とうにクリスマスを過ぎて

クリスマスがもう終わった〜っと思った瞬間に思いついたタイトルです。
他意はありません。年末にはタイトル変更か?

万葉の天の川

2017-06-30 21:23:03 | 日記
寝静まる里のともしび皆消えて天の川白し竹藪の上に

正岡子規

貫之は下手な歌よみにて『古今集』はくだらぬ集に有之候と言い放った子規。
中世の歌を否定して求めたものは、万葉集の素朴な写生であった。

万葉集には次のような歌がある。

天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
柿本人麻呂

天の海に浮かぶ雲は、白波が立つよう。月の船が渡って、星の林に隠れてゆく。
まるで古墳の壁画にも現れそうな景色だ。

ピル解禁の凍結

2017-06-29 19:09:06 | 日記
松村由利子さんが、毎日新聞の生活家庭部という、主に家庭面の記事を書く部署に所属していたとき、一度だけ大きなネタに遭遇したことがあったのだそうです。
1990年に承認申請されていたピルが、1992年に解禁「凍結」ということになりそうだ、という内容です。
ピル承認によってコンドームが使われなくなると、エイズが蔓延するというのが中央薬事審議会の解禁凍結の理由だったそうです。これをデスクに報告したところ、承認ならニュースになるが、凍結ではダメだと一蹴され悔しい思いをしたと書いておられます。(詳細は『31文字のなかの科学』)
この数日後、読売新聞が一面トップでピル解禁の凍結を報じ、松村さんの特ダネは幻となりました。
それから7年後、承認申請から9年経った1999年になって、ようやくピルが承認されたとき次のような歌が詠まれました。

山鳥の尾のしだり尾のながながし時たちにけりピル承認に
大滝和子『人類のヴァイオリン』

「この歌に出会ったときは、異国で同郷人に会ったような喜びを感じた」と村松さんは述懐しています。
また、前書のなかでこうも書かれています。
「バイアグラが承認申請からたった5カ月という早さで、ピルに先立って99年1月に承認されたのは、全く皮肉な出来事だった。どう見ても、薬事行政が女性よりも男性のことを優先したような印象をぬぐえなかった」と。

葡萄のかげに月かたぶきぬ

2017-06-28 22:59:12 | 日記
幼きは幼きどちのものがたり葡萄のかげに月かたぶきぬ

佐佐木信綱『思草』

幼い者は、幼い者同士で夢中になって何かを話している。そこは葡萄棚の下であり、いつしかその葡萄のかげには月がかたむいた、というのである。幻想的と言ってもいいだろうが、どこか西洋風の童画といった趣である。話しこんでいる子どもたちは、あるいは衣服をつけていない西洋絵画の天使のような雰囲気さえ持っていようか。
(『近代秀歌』永田和宏著より)

あぢさゐの花の迷路

2017-06-26 21:33:03 | 日記
あぢさゐの花の迷路に分け入りて母をさがしてゐる青い虫

馬場あき子『記憶の森の時間』

青い虫が頭を左右に振っている様子が、母を探しているように見えたのでしょう。
入り組んだ花弁を迷路に見立てて、ゆっくりと歩むさまを愛おしく見つめています。
そこだけが童話の世界に入り込んだような、可愛らしい歌。

ゆらりと高し

2017-06-25 11:47:42 | 日記
向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ

前田夕暮『生くる日に』

花の大きさと高さが「ゆらりと」の句でイメージされ、
太陽の小ささをいうことで、前景の向日葵の大きさが強調される。
「金の油」という表現がゴッホの絵と対比されることの多い歌だが、
この時期ゴッホの絵の様子が、正確に伝わっていたかどうかは、
疑問だという。
何気ない景色の描写ではあるけれども、「生くる日」の瞬間は
取り換えのきかない、まさに「そのとき」として立ち現れる。