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魔界に棲む鳥

2013-07-16 23:13:20 | 鳥(Birds)


ミドリカラスモドキ(Aplonis panayensis strigata) Asian Glossy Starling


最終日の朝。昨日のうちにダナンからラハダトゥ、コタキナバルへと戻ってきていた私はコタキナバルで1泊した。そして今日の昼にはもう日本へ向けての飛行機に乗らなくてはならない。僅かな朝の時間はやはりタンジュン・アル・ビーチ公園で過ごすことにした。
せっかくの朝の時間帯のフィールドだというのに、丁度夜明けぐらいから強い雨が降り出した。気合を入れて暗いうちから公園に到着していた私は、雨のため誰一人散歩にも来ない公園の東屋の下で頬杖をついて雨上がりを待つ羽目になった。

8時ぐらいになり、やっと雨が上がると、食事をしようとウズウズしていた鳥達が一斉に活動を始めた。
まさに私も、この時を待っていたのだ。
メタリックな緑色の光沢を帯びた黒い体に赤い虹彩、悪の手先のようなショッキングな見た目のミドリカラスモドキ達は、落下したアブラヤシの実を奪い合うようにしてついばんでいた。
そんなミドリカラスモドキだが、よく観察していると行動パターンはムクドリそのもので、段々と愛着が湧いて来るもの。幼鳥は下面が縞々で中々綺麗でもある。











【Kota Kinabaru, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/4th Jan, 2013】


ダナンの庭の鳥と花

2013-07-15 21:21:57 | 鳥(Birds)


シラガシキチョウ(Copsychus stricklandii stricklandii) White-Crowned Shama


ダナンバレーを発つ日の朝。今日も朝から雨降りである。
この朝はロッジ勤務のスタッフ達の居住区を歩いて林縁の鳥を探すことにした。
エンビシキチョウ、ルリノドハチクイ、コゲチャキンパラ、そして夜の間虫が集まっていた外灯の下でムナフムシクイチメドリを見た後、ロッジへ引き返した。
声真似の上手いシラガシキチョウには何度も騙されたけれど、音節の終わりの部分の乱れや声質から、もうすぐにコイツだとわかるようになった。今日も大きな声で鳴いている。

ロッジの川側にはちょっとした広場があって、草原がある。ピッシングをしながら歩くと、コゲチャキンパラ、メグロヒヨドリ、アオハウチワドリが様子を伺いに草から出てきた。




ムナオビオウギビタキ(Rhipidura javanica longicauda) Pied Fantail


オウギビタキの仲間は皆その動きが可愛らしい。名前の通り長い尾羽を扇のように広げてゆっくりフリックするのがくせで、おかげで実際の大きさよりも大きく見える。

ボルネオクモカリドリがシンポーウングの花に来たのを見ていると、ロッジのエントランスのあたりから「ヒュー、ニュー」という独特な声がしたのが聞こえた。
血相を変えた私が走っていくと、そのあたりにたむろしていたガイド達に「これは人が声真似しているんじゃないかな」と言われた。重ねて、「こんな場所にアイツが来たことなんてないよ」と。
それでも諦めきれない私は、樹冠に双眼鏡を向けて探し続ける。
「ヒュー、ニュー!ヒュー、ニュー!」鳴き声がやがて確かな臨場感を持って、それが人の声真似ではないことが皆分かるほどになった頃、私の双眼鏡の視界に頭部の赤い、ずんぐりした鳥が飛び込んできた。そう、ボルネオ固有種の鳥、ブタゲモズだ。
複数羽のブタゲモズは独特の鳴き声とともに私達の頭上の樹冠をあっというまに通過していった。
辺りに居たガイド達とハイタッチをしていると、今度は数羽のガマヒロハシが通りかかる。なんて楽しい森なんだ。





今回、1人でこのダナンを訪れた私だが、レストランで食事をしていると皆「Koh, 今日の成果はどうだった?」とか「一緒に食事しないかい?」とか声をかけてきてくれて、ぼっちな気分はすぐに紛れた。

