「大人は泣かないと思っていた」2021/4/20
寺地はるな
時田翼32歳、農協勤務。
九州の田舎町で、大酒吞みの父と二人で暮らしている。
趣味は休日の菓子作りだが、父は「男のくせに」といつも不機嫌だ。
そんな翼の日常が、真夜中の庭に現れた"ゆず泥棒"との出会いで動き出し……
(「大人は泣かないと思っていた」)。
恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、
もう一度、自分の足で歩き出す—
色とりどりの涙が織りなす連作短編集。
(文庫本裏表紙より)
☆感想☆
恋愛ものや、家族の物語は、苦手なジャンルなんですが
主人公の翼の性格が、なんとなく私と似ているところがあって(翼は男性ですけど..)
物語に引き込まれていきました。
舞台が九州というのも興味深かったです。
私の両親も九州の出身です。
翼の父と同様、私の父もお酒に強く、毎日晩酌していました。
なんとなく、九州はお酒に強い男性が多いのかな?というイメージがずっとありました。
農協の忘年会や、歓送迎会の席で
女性が男性にお酌をしないと、あとから「あいつは気が利かない」と陰口を叩くやつがいるとのこと。
翼はそれを「お酌警察」と呼んでいて、
将来出世したら「お酌警察」を壊滅して、以後この部署の宴会ではお酌を廃止にするから
農協の仕事はやめないのだそうだ。
お酌!本当に嫌いでした!!
そもそもお酒が飲めない人間にとって、会社の飲み会は拷問のようなものなんです!
お酒が飲めないから、料理ばかりを食べていると、お酌をしろと怒られる(#^ω^)
私はほぼ下戸で、お酒を飲んで気持ちよくなる感覚がわかりません💦
そして、この物語の最後の章
「君のために生まれてきたわけじゃない」が秀逸でした。
(本文より)
遠くを見過ぎて、目の前にあることをないがしろにしないように。
「来年」や「将来」が、あらかじめ設定されていて、
ただそこに向かって駒を進めるようにして生きていければ、楽だろう。
でも違う。予想外のことがかならずおこる。
俺たちはたぶん目の前に現れるものにひとつずつ対処しながら、
一歩踏み出す方向を決めるしかないのだろう。
いちいち悩んだり、まごついたりしながら。
(本文終わり)
☆感想☆
人生は予想外のことがよく起こる。
どうしていいかわからなくなるときがあるけれど
それでも目の前にあることをひとつずつクリアしていけば
いつの間にかゴールにたどり着くかもしれない。
悩んでも、まごついてもいい、一歩踏み出すことが大切ですね..
先のことを考えるより、今目の前にあるものが大切なんではないでしょうか..
ラストは思わず二人を応援したくなるような終わり方で、泣きました😿
ハッピーエンドですね(*´艸`*)