木元貴章の建築ブログー
2025年4月、建築業界にとって重要な節目となる建築基準法の改正が施行されます。この改正は、持続可能な都市づくりと防災性の向上を目的としており、高層建築の設計・施工にも少なからぬ影響を与えることが予想されています。
この記事では、改正のポイントと、それが高層建築に与える具体的な影響についてわかりやすく解説します。
改正の背景にある時代のニーズ
今回の法改正は、以下のような社会的背景を踏まえて行われています:
-
気候変動対策・脱炭素社会の実現
-
防災・耐震性能の強化
-
人口減少・都市の再編成
-
木造建築や再生可能資源の推進
これらを踏まえて、建築物の設計に求められる基準もより厳格かつ柔軟に変化してきています。
注目の改正ポイント 〜特に高層建築に関係するもの〜
1. 4号特例の縮小
従来の「4号特例(小規模建築物に対する確認申請の簡略化措置)」が縮小されます。これは主に中低層向けの規定ですが、高層建築の中に複合用途(住宅・商業)や分棟構成を含む場合には影響することもあります。確認申請の精緻化と設計の手間の増加は設計者にとって重要なポイントです。
2. 大規模木造建築物に関する防火規定の見直し
これまで制限されていた中高層の木造建築が、一定の防火・耐火性能を満たすことで実現可能に。CLT(直交集成板)など新素材の登場により、**「木の高層ビル」**が現実味を帯びてきています。
→ 特に都市部では、環境配慮とデザイン性を両立した木造高層建築が今後さらに増える可能性があります。
3. 省エネ基準適合義務の拡大
2025年以降、すべての新築建築物に対して省エネルギー基準の適合が義務化されます。高層ビルでは空調や照明のエネルギー消費が大きいため、設備設計の見直しやBIMによる熱環境シミュレーションの活用がカギになります。
4. 都市計画・用途地域に関する柔軟性の向上
用途変更や敷地統合に対する規制緩和が一部進み、再開発プロジェクトの自由度が増しています。複合用途型の高層建築や、狭小地でのタワー建築なども計画しやすくなってきており、設計の幅が広がるのはポジティブな変化です。
高層建築に求められる「新しい常識」
今回の改正を受けて、高層建築の設計・開発において以下の視点がますます重要になってきます:
-
✅ エネルギー効率と快適性の両立
-
✅ 環境配慮と構造安全性の共存(特に木造)
-
✅ BIM・DXなどのデジタル設計ツールの活用
-
✅ 法改正への柔軟な対応力と設計初期の戦略立案
まとめ:建築の未来をどう描くか
2025年の建築基準法改正は、従来の常識を変える契機になるかもしれません。とくに高層建築においては、ただ高く積み上げる時代から、いかに環境に優しく、都市と共生するかが問われるようになります。
新しい法制度のもとで、建築家・設計者・ディベロッパーがどのようにクリエイティブな答えを出すのか――そこに今後の都市の未来がかかっていると言えるでしょう。
木元貴章
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます