9月13日木曜日に開催された紀行作家下川裕治先生の「世界の超長距離列車を乗りつぶす」発売記念トークショーに参加してきました。下川裕治先生のトークショーに参加するのは昨年9月以来1年ぶり。
2017年9月・下川裕治著「東南アジア全鉄道制覇の旅(タイ・ミャンマー迷走編)」発売記念トークショー
その間にも数回トークショーの開催があったのですが、会場が西荻窪で平日の22時近く終了。とスケジュールがあわなかったりで参加できませんでした今回はテーマが鉄道の旅ということで参加することにしました。
会場は例のごとく西荻窪の「旅の本屋のまど」
参加費用は1000円(書籍代別途)。受付時に支払います
予定通り19時30分に講演がスタート。今回は下川先生の著作ではよく登場する阿部カメラマンが一緒。
下川先生の姿は本に掲載されている写真で時々登場しますが、阿部カメラマンの登場はあったかどうか・・・レアですね
近頃は自分のことを世間では負の紀行作家。本は負の旅行書。読めば読むほど行きたくなくなる。と呼ばれているようだ・・。今回の本の旅も乗っていいのはシベリアと中国だけ。この二つは一生のうち一度は乗っておいた方がいい。それ以外(インド・アメリカ・カナダ)は乗るべきではない。
シベリア鉄道は7日間乗りとおすと自信がつく。シャワー無しで過ごしても案外大丈夫。日数の無駄遣いをしているような気分になるほど暇。車窓の変化に乏しい・・紀行書等を読んだだけでは騙される(端折られてるので)
何もない中でどれだけ楽しめるか?が旅の能力の一つ
という下川さんの出だしで始まり、ここからは本の各章毎の話に。
中国西蔵鉄道
景色がよく天気もいい。いつ行っても景色が保証される。自分は雨男(雨女)だけど・・という人でも大丈夫
星空も凄い。空や山や景色が素晴らしい。一生に一度は載るべきな。
ただ人がいいとかふれあいとかそういうのは期待できない
混雑が激しく列車の予約や入境許可証が取りづらい。夏は中国人の観光客が多く特に激混み。冬の方が空いている。行程が決まっていて自由さはない
旅行会社を通さないで旅行する場合、現地でのチケット確保のため日数の余裕が必要。シベリア鉄道の場合、モスクワから飛行機で日本に帰るとして全体で2週間ぐらいはみる必要がある
チベットは許可証を取る手間がかかる。c-tripなど
インド
チケットはなんとか取れるが寝台車に席がない(無指定券)。そこは車掌が調整する
寝台車としては世界最悪。リネンや枕がない。着替えなどは不可能
車両の窓に金網や鉄格子があるのはベトナムとインドぐらい。-窓から人が乗れないようするためだと分かった(そうしないと収拾がつかない)
車掌の寝台管理や調整はIT大国インドならぬ手作業の紙の台帳。定員8人のユニット(3段寝台×2と通路を挟んで寝台2段)に20人は乗せる
インドでは南は米食文化。ナンやチャパティなどパン食は北部。南部インドから日本に来たインド人がインド料理屋で働いて初めてナンを食べる・・といった余談も。南インドで食器としてよく使うバナナの葉を北部から列車で輸送する場面も
列車を降りた若者はまずは駅のコンセントでスマホの充電をする
旅行中通貨切換で500ルピー・1000ルピーの高額紙幣廃止にあい一苦労。タンス預金など銀行に持っていけない裏金を排出させる政策だが・・後日政府は失敗を認めたよう
中国
車内での食事は事前に買いだめしたカップ麺を食つなぐ。車内販売は高くて不味いがホームで売ってた肉まんが美味しかった。
車内販売は避ける→ホームで買う→停車時間が限られる→迷わずさっと買うのがコツ。
向こうの列車はダイヤからづれることが多く停車時間が読めない→まぁ最近の日本もそうだけど
海外の列車は走り出しが遅いことが多いので、飛び乗る手もあるがドアを閉められてしまうと難しい
西蔵鉄道は2段寝台×2の4人個室のタイプなので気が合う4人で貸切になれば宴会なり楽しめる
沿線風景、五体投地をしている人が見る→実は体力勝負で腹筋が鍛えられる。線路沿いにいる保安員(地元のチベット人)が列車に敬礼をしている。ラサ駅のホームは異様に広い。→西蔵鉄道の政治的意味を非常に感じる(チベット同化政策)
ロシア
ウラジオストックは正確にはウラジ・ボストーク。ボストークは支配のような意味。宇宙船のボストーク等
沿線は川が凍って道路になる。外は-15度~-20度だが車内は30度前後(32度という表示も)
車内禁酒禁煙が建前だが車掌に見つからなければOK。アルコールは隠れて飲む・・タバコはホームや車掌の目を盗んで連結面で・・。
途中駅から北京発モスクワ行きの列車と並走する(写真右)
