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放送大学-面接授業「港湾活動と社会発展」(2016)その1・教室での講義

1ヶ月以上前ですが、放送大学の神奈川学習センターで5月12日(木曜)・13日(金曜)に面接授業「港湾活動と社会発展」を受講しました。放送大学の面接授業は土日開催が多いですが、この講義は平日開催。平日の方が都合がいい私としてはありがたいですね。

放送大学ではテレビ・ラジオ放送ではなく、教室等で講義などを行なう授業のことを「面接授業」と呼んでいます。「面接」と聞くと個別指導など少人数をイメージしてしまうような。

なお受講料は他の面接授業と同じく5500円。取得できる単位数は1単位です。

弘明寺の神奈川学習センターに行くのは4月の「現金社会からの脱皮」以来の2度目。
御殿場線で国府津・戸塚経由で行くつもりが、なんと予定の御殿場線にちょっとの差で乗り遅れてしまいました間にあう時間に家を出たつもりなんだけど・・
仕方がないので善後策として、小田急線・相模大野・湘南台経由で向かうことにして、小田急線に乗ったら車内放送で「東海道線は川崎駅での沿線火災(線路からの発火)で運転見合わせ中です」と
もし御殿場線に乗り遅れないで予定通り国府津・戸塚経由だったら、平塚辺りで1時間ぐらい足止めを喰らい遅刻していたはず。予定の電車に乗り遅れたお陰で、学習センターにはぎりぎり間にあうぐらいの時間に到着できました


今回の講義「港湾活動と社会発展」の内容としては
「日本の輸出入の99.7%は港湾を用いたものであり、港湾は社会にとって重要な存在。また横浜市は港湾の発展と共に成長した大都市。横浜港を中心に港湾の役割・機能を学びながら、世界の貨物流動の現状と地域の発展を学ぶ」
といったもの。

講義のテーマとしては以下の通り。(シラバス引用)
5月12日木曜日
第1回 横浜港発展の歴史
第2回 港湾背後圏の発展と港湾活動
第3回 世界の海運の現状と貨物流動
第4回 開発途上国における港湾開発と経済成長

5月13日金曜日
第5回 横浜港内見学(横浜市からの便宜供与を受ける)
第6回 横浜港コンテナターミナル見学(本牧埠頭地区)
第7回 横浜港物流センター見学(大黒埠頭地区)
第8回 横浜港見学を踏まえた補足授業

講師は特任教授の池田龍彦氏。
運輸省港湾局や海上保安庁にて灯台建設や途上国の技術協力に携わった後に、横浜国大にて教授としてインフラなどを研究されたそう。

この授業は2日目が教室ではなく、実地授業として横浜港内見学が設定されているのが特徴です。実地なので第○回というのは便宜的な表現。実際の集合時間やスケジュールは規定の時限とは異なります。
ちなみに同内容で翌週にも実施されているそう。
定員は24名と少人数ですが、これは2日目の見学に利用するバスの定員の制限だそうで。
大学の授業として考えると24人は結構少人数。ゼミなどのようなイメージ??

テキストや資料は教科書のような書籍の形ではなく講義前にレジュメが配布される形になります。

5月12日木曜日 第1時限・横浜港発展の歴史

講義の前に自己紹介として、氏名の他に簡単に居住地・受講動機などを1人ずつ順番に話す形に。
私は3年次入学の2年目。港や船などに前から興味があったので・・といった話を。

その後講義として、まずは横浜港の歴史を概説
1853年のペリーの横浜来航から始まり、その後の日米和親条約・日米修好通商条約での開港。
近代水道の父でもあるヘンリー・S・パーマー氏の港湾開発計画
戦後米軍による瑞穂岸壁や山下公園周辺の接収など
近年の巨大船対応での水深30mの南本牧ふ頭開発
現代の大型船ではベイブリッジの下をくぐれずにクルーズ船が大桟橋に着桟できない問題
外交客船の来航数では日本では博多が日本一。横浜はかっては2位だったものの那覇にも抜かされ現在は3位だそう。博多・那覇の飛躍は中国などアジア方面が伸びていることを感じますね。


横浜港の主要外貿コンテナふ頭として本牧ふ頭・南本牧ふ頭・大黒ふ頭の3つ

国連海洋法条約(UNCLOS)・海洋基本法を簡単に紹介

日本のインフラ整備の一つとして高速道路網の整備
1956年世界銀行のワトキンスレポート
「日本の道路事情は信じられないほど劣悪で、工業国でこれほどまでに高速道路網を整備していない国は他に例がない」など、高度経済成長でインフラ整備が進んだことなど

海上コンテナの数え方として、20フィートコンテナ(6m・海上コンテナとしてはハーフサイズのもの)1個分を1TEUとして換算すること。
40フィートコンテナのサイズは、長さ12m×横2.4m×高さ2.6m。内容量67m3。最大積載量約27トン。4人家族4トントラックの引越しなら6~7世帯分
現代のコンテナ船のスピードは飛行機の24分の1。横浜港までの輸送日数は米国ロサンジェルスからは10日・ニューヨークは17日、オランダロッテルダムは28日など

世界一のコンテナ船は1万8千個積載可能で大きな船の方が燃料や人員コストがよいことなどコンテナ船の基本となる話。世界最大のコンテナ船会社、MARESK LINEなど。


