2015年4月-社叢学会研究例会「風景の生態学」
2015年04月29日 12時10分19秒
社叢学会の研究例会に参加するのは前回の2月以来の2度目→前回はこちら
会場は前回と同じく国学院大学。
前回は渋谷駅から歩いていきましたが、今回は東口から学03・日赤医療センター行きのバスに乗るとします。この路線は都営バス均一運賃の210円ではなく特別に180円。歩ける距離なので210円だと微妙だけど180円ならバスに乗ってもいいかなと思えますね
ちなみにこの土曜日の12時代あたりは、なんと4分間隔と驚愕の本数。単独路線としては日本有数の本数のバス路線だと前に何処かで聞いた事があるような??
ちなみに私が乗った便は10人ぐらい。で渋谷駅から10分弱で到着。
例の如く正門付近に案内看板が出ています。
前回来たときに較べて学生が多くて大学らしい雰囲気ですね。
またまた講演の前に学食で昼食を食べるとします。今回は3号館の1階にある「なごみ」というお店に入ってみるとします。こちらは和風の雰囲気で讃岐うどんが売りの一つのよう。
さぬきうどんが売りのお店ですが、今回注文したのは「鶏のかわり揚げ定食」500円
メニューの種類としては2回のお店の方が多いような
サイトの案内によれば、講義期間中の今はなんと夜20時まで営業だそうで・・・。
さて食事の後は講演会場に移動します。
前回は殆ど?社叢学会の会員だけ。という状態のようでしたが、今回は社叢学会関係者の他にポーラ財団の関係者、更には講義期間中のようで学生も多くて盛況。学生は出席してレポートを書くと講義に加点されるそうで受付で用紙も配布していました。
開催する教室は「2号館1階2104教室」なる大教室。「いかにも大学の広い講義室」といった構造の机と椅子で、机は狭いし椅子も机にくっついてるタイプで使いづらかったです。
机や椅子の構造だけでいえば普通の会議室タイプの前回の教室の方がよかったです。
講演風景
今回は社叢学会と國學院大學の他にポーラ文化振興財団の3者合同での講演会
「人・社・祭ー文化風土の記録」として「風景を読む」というテーマで開催。
ちなみに入場料金は社叢学会等の会員か否かに関わらず無料。
最初に前回と同じく國學院大學の茂木教授の司会でスタート。
1階の学食は香川出身の理事の一押しで讃岐うどんを出していること。大学に博物館も併設しているのでそちらもお勧め。次回は講演前に是非博物館の見学、学食での昼食も楽しんで欲しい。という話があります。
次にポーラ文化振興財団の小西理事長から挨拶があり、化粧品会社のポーラ50周年の1979年に設立され、日本の伝統文化の保存・継承・振興に向けた活動をおこなっているそう。
活動の一環で記録映画の作成もしているそうで、今回はその中から「古川祭り」を上映。
社叢学会とポーラ文化振興財団、國學院大學の3者共同で「映画上映とその解説などの講演」の会を年に3~4回実施しているそうです。ポーラといえば箱根のポーラ美術館が有名ですが、他にもこのような伝統文化の保護に関する活動もしているんですね。
といったところで、まずは映画鑑賞。
岐阜県「飛騨 古川祭-起こし太鼓が響く夜」を放映。1992年に財団が制作。35分のもの。
飛騨の山中にある古川は古くから米の集積地として栄え、造り酒屋が多い酒の街。和ろうそくやちょうちんなど伝統工芸の職人も活躍している街。その古川で毎年4月に開催されるのが「古川祭り」
初日4月19日は絢爛豪華な屋台と起こし太鼓、付け太鼓による戦陣争いの中での動と静。この4月19日が古川の人たちにとっての1年の終わりでもあるかのような。
2日目4月20日の本楽祭りでは前夜の勇壮さと打って変って静かな雰囲気で行われ、屋台で披露される人形劇など昨夜とはまた違った見所が。
本編では祭りそのものに平行して、古川の町の日常から祭りの準備本番まで「古川やんちゃ」と呼ばれる祭りを支える若者達の活躍も紹介も。
祭りの全体を通じて様々な部分で「動と静」という要素が登場して、古川祭りを一言で表現するならば「動と静の祭り」であるという印象を受けました。
映画の後に飛騨古川の情緒を感じる参考映像として、1985年のサントリーのCMを放映
https://www.youtube.com/watch?v=0JiwL7BxXJA
サントリーに許可を取ろうとしたものの、アップロード者がサントリーでなかったので許可の取得が難しいので、youtubeの画面を直接スクリーンに放映します。と・・・
ここで休憩を挟み講演に。
