セントバーナードのキングスウッヅ犬舎雑感

犬種の正しいタイプを求めて46年
世界に通用するセントバーナードの作出と啓蒙

交配と繁殖そして当事者の倫理観

2016年11月24日 20時57分22秒 | 繁殖の手引き

先日は、関東各地でも初雪を見たと報道されており関東では、山梨県甲府地方が一番降雪が 早かったようだ。
当地札幌南郊外の丘陵地帯は、晴れて気温が最低気温を記録した。当然ながら真冬に向かうと気温は、連日最低気温という言葉が飛び交うことだろ。
☚(当犬舎東側遊び場を北方向から南方向の写真)

私のセントバーナード飼育歴も来年で48年を迎えようとしている。
当時の諸先輩方は、亡くなったかセントバーナード飼育を止めている方々が殆んどである。
1週間ほど前、当時の犬仲間で和歌山セントバーナードクラブの代表でもあり後にブロック会長をも務めた和歌山県白浜の今井寿之さんから電話がかかってきた。
「外﨑さんまだ頑張ってるん
だなー。ところで何歳になったんだ?」
と聞くので
「未だ23歳だよ。今井さんは?」
「俺は、34歳だよ。まだ元気で車に乗って全国を行脚して余生を楽しんでるよ。でもあの頃は、本当に楽しかったな。純アメリカ産(スイスタイプ)のセントバーナードを飼育していた外﨑さんの派閥と準イギリス系統(イギリスタイプ)の派閥とでセントバーナード論を口角泡を飛ばしながら議論を交わし最後は、喧嘩になったりもしたな~。そして展覧会場で両派が入り乱れて喧嘩したり、いい加減な審査をした審査員に大会終了後ぶん殴ったり、審査員に文句を言ってる出陳者が履いていた下駄で審査員を殴打したりで皆真剣だったんだよね。今は、如何だね?」
「今はセントバーナードは、出陳しても1頭1席でグループ戦に出て他犬種とガチンコ勝負でポイントをかせぐしかなく、我が家の犬は、この方法でしかポイントを稼ぐぐらいしかないのだけど昔のように簡単では、ないですよ。」
「でも時々外崎さんところ以外のチャンピオン登録の広報がガゼットに出てるじゃないか?」
「あ~あれはね昔千葉の連中がやっていた当て馬の3頭だしでポイントを稼いでいくというやり方だから業者の連中がタイトル犬の仔犬の方が高値で売れるという商売上の必要性からやっているだけで真面目な愛好家は、無駄なタイトル狙いは、しないですよ。」
「何だ!未だそんな八百長臭いことでやってる人いるの?」
「ごく一部の人たちだけだけどね。面白いことに女性までその方式でチャンピオンにしようとする素人がいるのだからびっくり。犬のレベルも愛好家のモラルも低くなるしね。」
「いつの時代にも金儲けで犬を飼育する素人さんがはびこると犬質は、下がるし素人同士のいがみ合いも増えてくるからね。困ったもんだな。」
と昔話を1時間ほど話し旧交を温めた。

この友人が、1982年に日本セントバーナード界で最初に1回の交配で交配料金30万円の大台を付けた張本人である。
☚ Am/Can/Jpn.Ch. Cunos Claus V Cusmar
'81SBCA National Specialty B.O.B
(
写真に見えるイケメン日本人は、私です。若かったですね。)

当犬舎のアメリカチャンピオン,JKCチャンピオン、カナダチャンピオンのタイトル保持犬でアメリカのナショナル展優勝(BOB)という日本犬界初の偉業とその輝かしい成績を持っている犬は。日本では、最初にして最後の犬なので私は、当時のJKCチャンピオン犬の交配料の20万円が最高価格であったので私もそれに合わせ交配の問い合わせには、20万円と回答していた。
ところがこの友人は、交配料には、基準がないのだから外﨑さんに20円入れるから後は値付けは俺にまかしてくれと言って大阪の大金持ちが所有するという雌犬を連れてやってきた。この犬のオーナーとは、30万円の交配料で約束してきたから10万円は、俺に呉れよというものだった。その代わり妊娠しなかったとしても再交配は、なしということも伝えてあるということだった。交配は、無事終了したが妊娠には至らなかったと聞いている。

