【注意】本記事はネタバレ要素が多分に含まれています
22日にアカデミー作品賞受賞で話題のパラサイトの映画を見てきました。
特にチェックをしていたとか楽しみにしていたというわけでもなく、非英語作品のアカデミー賞受賞で話題という評判なので・・というミーハーなところと、弟が映画好きなので家族で一緒に見に行ってきました。
(画像は公式サイトから)
朝鮮半島情勢が緊迫していた時代の名残でもある防空壕を転用した半地下にある住居に住む一家が主人公。それがひょんなことから豪邸に住むセレブな社長一家の家の仕事を引き受けることに。
家族全員で上手く豪邸に住む社長一家の取り入ったと思えば、実はそもそも豪邸には、社長一家の知らない地下に住む夫婦という本当の？パラサイトがいた。というストーリー。
この一家、失業中で内職で食いつないでいたとはいえ、家庭教師や運転手・家政婦の業務をぶっつけ本番でこなしているところからも、ダメ人間一家ではなく実は能力はかなり高いものの、社会構造や運の悪さで不遇の環境に置かれているだけという印象。対比して語られる日本映画の「万引き家族」の一家が「The 庶民」という雰囲気だったのは対照的です。
また計略で追い出した前任の運転手の再就職を心配したり、自分達を破滅させようとした「地下室の夫婦」とは話し合う必要があると共存を考え食べ物を差し入れようとしたり、悪人というわけでもなさそうなところもまた、哀愁を感じます。
一方でセレブのIT社長のドンイク社長も、部下たちと額と突き合わせて製品について議論するなど、実力と運でのし上がり新興IT企業を築いて成功したものの、自ら現場で立ち回るシーンは成功が約束されているような財閥系企業の社長とは一線を画しているように見えます。
ドンイク社長は運転手の父ギテクの匂いをしきり気にして、「匂いが一線を超えている」と表現したものの、この一家の匂い、幼少のダソンが「同じ匂いがする」と気づいた以外、恐らくは普通の人は気が付かない程度の微かなものだったと思います。
実はドンイク社長が成功を収める前、若き日々に一家のように半地下で暮らしていた体験あったのではないか。だからこそ独特の匂いに気が付いたのではないでしょうか。
匂いを「耐えがたい」と言ったのは自身を卑下し思い出したくない、きっと妻や子供に知られたくない日々の記憶を呼び起こしてしまうからではないか。
クライマックスのパーティーシーンで、地下の男が凶行に及ぶシーンで、父ギテクは半ば衝動的にドンイク社長を刺します。
子供達が凶行に倒れたショック。そして地下室の男への同情。そして恐らくはドンイク社長にも若き日々に不遇だった時代があることに既に気がついていた。財閥の御曹司のような雲の上の存在ではなく、自分達と近い境遇から成功したからこその怨嗟で刺してしまったのではないか？？
衝動的に社長を刺しさえしなければ、事件後に正体がばれても、経歴を偽装して計略で前任者を追い出したとはいえ、一家は家庭教師や運転手、家政婦の仕事を卒なくこなし子供達からも慕われていたこと、凶行から一家や参加者を身を挺して守った功労者として評価されてそう悪いことにはならなかったであろうと思うと、救いのなさにやるせない思いもまた感じます。
タイトルになっている「パラサイト(寄生虫)」は、一見すると半地下の家に住んでいた家族のことを指しているのかと思いきや、実は地下室の夫婦や新たに地下室の住人となる父がパラサイト。有名建築家の建てた豪邸こそが宿主であり、セレブ一家は宿主ではなく単なる一時の居住者に過ぎなかったというというオチですね。
私は韓国について通り一遍で聞きかじっている程度ですが、韓国の社会情勢、例えば韓国の財閥支配や格差問題や高い失業率(劇中でも「警備員1人の求人に大卒が殺到する」というセリフで表現)、東京をはるかに超えるソウル一極集中と過密化などについて予備知識として知っているとより一層理解が深まるのかなと思いました。
この映画のような生活感がよく表現されている海外映画やドラマは、その国の人達の日常生活が垣間見れるのもまた興味深いです。「台湾カステラ」というのは日本で言うところのタピオカのようなある時に爆発的にヒットしたものなのかな？と思ったり・・
今回字幕版で鑑賞しましたが「no plan」のような英語の語彙の使い方、発音の日本との違いなども興味深いです。私は韓国語を勉強したことはないものの、多少聞き取れる部分があったりなのも楽しいですね。他にも韓国映画を借りて見てみようかなと思いました。
2020/2/23 19:58(JST)