ロッジを発つ時。中でも特に仲良くなったスウェーデン人のフォトグラファーに別れの挨拶をした私は、ラハダトゥ空港まで送ってくれるジープへと乗り込んだ。
この1週間の濃い鳥見を思い出しているうちにいつの間にか眠っていた私は、「オランウータンがいたよ」と運転手に起こされる。実は初見のオランウータンをしばし見た後、また車に乗り込む私。車が発進して、未だ眠気を振りほどけないまま半分開いた目を路肩に向けていた私は、次の瞬間、突然大声で叫んだ。「Fooded Pitta!!」 なんと走行する車の目の前、肉眼でも分かるほどの近さをズグロヤイロチョウが飛んで横切ったのだ。今まで眠そうにしていた私がいきなり騒ぎ出したので運転手や同乗者をさぞ驚かせてしまったことだろう。しかし最後の最後にズグロヤイロチョウが見られるなんて...一番驚いていたのは私だった。




シンポーウング(Dillenia excelsa





ツノマタタケ(Guepinia spathularia







【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/3rd Jan. 2013】


Afternoon Birding

2013-07-11 23:20:35 | 鳥(Birds)


コシラヒゲカンムリアマツバメ(Hemiprocne comata comata) Whiskered Treeswift



昼になり、ロッジに戻って食事をする。毎日雨ばかり降っているとはいえ、赤道直下の日中は結構な気温と湿度で、食欲が減退してしまうことすらある。
このロッジは毎食バイキング形式なので好きなものを好きなだけ頂くことが出来るのだけれど、この日は大好きなラムが出てきたのにも関わらず、私は皿に控えめに盛りつけたそれを食べきったところでフォークが止まってしまった。
そんな時には、フルーツを食べるに限る。いくら食欲がなくても果物だけは別腹なのだ。
結局この昼私はおよそ28個のマンゴスチンをたいらげ、皿にマンガ盛りになった殻を残して満足気に立ち去った。
すれ違ったウェイターに「いや驚いた。君はよっぽどマンゴスチンが好きなんだな」と言われた。「まあね、美味しかったよ。」そう眠そうにこたえた私は、自分の部屋に戻って昼寝と洒落込んだ。

昼寝から目覚めた後は、歩いて午後の鳥見へ繰り出す。
珍しく昼間にロッジ周辺をうろつくマレーウオミミズクを数年前のスカウで見た以来久しぶりに見たり、ゴーグルをつけているみたいなミドリヒメコノハドリを見ていると、また辺りが雨雲で暗くなり、そしてやはり雨が降り出した。

この時は雨雲の様子を伺い空を見た時に高木の梢にとまっていたズグロサイチョウ、ロッジへと戻る暗い林内で見たバラエリキヌバネドリが初見となった。






【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/2nd Jan, 2013】


白翼の妖精は軽やかに唄う

2013-06-18 23:02:08 | 鳥(Birds)


カワリサンコウチョウ(Terpsiphone paradisi borneensis) Asian Paradise-flycatcher/Male white morph


ボルネオ5日目。
この日はジープで保護区の入り口まで行き、そこから徒歩でロッジまで戻るというコース。
今日も朝からあいにくの雨で、降ったり、止んだりの繰り返し。しかし悪天だからといって部屋でぼんやりしている私ではない。
このジャングルで鳥見をする中で、雨天時でも時々雨が止むような状況ならば、晴天時よりも少ないが鳥は出現することがわかった。鳥達も餌をとらなければお腹をすかせてしまう。彼らは雨の止むほんの少しのタイミングを狙って採餌やさえずりを行うのだ。
さて、歩き始めて朝一番に姿を現したのは胸からの下面がラズベリー色をしたアカエリキヌバネドリの雄。結構な図体の鳥がメインロードを2羽で飛んで横切りブッシュに入ったのを見つけたので、片方は雌だったかもしれない。
雄は数分間、茂った木々の奥にとまって動かずに居た。

