#599: 手紙でも書こう

2014-02-16 | Weblog
週末、まさか2週連続で雪掻きをするはめになるとは夢にも思わなかった。
しかも、我が家の玄関アプローチに隣のアパートの屋根の雪が落ちてきて、除雪のやり直しである。
おかげで、久方ぶりの筋肉痛になりそうだ(笑)。

こんな足元が悪い日でも配達を欠かせない新聞や宅配の人のご苦労には改めて頭が下がる。
また、郵便物は届くまいと思っていたが、ダイレクメールが郵便受けに入っている。
そういえば、郵便配達もどんな天候でも各家庭を回らなければならない仕事だ。

だからというわけでもないが『手紙でも書こう』のハナシである。
ラブレターの歌が続いたので、ついでにラブレター三部作(?)のひとつを紹介しておこうというわけだ。


“I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter”とかなり長ったらしく舌を噛みそうな原題である。
ちなみに、長ったらしい題名のスタンダード曲を思いつくままいくつか挙げてみると、“Rock-A-Bye Your Baby With A Dixie Melody”、“Between The Devil And The Deep Blue Sea”、“Spring Can Really Hang You Up The Most”、“I'm Gonna Lock My Heart And Throw Away The Key”などがあり、どれも一々タイピングするのが面倒くさいので、ついコピーしてしまいたくなるものばかりである(笑)。

1935年に作られた『手紙でも書こう』は、最初に歌ったファッツ・ウォーラーのプレイがあまりにも素晴らしく、強烈なインパクトがあったためか、ウォーラー自身の作と誤解している人が多い。
作詞ジョー・ヤング、作曲フレッド・E・アーラートによるもの。
作詞のヤングの方は“Dinah”(1925)で有名、作曲のアーラートは20年代~40年代にかけて人気のあった人で、代表作に“I'll Get By”(1928)、“Mean To Me”(1929)、“The Moon Was Yellow”(1934)などがある。

ファッツ・ウォーラー(1904‐1943)は愛嬌のある巨体とクリクリ眼(マナコ)、軽妙洒脱なストライド・ピアノと歌で人気者だった。
そのウォーラーのペーソスあふれる弾き語りの名人芸、歴史的歌唱(こちら)は、35年5月、出来たてほやほやの楽譜を渡されたウォーラーが気に入って録音したもので、結果それが同年最大のヒット曲となったそうだ。

この曲、失恋した男(もしくは女)の歌で、情けなくも可笑しいとぼけた歌詞と軽快な曲調のギャップが面白い。
いわば「明るい失恋ソング」、魅力たっぷりの曲だ。

<VERSE>
The mailman passes by and I just wonder why
He never stops to ring my front door bell…

郵便配達が通り越していく なぜ立ち止まって
我が家の玄関のベルを押さないのだろう
最後の「さよなら」から 愛しの君は音信不通
手紙が来なくなって ずっと悩んでいた
時々 君からもらった手紙の愛の言葉のひとつひとつを
思い返して 愛おしくなる
頭の中は君のことでいっぱい 
もう一度 立ち直ろうと 頑張っていること
君は全く知らないだろうね…

<CHORUS>
I'm gonna sit right down and write nyself a letter
And make believe it came from you
I'm gonna write words, oh, so sweet
They're gonna knock me off my feet
A lot of kisses on the bottom…

それなら 腰かけて自分宛の手紙でも書いてみよう
君から届いた手紙のつもりになって
飛び上がっちゃうほど甘い言葉で綴るのさ
最後の行には たくさんキスマークをつけて
もらったら大喜びさ 笑顔になって「ご機嫌いかが」なんて言って
手紙の最後に「愛をこめて」と書くつもり 君がするように
ここに座って自分宛に手紙を書こう
君から届いた手紙だというつもりになって…

ちなみに、ポール・マッカートニー初のスタンダード曲集『Kisses On The Bottom』(2012)は「お尻にキッス」という意味かと思ったのだが、この『手紙でも書こう』をアルバムのトップに持ってきていることからみても、A lot of kisses on the bottm (文末にたくさんのキッスを)というこの歌の歌詞の一節から引用したものに違いない。

タイトルの I'm gonna sit right down and...の I'm gonna は言うまでもなく I'm going to の口語的表現、 sit right down の right は「今すぐ」、「まさに」という意味の副詞で「今すぐ座って」ということになる。

ウォーラーの歌から20年以上も経った57年、ビリー・ウィリアムスが歌ってリヴァイヴァル、200万枚の大ヒットとなった。
このほか、同年、ビング・クロスビーがディキシー・トランぺッターのボブ・コスビーのバンドと録音したアルバム『Bing With A Beat』での歌唱が粋だし、もちろん、ナット・キング・コールの歌もいい。


しかし、何といっても、シナトラのアルバム『Swing Easy !』(54)での軽快な歌唱は、縁の下の力持ちネルソン・リドルの編曲・指揮のオーケストラをバックに、スウィングしていてウォーラーに劣らぬ名人芸である(こちら)。

出戻りの手紙の顔にない住所(蚤助)




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