北京発モスクワ行き、今は運賃が高くお勧めできない。乗客も1両に一人いるかどうかレベル。車掌と一対一のような空いている列車旅をしたければ・・。中ソ友好の建前で走らせているようなもの
モンゴル経由で旅をしたければ、国内列車を乗り継ぎ国境は徒歩で越えるのが値段的にお勧め。
最近のアジア圏では食堂車は楽しめない。車内販売の弁当を作る厨房の役割になっているか、あっても高くてお勧めできない
カナダ
快適で車両の設備も良いが貨物列車優先でダイヤが読めない。
バンクーバーからジャスパーまではお勧めだか、その先は・・座席車で4連泊はするものじゃない。
座席上に指定客の行先の紙があるのでそれを見て空席で適当に寝る
アメリカ
体形的に飛行機・バスに乗れない人が列車を支えている
長距離列車の旅は山に行くのが好きな人にはいいかも。買い込んだ食料の配分などの計画立て
車掌は乗客の乗降の手伝いなどのケア(体形的に自分で歩けない人等々)
カナダ・アメリカは座席車と寝台車で階級が全く違う。食堂車は両者が利用できる
寝台の客は食堂は無料だが座席車の客は有料。座席車の人は行かない方がいい
乗ってはいけない
アメリカ・カナダは高い車両(寝台)ならよい
インド、予約の意味を考えさせられる。予約ありなしの客が混在して一つの寝台を分けあう
下川さんも20前ぐらいの女性がやってきて寝台で一緒に寝る羽目に・・・。奥さんにはとても見せられない
席無し券(寝台無指定)は本来はNGか??途中で車掌が来て席が取れたといって差額100ルピー徴収されたが・・
予約あり客なし客で場所をわけあうのはインド社会の優しさを感じる→だからお勧めとか乗れという意味ではない。誤解しないで
なぜ予約するのか??インド社会の奥深さ、独特さ。人口が多い中でやりくりする工夫か
大きな駅の外国人窓口できっぷを買うと空いている列車になることが多い。主要駅同士を結ぶ急行など駅員が配慮して発券してくれるようだが、途中の小駅で買うと今回のような相席状態
ロシアビザーウラジオストックで取れるという話だが、シベリア鉄道に乗るなら10ユーロぐらい出して事前に手配した方がスムーズ。シベリア鉄道の切符はウラジオストックで買う手もある
世界一周旅行が昔流行ったが・・、飛行機なら割と簡単。陸路(鉄道)なら1か月コース。シベリア鉄道経由ならそんなに難しくない(中央アジアはお勧めしがたい)
といったところで概ね1時間30分が経過。この後、今回の本に登場した5か所(インド・中国・ロシア・アメリカ・カナダ)の旅から風景などを3分強程度の動画で紹介
質疑応答では、「下川さんが好きな交通手段は・・」
消去法で鉄道が好き。飛行機やバスは嫌い。鉄道は世界的に衰退産業。効率を考えると・・
アメリカ・カナダは座席で全区間乗車の人は意外にいる。シベリア鉄道は全区間乗車は少ない。沿線の人の生活列車。
「車内の治安、特に大混雑のインド。財布の盗難など」
人がいればいるほど安心。最初に乗った1両に数人の状態の方が危険→車掌が頻繁に来て荷物をチェーンで繋げとか気にしてくれたがお陰で寝れない
街中の方が危険。車内では乗客同士の相互監視??もしなくなったら周りの人に言った方がいい。
もの凄い混んでいるので脱いだ靴がどっかに行っちゃう・・など
空いている状態のインドの3段寝台車
中段のベッドを出すとクリアランスがなくて下段に座れないのが問題。と言っていましたが、一つのベッドに2人以上相席にさせるような実情を設計者は想定していなかったような・・まさか日本の設計とかだったりして
今回も著作にサインしてもらえました
ツーショットで写真を撮ってもらいたかったものの、私一人にあまりに長い時間を取らせるのも悪いと思ったのと、また表情が硬くなったら恥ずかしいので
アメリカとカナダがお勧めできないのは意外ですね・・と話したら、設備はいいんだけど如何せんシステムがねぇ・・と。本を読むに食料の確保に難点がある印象ですね。
今回、本は開始前に買いました。その際にサイン会終了後に質問会など2次会のようなものがあるのか?と聞いたら、そういったものはなく、サイン会後に流れ解散のようで・・
2次会があるなら帰るのを諦めて最後まで参加してネカフェなどに泊まるのも手かと思ったのですが
前回のミャンマー鉄道の時ほどではなかったものの「お勧めできない・乗ってはいけない」的な話が結構ありましたね読者などから「本を読んで同じような旅に出たら酷い目にあった」というクレームがあったのでしょうか??
自分は海外の過酷な旅を紹介しているが、決してみなさんにお勧めしているわけではない。というのが、下川先生の優しさを感じますね
記事執筆の都合などで、内容は講演の順番とは一部異なっています
本の内容や私の感想については次回の本の紹介編で書きます。
<次回に続く>
2018/9/16 6:00(JST)