交配および交配料には、人それぞれに考え方の違いがあって当然であるが高額交配料になると業借間では、当事者間でのトラブルは、業者間のモラルとか商慣習でこじれることなく解決できるが一番質の悪いのは、初心者同士の自称「アマチュア」と称する者同士の争いである。素人初心者同士であるなら事前にしっかり条件とかその後の対応を決めてかからなければならないのに素人のナアナアで済ませ結果がうまくいかなくなってから聞いてない。知らない。とお互いが言い争う始末である。初心者同士間でしっかりした決め事がないのであればその道の先輩たちが築いてきた慣習やルールに解決策を求めるべきであろう。
交配というのは、法的にどんな位置づけになるのであろうか?
理解の仕方は、三つほど考えられる。
①準委任契約
雄犬所有者が依頼された牝犬に自分で生交配(人間でいう風俗の世界で使う言葉「本番」)をして目的を達成する場合。結果的に妊娠に至らなくても契約違反にならない。生交配が終了すれば作業料と材料代(雄犬の射精した精液)が請求できる。。医者の診察代と注射や薬代の請求と同じ法律構成である。委任契約は請負契約と異なり結果を出す必要はない。交配適期かどうかはあくまでも雌犬側の責任である。

②売買契約
牡犬の射精した精液の売買であるとする考え方。この考え方で行くと解りやすいのが人工授精である。あれは、精液を牝犬の膣部から器具を挿入して精液を注入する方法なのでそれは、種牡所有者がするのではなく獣医が法律上はすべきものなのでものすごく解りやすい売買である。
精液を物の売買として考えるのであるから当然民法上の瑕疵担保責任が委任契約説よりより重く課せられると思う。なので種牡の遺伝子に問題があり実害が出るのを未必的にでも認識して精液を売買したのなら損害賠償の問題も起こりうると思う。
この考え方から言うと何年か前に種牡オーナーに黙って種牡を交配に使ってしまった事件があったが、あれは完全な「精液ドロボー」「窃盗罪」ということになる。
(人間にも精液ドロボーって有り得るのかな???と又くだらない事を考え始めた。)


③請負契約
とする考え方も想定できるが
つまり交配適期と思われるメスを連れてこられ種牡と交配をすることで外観は、①や②と変わらないが必ず妊娠させなくてはならないというリスクが伴う。そのためには種牡所有者は、雌犬の交配適期を自分で確認し間違いなく妊娠させられる日を確認して交配しないと不妊娠だと債務不履行で訴えられても法律上はおかしくない。請負契約というのは仕事の完全完成を目的とした契約であるからである。解りやすく言うと建築屋が住居建築を依頼されて人が完成後そこで日常生活が普通にできる状態にして引き渡す法的義務があるので屋根だけつけてあとは知りませんという訳にいかないのと同じである。
この考え方に近い損害賠償の請求が問題となった例もある。
全くの素人さんが自分の犬の子供の姿を見たいとのことで種牡所有者宅に行ったところまだ時期的に早いので種牡所有者が交配適期になる日まで預かり交配してお返ししましょう。と言って数日預かり交配したが子どもはできていなかった。交配料と牝犬の預かり料でかなりの金額を取られた上に不妊娠だったので雌犬所有者が妊娠させるのを請け負って預かったのだから不妊娠は、お前の側に責任がある。という理由であった。結果は、聞いていないが種牡所有者の責任は、明確だと思う。
しかし、一般的にこの考え方は、種牡所有者には、支持されないであろう。

私も交配料を巡っては、嫌な経験をしたことがある。
今年3月末に私が世話をして前所有者の高齢による飼育困難な状況からある訓練士に仔犬2頭返しの条件で譲渡し種牡も当犬舎の”パウル”を交配するという前所有者と約束をの上訓練士も大喜びで友人宅に雌犬を引き取りに行った。
予定通りその雌に発情が来て何日頃交配に行きますと連絡があった。交配を依頼したりされたりする時は、交配金額、支払時期、妊娠しなかったときの対応は、事前に確認し合意しなければならない事は当然なので事なのでと訓練士は、交配料の金額を問い合わせてきた。
「現金交配しかしませんから交配時に15万円持ってきてください。」
と伝えると解りましたと快い返事であった。
しかし
交配予定当日
「外﨑さん交配料高くないかい?」
「どうして?」
「他所で聞いたり調べたりしたんだが何処も半値ぐらいなんだけど。」
「チャンピオンタイトルを持っているから良い犬だとは、私は、言わないが、パウルは、数度交配してすべて仔犬を妊娠し、生まれた仔犬の犬質も保証できる種牡ですよ。仔犬の中にはパピ―キングを獲得したりFCIインターナショナルでグループ2席に入った牝もいるんですよ。パウル自身も見ず知らずの犬たちとガチンコ勝負でチャンピオンになり、リザーブキングをも獲得した雄犬は、ここ数年では、JKCチャンピオンでは、このパウルだけですよ。」
「そうですか・・交配料来月では、駄目ですか?」
「来月何時頃?」
「来月末までに」
☚ パピーキングに輝いたバース。
杉井星美(小田原市)所有8か月時
ハンドラー:福岡健治郎(横浜市)

