伸長の正負を観察します。
 顕微鏡の光路中に色が着いた板を挟みステージを回転させると・・・



 色が変わりましたね。
 繊維の長手方向が右上の時に青色、左上の時オレンジ色に見えるのが、伸長が“正”といわれる現象です。

 最後に、分散色の観察を行います。
 下の写真は、特定の屈折率に合わせた液体(浸液)に繊維を封入させたものです。



 ここでステージを回転してみると・・・



 色が赤紫から青色に変わりました。これは、アスベストの屈折率が2つあるのを利用した見わけ方で、特定の屈折率の浸液にアスベストを浸すと、特徴を持った色の変化が観察できるのです。これが分散色の観察です。クリソタイルの繊維を観察するときは、屈折率が1.550の浸液を使用します。

 

 まとめると、形態は波状、消光角は直消光、伸長の正負が正、多色性は無色で、分散色は屈折率1.550の浸液に浸したとき赤紫色の鋭敏色を示し色が変化する。
 これらの光学的特徴を併せ持ったアスベスト繊維が、クリソタイルなのです。

 先にも書きましたが、実際の分析工程やクリソタイルの観察対象は、他にもたくさんありますが、今回はその一部分ご紹介させていただきました。なお、今回観察した内容について下表にまとめました。



 
 分析担当者はこれらの特徴を、偏光顕微鏡を使って観察しているのです。
 次回は実際に偏光顕微鏡を使って分析を担当している者から、現場の声をお届けしたいと思います。
過去の連載(リンク)
第1回 アスベストの分析方法について
キーワード:アスベスト


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偏光顕微鏡によるアスベスト分析

2014-05-07 18:38:20 | 技術情報 アスベスト分析

第1回 -偏光顕微鏡によるアスベスト分析って何?-

 最近、アスベスト分析で“偏光顕微鏡(へんこうけんびきょう)”というキーワードが
話題にあがることが多くなりました。偏光顕微鏡によるアスベスト分析という馴染のない言葉に戸惑うと思います。
 2012年、建材中に含まれるアスベストの定性分析法に関する国際規格として
ISO22262-1(以下:ISO法)が制定されました。ISO法では、主に実体顕微鏡や
偏光顕微鏡を使ってアスベストの分析を行います。
 日本においても国際規格への整合化の流れにあって国内への導入にむけた
活動を行っています。その活動の中で、“偏光顕微鏡”という言葉がよく聞こえ
るようになったのです。

 そこで、今回から複数回に分けて、実体顕微鏡と偏光顕微鏡によるアスベスト
分析についてご紹介させていただきます。

 では、実体顕微鏡や偏光顕微鏡とは何でしょう?

 最初に実体顕微鏡について説明します。この実体顕微鏡を例えて言えば、
高性能な虫眼鏡といったところです。下の写真が実体顕微鏡です。

Photo

 実体顕微鏡で観察すると、石綿含有のスレート材といわれる建材は
下の写真のようにみることができます。

__2

 中央赤丸内にある繊維がクリソタイル(別称:白石綿)といわれる
アスベストです。肉眼で目視しただけではどの様な種類や形状をした繊維なのか
がわかりませんが、このように拡大すると、色々な特徴が見えてきます。
 しかし、繊維を拡大しての目視観察だけではクリソタイルの繊維であるとは
結論づける(同定する)ことはできません。
 そこで、登場するのが下の写真の偏光顕微鏡です。

_2

 では、偏光顕微鏡をどのように使ってアスベストを同定するのか。
 次回、それをご紹介いたします。
 気になること、ご質問などがございましたら、弊社お問い合わせフォームより
お知らせくださいませ。

第2回 -偏光顕微鏡によるアスベスト分析-

キーワード:アスベスト











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空気中のアスベストにご用心!!

2011-07-06 16:08:18 | 技術情報 アスベスト分析

50    46

 らぶ    びっと

らぶ :こんにちは、らぶです。

びっと:こんにちは、びっとです。

    今日は久しぶりにアスベストについて、話してみよう。

らぶ :確かアスベストは建材を分析すれば良いんだったよね!?

びっと:よく覚えていたね。

    でも実は、空気中の分析もあるんだよ!

らぶ :ウソ~!!何で?

    アスベストって肺ガンや中皮腫等を引き起こすんだよね!?

    それが空気中にあるのってすごく危ないんじゃない!

びっと:そうだね。

    空気中に浮遊しているアスベストは、ほぼ肉眼で確認することが

    出来ないから、ますます不安だよね。

らぶ :じゃあ、空気中のアスベストを分析するために、どんなことを

    するの??

びっと:まずは、空気をポンプなどで吸引して、フィルターにアスベスト

    の繊維を捕集するんだ。

    そしてフィルターを透明にした後、顕微鏡で観察するんだよ。

らぶ :そうなんだ!

    本当に小さいものなんだね、アスベストは。

    でも、繊維ってアスベスト以外の繊維もあったりするんじゃない?

    例えば・・・草や木などの植物だったりとか、人の髪の毛だったり

    とかあると思うんだけど・・・。

びっと:空気のアスベストは形状で判断するから、それらを計数してしまう

    可能性もあるんだ。

    だけど、そういう場合は灰化という方法を使うんだよ!

らぶ :灰化?

びっと:低温で有機的な繊維を燃やしてしまって、無機的な鉱物等の繊維

    のみ残す方法なんだ。

    アスベストは無機繊維だから燃えないし、観察することができる

    よ。

らぶ :そうなんだ。

    それで正確な分析ができるのね。

    でも、一番はアスベストを空気中に飛ばさないことだよね?