しばらく歩いて、今度は混群にヒットした。ジャングルでバードウェーブに当たるほど面白いことは無い。
そうこうしているうちに、私はあっという間に鳥の採餌混群に取り囲まれた。
カザリオウチュウ、ズアカチャイロチメドリ、ズグロチャイロチメドリ、マレーミツユビコゲラ、コシアカキヌバネドリ雄若鳥、ムナフオウギビタキなどをものの数分で一気に見た後には、雨のせいでどんよりしていた気持ちも晴れた。
霧が出ているため視界の悪いのは難点だが、おかげで凄く幻想的な熱帯雨林の林道。
高木の上の方に生る木の実には数種類のヒヨドリが来ていて、ズグロヒヨドリ、アカメチャイロヒヨ、エリゲヒヨドリあたりが辛うじて見える。
「霧さえなければあの群れの中からあと3種はみつけたろうに!」と贅沢なことを言っている間にも、ムジサイチョウの群れ、ルリコノハドリ、オオコノハドリ、オオバンケン、ミカドバトが道を横切って飛ぶ。遠くの地面にキンバトの幼鳥と成鳥が2羽で歩いているのを横目に見ながら真上の木でウロウロするチャムネバンケンモドキに気を配り、ビロードゴジュウカラの奇抜さにド肝を抜かれたと思えば、高い木の枝には思いも寄らぬスマートで美形なカンムリアマツバメが複数羽とまっているのを見つけた。極め付けはBGMにセグロカッコウの「ファファファフォ!」というsongとクロアカヤイロチョウのあの独特の囀りを聴きながら歩く。なんて最高な朝だ!

そうこうしているうちに、キャノピーウォークウェイまで戻ってきた。
朝のゴールデンタイムも終わりに差し掛かり、静けさを取り戻しつつある森。
ルリコノハドリやオオコノハドリが見下ろす樹冠を飛ぶのを見ながら歩いていると、どこかで聞き覚えのあるような、無いような声聞こえてきた。
「ヒホイホイホイホイホイホイ, ヒホイホイホイホイホイホイ....」
“月日星の3つの光”の無い、サンコウチョウに似た声だ。リズムもJapaneseよりだいぶ早い。
声のする方向、木々の間から辛うじて見えるその鳥の全身を見た私は、あっと息を飲んだ。
そこにはカワリサンコウチョウの、しかも成鳥の白色型がいて、今まさに囀っているところだったのだ!
囀っているからこそ分かったことだけれど、他のモナーク類同様、口内はメロンクリーム色。
頭部はJapaneseのように見えるが、胸からの上下面は見事なエンジエルホワイト。良く見ると上背や大雨覆に細やかな縦斑が入り、風切の羽縁は黒で、特に初列は静止時には一様に黒色に見える。
まったく、こういう出逢いがあるからジャングルの鳥見はやめられない。



【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/2nd Jan, 2013】


咆哮するRhinoceros

2013-06-17 23:57:11 | 鳥(Birds)


サイチョウ(Buceros rhinoceros borneoensis) Rhinoceros Hornbill


昼頃。止まない雨に少し憂鬱になりながら見晴らしの良いレストランの軒下から川を眺めていると、コウオクイワシやコウハシショウビンが何度か通過するのが見えた。
良く見ると川の上を腰のべったり白いチビハリオアマツバメも数羽、飛び回っている。

雨だからといって活動しないのはもったいないと思い始めた私は、カメラと自分にレインコートを着せて外へと繰り出した。

ロッジを出て歩き始めて間もなくのこと。バサバサと音がして見上げると、5-6羽のムジサイチョウの群れがすぐ近くの木の樹冠から飛び立った。ムジサイチョウは他のサイチョウと違い3羽以上の小群になることが多い。
次によく茂ったブッシュから聞こえてきたのは「チチチチチ!!」とけたたましい声。これはカンムリカケスの声だ。しばらく2羽で鳴き交わした後、ブッシュから出てきたかと思うと私の上空を飛び去って行った。頭にアイスのスプーンを突っ立てたようなとんでもない形態だ。

小雨がいよいよ本降りになろうかという頃には分厚い雨雲が押し寄せて、まだ昼間だというのに辺りはにわかに夕方かと思うほどに薄暗くなってしまった。
そんな時、「グゥォッ.....グゥォッ!」と良く通る太い鳴き声が辺りに響き渡った。
段々近付いてくるその声に、「来る、来る、来る!」とはやし立てる私。
そして間もなく、大きな嘴に立派な角を持つ、2羽のサイチョウが道沿いの木の上に姿を現した!
実はライノセラスはサイチョウ類の中でも一番見たかった種類で、私が今回ダナンのような深い森に来たのはこの鳥を見るためでもあった。



【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/1st Jan, 2013】