ランドスケープデザイナーで風土形成事務所を主宰する廣瀬俊介先生が今回の講師
タイトルは「風景の生態学-飛騨古川の実証実験の例から」
まずは「風景」「生態学」「デザイン」を定義
生態というのは「人間を含めた生物や環境全体」を指すこと。また「デザイン」という言葉が商業造形であり物を売るためのテクニック。のように誤解されているが、それは誤りであること。
近代米国由来である「環境デザイン」という概念と、その代表例のニューヨークのセントラルパーク。
日本ではこれらが誤って解釈されて「環境デザイナー」を名乗る多くのものによって、「間違った仕事」により、破壊的な開発を取りつくろうかのような表面だけの「自然豊かな環境」が作られていることなどを解説。
「風景を資本とした地域経営」として経済学者E.F>シューマッハの著書から「人間には造れず(中略)代替物のない資本」「自然という資本」といった論も紹介。
これらの概念・研究を底本にした上で、2001年から飛騨古川に縁がある廣瀬氏は「朝霧たつ都」をテーマ・目標として「農村環境デザインとして各事業を展開」をすすめることに。
そこでは「土砂災害防止の為に森林管理の必要性と従事者の所得保障」「農業食料自給率向上とCO2削減」などの各種事業。
更にはグリーンツーリズムという近年の観光業界でも注目される概念にも言及して、単に「お金を落としてもらう」ということだけではなく、現地の人と友達になりリピートするようなものの必要性も論じます。
ご多分に漏れず飛騨古川でも過疎化が進み集落の人口・世帯数の減少が進むものの、コミュニティ内でいざこざが起きた際に人数が少ないと仲介者が現れず、仲直りができなくなることからも、他所から人が来ることの重要性。
そして、これら「朝霧たつ都」のテーマを次世代にも継ぐ為の情報媒体として「絵本」の制作なども行なうこと。
2004年の町村合併で古川町は飛騨市に合併されるものの、飛騨市の古川地区として「朝霧たつ都」の事業は継承されていることを紹介。
飛騨古川は歴史があり壮大かつ地域で団結する祭りが開催される土地でありながら、日々の暮らしの伝統から祭りの配役の決め方など「全体主義」ではなく「個人主義」な面が多く見られることも紹介されます。
講演全体を通じた感想としていえば・・
現代社会では乱開発の抑止、自然保護・環境保護が叫ばれ多くの人の共感を得ています。しかしその中で本当の意味での自然や環境保護が行われているのか。
単に「木々や草花が多く美しい景観がならば自然豊かで保護されているようなイメージ」で語るのではなく、元からの地形や植生などを意識して、見た目のイメージではない「環境や自然」との調和が必要だということ。
まだ自然や環境を保護することの重要性はわかっていても、日々の生活の利便性や経済性との中で折り合いをつけることが難しく、疎かになってしまうことも多々あります。
今回の講演では飛騨古川を例にとって、単に「自然・環境保護をすすめましょう」という題目、概念を唱えるだけでなく、如何に地域住民に受け入れられ役立つような、日々の生活をより豊かにする為の自然や環境の恵みを生かす知恵や工夫。昨今叫ばれる地方活性化のヒントもあったように思います。
これら「風景の生態学」の理念はイギリスの学者"E.ハワード"が提唱した
「ガーデンシティ(田園都市)」の理念でもある「都市の利点」と「農村の優れた環境」を結合した都市の形成。
にも通じるものがあるようにも感じました。
「田園都市の形成」にあたって「見た目の美しさ、イメージだけの自然の豊かさ」ではなく、元々の土地の植生や生態などを生かして発展させる形で都市計画を行うことが、理想的なガーデンシティの形成に必要なのかなと思いました。
今回の会の最後に、社叢学会理事長であり秩父神社宮司の薗田氏が挨拶。
講師の廣瀬氏の父とは子供の頃からの友達であったことなど、出会いなどのエピソードに始まり、講演の総括。また「社叢学会は貧乏な学会であり定例研究会の開催もままならない中、東京では國學院大學の協力で定期的に開催出来ている」といった社叢学会に関する話などを紹介。
といったところで、16時30分過ぎプログラム全てが終了しました。
次回は7月4日に映像上映とシンポジウムの形で「奥三河のシカウチ神事」を紹介するそうです。
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2015/4/29 12:10(JST)
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