ベンチャーキャピタル(VC) ブログ

ベンチャーキャピタル(VC)、プライベートエクイティ(PE)投資、イノベーション関連の雑記

Paul Graham氏のエッセー

2007-02-26 20:31:34 | 経営・イノベーション
Y Combinatorの創設者で、ハッカー兼投資家として有名なPaul Graham氏のエッセーは、ソフトウェア・ネット関連での起業を考えている人必見のものだと思う。Y Combinatorは、reddit.comkiko.comへの投資で有名。

内容が非常に深く、テーマも大きいものが多い。彼はインキュベーターと呼ばれることも、VCと呼ばれることも嫌なようだが、VCとしては学ぶべきことが非常に多い。

まだ全部読みきれていないが、徐々に面白いものをピックアップしていきたい。




大人になってから読む伝記の面白さ

2007-02-24 18:42:20 | 経営・イノベーション
小学生の頃、家に歴史上の偉人の伝記集があり楽しく読んだ記憶があるが、残念ながら余り大きく心に残っているものがない。

ナイチンゲールとかリンカーンとかキュリー夫人とか、大体の内容は覚えていますが心に突き刺さる感じではなかった。

最近文庫本の、「フランクリン自伝」、「カーネギー自伝」を読む機会があり、それらが余りに面白いので驚いている。心に突き刺さる本である。

これら2冊を選んだのも、歴史上の事業家の成功や生き方、そして考え方が、今の仕事に少しでも生きるかな、と思ってのことであったが期待以上である。良書というのは100年の時を感じさせない。

フランクリンは、フィラデルフィアで印刷工場を始める際に、印刷業は金のかかる商売だから損をする、と反対されて半分憂鬱症になった、とか、

カーネギーは、ペンシルヴァニア鉄道で上司にかわいがられ、出世していたにも関わらず、大会社の社長になったところで、人間は自分の主人公となるのは至難である、と考え事業を起こした、とか、

今も昔も事業家の悩みや思考は変わらないのではないか、と思える内容である。

こういった本は大人になってからの方が、心にしっくりくる感じで、伝記や偉人伝は子供だけが読むものでもないな、と思う。

こういったものが500円、600円で手に入るなんて、これ以上ROIの高い教育は無いですね。





起業家の本質

2007-01-05 18:01:09 | 経営・イノベーション
明けましておめでとうございます。

今年初ブログです。

年末、ジャック・バウアー、プリズン・ブレイク、箱根駅伝、NFL、とDVD・テレビ見放題の寝正月でしたが、少し本も読みました。

起業家の本質

という本です。原題は「Entrepreneurs only」。私は起業家ではないのですが、彼らと仕事をする者としてつい読んでしまいました。

十数年前の話ですが、事業を起こし社長として生きていくとはどういうことか、ということを筆者の具体例を交えて、エッセンス化した本です。普通に面白いです。

その中で人が起業に際するリスクをどのように考えるか、という点で参考になる箇所がありました。

要約すると、

起業家は他人から見るとリスクをとっていると思われている。しかし起業家本人は、行う事業に対するリスクは感じていない(或いは計算できるリスクしか追っていない)。

もしあなたが起業に際してリスクを感じるようであれば、そのアイデアに創造力を加えてリスクが消えるようにしなさい(消えるまで考え抜きなさい)。



リスクがあるから止めるではなく、「リスクが消えるまで創造力を加える」。至言だと思いました。

ベンチャー・成長企業へ参加する意味

2006-12-12 20:45:22 | 経営・イノベーション
昨日、ベンチャー・成長企業の人材採用戦略の話を聞きにいった。

ネットエイジ、ディップ、アッカネットワークス、フラクタリスト、夢の街創造委員会、とここ1~2年で上場した企業の社長が集う、対談会だった。

いくつかメモした点として、

ベンチャーや成長企業で働くモチベーションは、

*属する組織・会社の為でなく、顧客や市場に対してダイレクトに仕事ができること(フラクタリスト田中社長)

*前職では経験できない夢を追求できること。例)従業員満足度No.1の会社を作る(ディップ冨田社長)

*どう生きても人生有限なので、その間にできるだけ大きな経験や体験をしたいという欲望をかなえること(ネットエイジ西川社長。楽天の三木谷社長も同じようなことを言っていたらしい)

ベンチャーを成長させていく為に必要なことは、

*トップラインを作り、営業システム・体制を作っていける人(西川社長)

*内部管理体制ができる経営管理部長(西川社長)

*執行役員層に厚みがないと、企業成長しない(西川社長)

*年商10億円程度、30人規模までは創業者(0を1にする人)でいけるが、その後はプロ経営者(1を10とか100にする人)が必要。


うちの投資先を見ていても思うし、今多くのweb2.0系の中小企業が生まれている。中小企業から、成長・拡大できる骨太のベンチャーになるには、人材・組織面での強化は必須である。ここは大いに研究すべき領域だと思う。


徐々に進んでいる米国のイノベーション

2006-12-09 21:57:24 | 経営・イノベーション
最近の梅田氏の記事を読んで、本当にこの人は米国・日本のネット・ベンチャーの動きを見ているなぁ、と今更ながら関心した。

確かに、私も2003年から2004年にかけてネットの技術は日本もアメリカも大差がないように感じていた。2004年頭くらいに、クライナーパーキンス(Kleiner Perkins)やセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)が、LinkedinやOrkutといったSNSに投資したというニュースを聞いた時、ジャフコ時代の上司とディスカッションした際、「そんなすごいかな」、といった議論をした記憶がある。

しかし、結果だけみると、やはりイノベーションはシリコンバレーから起こっている。2000年以降、Google、その後2004年にMyspace、2005-2006年にYoutube、SecondLifeが誕生している。

