亡きひと亡き犬亡き小鳥たち 2017-03-31 19:30:38 | 日記 桜咲くころ感情は静かならず亡きひと亡き犬亡き小鳥たち 馬場あき子 『記憶の森の時間』 春に出会い死に別れた人のことを、桜の花は思い起こさせる。 死者は、可愛がっていた犬や小鳥たちも引き連れて、 やがておおきな塊のようになって、わたしの前にたち現れる。
真昼の星 2017-03-30 21:01:15 | 日記 ひるもなほ 星みるひとの眼にも似る さびしきつかれ早春のたび 宮沢賢治 太陽の光に遮られて、ほんとうならば、 人の目に届かないはずの「真昼の星」を 青空の中に見てしまうひと。 きっと、当てのない旅を続けるような、 さびしいひとなのだろう。
つぶつぶに 2017-03-29 21:08:15 | 日記 つぶらかにわが眼を張ればつぶつぶに光こまかき朝櫻かも 岡本かの子『浴身』 桜の歌を百首詠むために、岡本かの子は毎日桜を見つめ続け、 ついには気分が悪くなったのだそうです。 「つぶつぶに」光る桜の花びらは、決して美しいだけではなく、 不気味な異物のように見えていたのかもしれません。
輝を垂る 2017-03-28 18:12:42 | 日記 夕光(ゆふかげ)のなかにまぶしく花みちてしだれ桜は輝(かがやき)を垂る 佐藤佐太郎 桜じしんが輝きを静かに放っているようなこの歌を、 作者自身がたいそう気に入っていたところ、 発表後しばらくして、李太白の漢詩のなかに、 輝(き)を垂れて、千春に映ず の句があることに気づき、 「ほとんど息のとまる思いがした」 と記しています。 千年の時を隔てて、花の光が「同期」したようです。
水なき空に 2017-03-27 20:47:54 | 日記 さくら花散りぬる風のなごりには水なき空に浪ぞたちける 紀貫之 桜の花びらの風に吹かれる様子を、「浪がたつ」と詠う、 のびゆくような自由な魂。 桜を愛した貫之の邸宅の前庭には多くの桜が植えられており、 「桜町」と称されたという。