「その頃には、妊娠しているかどうか解る頃だろう。妊娠していなければ払わないと言うのじゃないのか?」私は、内心交配詐欺師の使う手口と読んでいた。遠方の牝犬の場合妊娠しているか出産したか種牡所有者には、解らない。妊娠して出産していても、悪意の雌犬の方から「妊娠していませんでした。」と言われればそれまでである。勿論交配料をもらっていないので交配証明書など出せるわけがない。産まれた仔犬は、ペーパーなしで売るか他所のオスの交配証明書を偽造して作成するかしかない。
私は、たとえ交配料を現金で頂いても仔犬の頭数と内訳を確認しない限りあまり交流のない方との交付は、交配終了時渡さず、出産後にしか交配証明書を交付しない。
私は、このような交配詐欺を2例ほど聞いている。
会話を続けよう。
「では、あなたを信用して交配料は来月ということにして交配手間賃として5万円用意してください。これは、交配料の支払いのときに差し引きしますから。」」
「そのお金もないです。」
「じゃー前所有者との約束は、どうするんだ?他所の犬とかけるという訳にはいかないぞ。」
「・・・・・あの犬(パウル)には交配料15万円の価値の犬ではない。」と捨て台詞を言って電話を切った。

結局前所有者は、犬を引揚当犬舎でしばらく預かることとしたが交配をしたが時すでに遅しであった。
交配料は、現金即払いというのは、犬社会では、当たり前のことであり牡犬の精子の売買である。犬にしても牛馬にしても冷凍精子は、全て金銭による売買の対象である。生交配(人間でいう本番)や、その場での人工授精は、生ものの売買であり手間代もかかるのである。生交配(本番)や、人工授精に掛け売りなどという習慣も言葉も、当てはまる犬社会などない。。
妊娠しなかったから払わないという屁理屈を言う輩の商業感覚というか商業道徳を繁殖者の多くは、許すはずがない。
種牡犬所有者は、毅然たる姿勢を示し交配料がないのならはっきり断らないと後でという甘ったれた同情は悪癖しか残らず犬交配のモラルの荒廃にしかならない。

もっと厳しい言葉を使うならセントバーナードのような大型犬の仔犬を繁殖させるつもりなら、それなりの設備環境、経済的環境、智的環境が揃わない限りしないほうが良い。
猫や雑種の犬が物置の小屋で出産するのとは、全く異なるのである。

交配のときから出産までの間に大きなお金がかかるのである。
嘘か真かわからないが仔犬が産まれる前に手付けとか予約金を請求する繁殖者もいるようだということを聞いた。しかもその金は交配(人工授精を含む。)にかかる費用の一部に充てるということだ。

噂どうりであるなら何と、さもしい繁殖者ではないか。
仔犬が生まれるかどうか、無事仔犬が育ち新所有者の手に渡せるか如何かは、神仏ぞのみ知る。である筈だ。
生体の出産前の金銭の享受は、犬社会でも一般市民社会でもあっては、ならないことだと思う。

☚(当犬舎所有犬
Am.チャンピオンrevilo's quaker Jack (18か月時)

最後に
種牡として世間に「私の種牡です。交配料は現金で00円です。」と犬仲間に所有者が豪語するなら少なくても
①仔犬作出の証明ができること
②生交配(本番)で交配できる気力と能力があること(縦んば人口授精するとしても)
直系親族に悪性遺伝子と疑われる発症例がないこと
④犬種標準書に規定されている標準から大きく欠点、欠格事項が徴表されていないこと
  
等でこれは、業者間であろうが愛好家間であろうが種牡としての最低基準だと私は考えている。
種牡については、こういう格言がある。
これは、世界最大のセントバーナードクラブ組織FCI傘下のワールドユニオンオブセントバーナードクラブの会長ウルフ会長が
「良い種牡とは、その犬の賞歴とか輝かしいタイトルでなくどれだけ良い仔犬を作出できたかで判断すべきである。」と述べておられ、先進国の繁殖指導者は、この格言を高く評価して種牡の適否の判断材料としている。

以下「繁殖そして当事者の倫理観」は、次回に続く


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