2010-11-06 23:03 投稿記事
4,5年前ある方のウェブサイト(現在は、見当たらず。)を見ていたらこんなクイズがあった。
>アルプスの少女ハイジ物語に出てくるセントバーナード“ヨーゼフ”はロングヘアーでしょうかショートヘアーでしょうか?
というクイズであった。
写真は、Tail Winds →Tiger Mask ↓Zalma
お恥ずかしい話だが私は、この物語の本を読んだこともなければテレヴィで放映されたアニメも見たこともなかった。
ただイラストでハイジなる少女とセントバーナード犬が一緒に描かれているものを見ているのでスイスのアルプスを背景にした児童物語だな程度の認識しかなかった。
そこでこの「アアルプスの少女ハイジ」が何故こんなに日本では人気があるのかを調べてみた。
と言うのは、アメリカの友人たちの間では話題にもなった事がなかったしセントバーナードがその物語に出ているという認識が殆どないからである。
アメリカでは、セントバーナードが出てくる物語では「バリー物語」しか児童向けに出版されているものはない。
この物語の原作は、1880年と1881にかけて発行され原作者ヨハンナ・ホーセル・スピリ(1827年~1901年)と言われている。(*筆者注;ドイツの文学研究者がドイツ人詩人・作家のヘルマン・アダム・フォン・カンプが1830年に発表した「アルプスの少女アデレード」と題する作品を偶然見つけ作品の筋書きや描写もスピリの原作小説と酷似しており、スピリが、この作品を下敷きにした可能性が高いという。という事も言われている。)
原作が日本に最初に翻訳されて紹介されたのは、翻訳者野上彌生子の「ハイヂ」という題名で 出版社「家庭読物刊行会」 (460頁世界少年文学名作集 第8巻)として1920年(大正9年)2月15日に発刊された。 (
(←写真は初刊本)
その後1974年にフジテレヴィにてアニメ化され放映されるまで十数人の方々が翻訳本を出版しているが登場する動物の中の一つである犬についてセントバーナードと犬種を特定している翻訳本はない。それよりも登場する動物の中では、“ユキ”というヤギはハイジとの友好関係を紹介しているようであるが犬については、余り重要な脇役としては登場しておらず崖から落ちた時のクッション替わりにして助かった事がストーリーの話題になったことぐらいである。
この犬「ヨーゼフ」は、ハイジの父方の祖「父オンジ」じいさんの所有犬で犬種は、セントバーナードでなく当時(1880年ころ)の土着犬の雑種だと思われる。
1974年にフジテレヴィで放映される前に脚本を制作された方々が何人かで現地入りしてロケハン(ロケイションハウンチング)をしてアニメを制作した折スイスと言えばセントバーナードが直ぐ頭の中に描き出されその雑種ヨーゼフがセントバーナード犬になったということだ。
原作者がこの本を書いた頃には、すでにスイスでは、セントバーナードという犬種は確立しており名前もほぼスイス国犬7犬種の一つ「セントバーナード犬」として一般的であったがその犬種名を使用せず「赤犬」として文中に表現しているのは、この物語に出てくる犬「ヨーゼフ」がセントバーナードでないと考える理由の一つでもある。
しかし、作者スピリが1830年に発刊されたヘルマン・アダム・フォン・カンプが「アルプスの少女アデレード」を盗作した或いは下敷にしたと言う事であれば、発表された1830年頃にはセントバーナードという犬種名はなく「バリー犬」「農耕犬」「谷間の犬」「セントバーナード峠の犬」「聖なる犬」と色々な呼び方がなされており色も赤地が多かったのでヨーゼフがセントバーナードでないと完全否定はできない。
(写真は夕暮れ時の愛犬たち)
ただロングヘアーのセントバーナードは1833年以降でないとセントバーナード寺院ではニュウファンドランドとの雑種交配は行っていないのでロングヘアー
のセントバーナードがヨーゼフであるとは言えなくなる。
雑種交配で生まれてきたセントバーナードは、大きくなり寺院の周りの見回りや吹雪の中の遭難者の救助には、長毛に雪が積もり体温で溶けそれが毛先で氷の珠となりまるで氷の珠の重いオーバーコートを着用しているようになって雪中での救助活動や見回りには動作が
緩慢となり雪中行動には不向きと判断されロングヘアーのセントバーナードは全て麓の村々に譲渡されたという歴史がある。
しかし、この事がセントバーナードを世界的に有名にしたきっかけともなった。
イギリスの動物商がイングリッシュマスチーフの大きさを改良しようとするマスチーフの愛好家から「セントバーナード寺院の犬」を輸入する事を依頼され度々麓の村々を訪れていた所にロングヘアーの犬に遭遇しイギリスに連れ帰った。その可愛さと大きさに爆発的な人気を呼び1860年代には、スイスから輸入されたセントバーナードは殆どロングヘアーの犬となった。そして犬種の名前も「セントバーナード」と呼ばれ本国のスイスより早く犬種名がセントバーナードと称されるようになった。
1878年イギリスでは、セントバーナードクラブが公認され世界で最も古いセントバーナードクラブとして世界のセントバーナード界を指導した。
もし、スピルが「アルプスの少女ハイジ」の原作者であるとしたらこの物語が執筆されている頃には、セントバーナード犬種名は、スイスでも日常化していたのでヨーゼフをセントバーナード犬として紹介していたと思う。
又、1974年に放映されたアニメは、製作スタッフ自身ヨーゼフの犬種は原作から不明だったので雑種として登場させるわけにもいかずセントバーナードをヨーゼフとして登場させたものと思う。
アニメに出てくるヨーゼフは、ロングヘアーかショートヘアーかと問い掛けるのならロングヘアーという回答になるが
原作のヨーゼフは、というとセントバーナードでないので解らないと言う所が正解だと思う。