びっと:そうだよね。

    それにアスベストって分析方法が意外にたくさんあるんだ。

    だから、目的に合わせてアスベストを分析・評価しないと

    いけないんだ。

    例えば、アスベストを含有しているものの工事でいえば、労働安全

    衛生法に則った作業環境中の分析や、大気中のアスベスト汚染を

    評価する大気汚染防止法の環境庁告示の方法による分析があったり

    ね。

    詳しくは当社のHPを見てみると良いよ。

らぶ :すごいなぁ。

    現場で作業する人たちや近隣住民の方々の健康を守るためにも、

    分析をすることはとても重要だね。

    じゃあ、HPを見てみるね!

内藤環境管理株式会社のホームページ


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アスベストの統一報告書について

2009-11-30 20:48:02 | 技術情報 アスベスト分析

Photo  Photo_2

    正式には『石綿障害予防規則 第3条 第2項に基づく石綿

    分析結果報告書』と言うんだよ。

ミル子:なんだか難しそうですね。

    石綿障害予防規則(石綿則)は、どういう内容なんですか?

ミル蔵:石綿則は、アスベストを含んだ建物等を解体する際に、

    解体作業に従事している方たちの健康被害を未然に防止

    する目的で制定されたんだ。

    その中で、第3条第2項では、建築物を解体する際にアス

    ベストの使用の有無に関する分析調査について規定して

    いるんだ。

ミル子:なるほど。

    でも、なぜ全国で同じ書式にする必要があるんですか?

ミル蔵:石綿障害予防規則が制定された頃は、アスベストについて

    社会的にも非常に注目されていた時期で、その頃から

    アスベストを分析する検査機関が一気に増えたんだ。

    検査機関が増えたこと自体は良いことなんだけど、各検査

    機関で発行している報告書の内容がバラバラだったんだ。

    記載内容が不十分であったり、表現が不適当であったり、

    それが原因で発生した問題もあるみたいだよ。

ミル子:そこで、日本作業環境測定協会が報告書の書式を統一させる

    ことにしたんですね。

    具体的には、どんな内容が記載されているんですか?

ミル蔵:記載内容については、解体工事に従事した人が40年後に

    健康被害が発症した場合でも、当時の事前調査が正当な

    ものであったことが証明できるよう、分析装置の測定条件

    から、含有率算出のための全てのデータを掲載することに

    なっているんだ。

ミル子:全てのデータを載せるんですか??

    それは、大変なことですね。

    絶対にこの報告書の書式を使わなければならないんですか?

ミル蔵:原則としてこの報告書は解体工事における事前調査が対象で、

    しかも、法令書式ではないので、あくまで日本作業環境測定

    協会が推奨しているものなんだ。

ミル子:ということは、使わなくても良いということですか?

ミル蔵:そうだね。

    でも、数十年後に起こり得る問題を考えると報告書として

    しっかりした記録を残しておくことはとても大切なんだ。

    だから当社では、解体作業に従事している方たちのリスク

    管理に少しでも貢献できるよう、統一報告書を発行するため

    のシステムを整備したんだ。

ミル子:適切な書式の報告書を作成することで、社会に貢献しているん

    ですね。

        Gif_2

      図. 統一報告書例(抜粋)

   内藤環境管理株式会社のホームページ

ミル蔵:こんにちは、ミル蔵です。

ミル子:こんにちは、ミル子です。

ミル蔵:今日は、アスベストの統一報告書について話していこう。

(アスベストについての技術情報はこちらをご参照ください↓

http://www.knights.jp/knightsreport/kr.php?asb&PHPSESSID=f56f0eb8f53bb18e85556f25ed45752d

ミル子:??統一報告書ということは、全国で同じ書式の報告書

    ということですか?

ミル蔵:その通り。


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建材中アスベスト分析について

2008-10-03 20:22:23 | 技術情報 アスベスト分析

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こんにちは、チュー太です。

近年話題になっているアスベスト。みなさんも耳にする機会が多いのではないでしょか?今回は建材中アスベスト分析の中身についてご紹介したいと思います。

建材中のアスベストは、①顕微鏡によりアスベストの繊維があるかどうか、②X線回折分析によりアスベストのピークがあるかどうかの2通りの方法により、含有しているか否かを定性的に判定する分析方法となっています。

判定の流れを図に表してみました。

Photo_15

顕微鏡でアスベストの繊維が認められなければ、含有していないことになり、両方の分析で認められれば、アスベストを含有していることになります。

少しややこしいですね。

では、実際のX線回折分析では、どのように判定しているかを説明したいと思います。下の図は、それぞれアスベスト検出・不検出を表していますが、ピークの有無が分かりづらく、見落としてしまいそうです。

Photo_16

           アスベスト検出

*アスベストのピークはいくつかありますが代表例として表記しています

Photo_17

        アスベスト不検出

アスベストの基準値は0.1%ですが、基準値付近でアスベストを含有しているサンプルの場合には、アスベストのピークがノイズ(2)と区別しづらいんですね。

しかし、このような場合でも、当社のプロたちは、サンプルの性状や顕微鏡の分析結果との比較など、豊富な経験・実績の積み重ねにより適切な判別を行うことを可能にしています。

その成果が、作業環境測定協会をはじめとしたクロスチェック事業において、Aランクに合格するなど、社外的にも優秀な分析者と認められる結果につながっています。

アスベスト分析については、続編をお届けしますのでお楽しみに。

(2)ノイズとは、ベースラインが直線ではなく変動していて、ピークのように見える細かい波のことです。


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