5月12日木曜日 第2時限 港湾背後圏の発展と港湾活動

ここでは東京港を初め東京湾内各港と首都圏のかかわりなどを中心に解説
東京港ー商業。川崎港ー工業。横浜港ー流通。千葉港ーエネルギー・工業。木更津ー工業・漁港
といった特徴。大阪・神戸は阪神港として統合されたものの、京浜港構想はなかなか進んでいないこと。
1943年の横浜市会決議で東京港の国際化(開港)を反対決議を出したことなど

みなとみらい21プロジェクトの紹介。
契機としてコンテナ化で新港地区が不要になったこと。国鉄横浜駅の操車場・三菱重工横浜造船所が再開発用地として提供されることで、1979年にマスタープランを策定
2011年に土地区画整理事業が完成。MM21地区居住者は3800世帯7600人に。1万人を超えると小学校が必要になるなど。


5月12日木曜日 第3時限 世界の海運の現状と貨物流動

ここでは世界の海運として、貨物船の種類(コンテナ・ドライパルプ・自動車・オイルタンカー・LNG)などの紹介。
また、スエズ運河やパナマ運河の紹介。スエズ運河は幅員の問題から、「コンボイ」という同方向に向かう船団を組み単線鉄道のような運航をおこなっていること。
パナマ運河では太平洋側と大西洋側の海面差を調整する為に閘門式運河という特殊なシステムを採用していること。これは年間雨量5000mmという豊富な降水量のお陰でできること。
2016年6月完成目処でパナマ運河の拡張プロジェクトが行なわれており、完成するとより大型(喫水12m→15.2m)の大型船に対応できること。
パナマ運河・スエズ運河共に通過可能な船の大きさには制限があるよう。

上海・シンガポール・釜山港などアジア各地の主要港の取扱量の伸びに比べ、日本は遅れを取っている状態(特に上海港の伸びが凄い)
トランスシップコンテナ(ハブ港でのコンテナ積み替え)では釜山港の伸びが凄い一方で日本はといった話。
原因の一つとして日本は土地代・人件費・設備費が高い。国内他産業と比較しても港湾業界は近代化が遅れ、独占状態で既得権益が重視されているなどの問題。
横浜港などから海外行きコンテナ船に積まれるコンテナは実は空箱の返却が多いなど。

ハブ港問題では、日本から釜山経由でヨーロッパや米国向けコンテナが年間で100万TEUあること。
距離的に遠回りになる米国向けでも釜山経由が主流化しているというのは驚く部分も。
地理的問題の他にコスト/サービスの問題など

北極海ルート問題では、大幅な距離短縮が可能で海賊がいないなどメリットも多いものの、水深が浅い場所があることやロシア問題などもあり一筋縄にはいかないのでは?など



5月12日木曜日 第4時限 開発途上国における港湾開発と経済成長

こちらでは、担当講師の池田教授が過去に関わった、タイ・レムチャバン港やフィリピン・スービック港・インドネシア・タンジョンプリオク港の開発計画などの紹介。

タイレムチャバン港の開発計画としては「東部臨海開発計画」として
1970年代にシャム湾の天然ガス田発見を背景に、バンコク首都圏の集中回避。過疎地の振興と新たな産業基盤の創出。農業中心の産業構造からの転換。などを目的とし、1985年からスタート
当初、日本案と世界銀行案(マプタット港)で対立しタイの国論を2分する論争があったものの、結果に日本案が採用。82~93年にかけて、16事業27件で1338億円の円借款が行なわれたこと。
これにより、完成乗用車輸出、GDPや輸出総額の引上げ、コンテナ取扱数増大、などタイの近代化に大きく貢献したことなど。

この項ではレジュメでもgoogle earthから取得した航空・衛星写真が活用され、各港で非常に大規模な埋め立てと港湾整備が行なわれたことが一目でわかります。
雑然として密集した既存陸上部の都市と較べると大規模で整然に整備された埠頭はまるでシムシティなどゲームかのようで別世界のようなのがレジュメの写真でわかります。
整備された港湾を利用した貿易活動による経済効果はもちろんこと、整備するための大規模な土木開発の経済効果は計り知れないものだなと感じます。

講義中に質問事項を書いて提出がありました。翌日の授業時間内に随時回答を紹介するそうで・・。


といったところで1日目の講義が終了したわけですが、講義全体の感想としては、普段日常生活の中ではなかなか知ることが出来ない、貨物船による貿易活動の一端を知ることが出来ました。
特に海外の事例から、近代化・工業化する上で港湾整備が非常に大きな役割を果たしていることが実感できました。一方でトランスシップ(積み替え)問題など、アジア周辺諸国の圧倒的な伸びに押され、日本は国際的な主要港としての地位が低下していることも感じ取れるのは寂しさも感じます。

講義自体としては一部のスライドがレジュメ化されていなかったり、レジュメと説明順が一致しない部分があったのは少々分かりづらく残念でした。また少人数授業なので学生の反応を見ながら・・という部分が多かった反面、内容的に間延びした部分がる印象もありました。もう少し密度を濃くして他のエピソードも紹介して欲しかったかなとも。

また講師の池田教授からは、翌日最後のまとめの際に「講義の内容が全体的にコンテナ船の話に偏りすぎた。LNGや他貨物などの話もしたかった」といった反省談がありました

全体的に堅い話が続きましたが、翌日2日目は横浜港港内見学。普通では見学できない場所での見学も予定されているので楽しみですね。

次回は2日目の港内見学を紹介します。

この記事は実際の講義を受講してと当日配付されたレジュメを元に書いていますが、私の認識不足などにより、実際の講義での内容と異なっている可能性があります



2016/6/21 1:38 (JST)

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