これらの動きは見えにくいし、実体経済に急にインパクトを与えるわけではない。しかし今度のイノベーションは徐々に静かに進行している。



イノベーションの解と弊社投資先企業

2006-11-02 16:04:32 | 経営・イノベーション
最近、個人的興味として、イノベーションを研究しています。イノベーションは使い尽くされた言葉ではありますが、日々の投資育成活動の中で、この概念は、益々重要度を増していっているように感じています。

今更か、とも言われそうですが、「イノベーションの解」というクリステンセン教授の本を読んでいます。「イノベーションのジレンマ」をいう本が非常に有名ですが、この本はその続編です。

イノベーションの解では、大企業が社内の中核事業へ資源配分を傾斜してしまうという真っ当な選択が、外部の破壊的イノベーションを招き、それに負けてしまう、というジレンマをどう解決するか、というところに焦点が当たっています。

クリステンセン教授は、外部の破壊的イノベーションが特定できる場合、それを新規事業機会と捉えるのではなく、中核事業への脅威と捉えた時、大企業はその破壊的イノベーションへのリアクションを取り易い、と述べています。そして、中核事業への脅威であるが故に、社内資源をそこに注入しなくてはいけない、というロジックが、大企業のマネジメントを動かす、と考えています。

そして、一度社内資源がその破壊的イノベーション(或いはそのリアクション)へ配分されることが決まったら、そのイノベーションを既存の中核事業の顧客ではなく、その他の顧客や新しいチャネルを拡大して育てていく、ということも重要な用件に挙げています。

これを読んで、私はびっくりしました。

なぜかと言うと、そのプロセスは弊社投資先で成功している、大企業のスピンアウトの企業の設立過程と全く同じだったからです。

その会社は、ある大企業において、インターネットによって、従来の中核事業が立ち行かなくなるのではないか、という危機論がきっかけで始まったプロジェクトからスタートした会社です。つまり中核企業への脅威、がきっかけとなっています。

中核事業への脅威ということで、そのプロジェクトへ資金が提供され、優秀な人材がそれを担当することが許されました。その後プロジェクトは、会社として立ち上がり、我々のような会社から外部資金を調達しました。従来の大企業の社内の枠に捕われないオペレーション形態が確立していったのです。

そして、その大企業の中核事業を離れてビジネスを行い、急成長しています。大企業の中核事業の既存の顧客をターゲットとせず、既存のチャネルを使わず。

この事例は、一般的に考えられている大企業の新規事業の設立、成長の過程とはかなり違っています。しかし、成功しているのも事実です。実は、弊社の投資先企業には、似た事例が他に2つあり、社内でも何度か、なぜそれらの企業が成功しているのか、成功の要因を抽出できるか、議論したことがありました。

イノベーションの解、の解釈は、そんな疑問を晴らす可能性を持った発想でした。

個人的には目から鱗がとれた本であり、VCやPEといった外部資本を使う意義、が見えてきたようで大変うれしく思いました。

もっと大企業からのイノベーションも研究していきたいと思います。




ライフサイクル イノベーション (単行本) を読む

2006-10-30 21:42:07 | 経営・イノベーション
表題の本を読みました。「キャズム」で有名な、ジェフリームーア氏の著作です。

イノベーションは、概念としてあいまいなものであり、なかなか体系化するのが難しいものですが、それを分類し、体系化しようと試みています。

特に、ビジネスは、コンプレックス・システムとボリューム・オペレーション、という2つのビジネスアーキテクチャがあり、イノベーションを追求する際に、どちらのアーキテクチャの企業なのかを認識する必要がある、との主張には、なるほどと思う部分も多いです。

ベンチャー企業の場合に照らして考えてみると、コンプレックス・システム型は、なかなか生まれにくいですが、専門性の高い成長市場におけるコンサルティングビジネス等は、この分野になりそうです。これらの企業は売上高成長性はあまり高くないですが、高い利益率で魅力あるベンチャーを作れそうです。

又、ボリューム・オペレーション型は、本書ではコンシューマビジネスということで語られていますが、ベンチャー企業においては、中小企業向けにサービスや製品のアクセスを効率的に提供できた企業、が成功しているケースが多い気がします。
弊社ファンドのエース案件もこのパターンにあたります。

実際このアーキテクチャのビジネスは、マーケットを面で押さえる必要がある為、コンシューマ市場を押さえるには、お金が掛かり過ぎる割りに投資効果(ROI)が見えにくい、ということなのだと思います。ですから、ベンチャー企業が考える現実解としては、ROIの見えやすい企業向けサービスをターゲットにしながらも、ある程度大きな資金を投入し、ボリューム・オペレーションを追及する、ということなのかもしれません。


イノベーションの今後

2006-09-19 17:39:02 | 経営・イノベーション
コア・コンピタンスという言葉の提唱者でもある、Gary Hamel氏が、今後のイノベーションの姿について述べています(原文)。

--------------
He said innovation should no longer be business process innovation as done by Toyota, product and services innovation as evident from the flat screen televisions unveiled by Samsung or business model innovation by Dell 20 years ago for that matter but industry architecture innovation in the form of recently launched iTunes by Apple.
--------------
(枠内引用)

イノベーションの今後は、

トヨタのような、ビジネスプロセスの改善ではなく、
サムソンのような、製品とサービスのイノベーションではなく、
デルのような、ビジネスモデルのイノベーションではなく、

i-tunesのような、industry archtechture のイノベーション、

になるのだそうです。

どのイノベーションも重要だとは思いますが、より広範囲なイノベーションが必要だ、ということなのかもしれません。

ラグビー平尾監督の人材論

2006-04-14 18:00:02 | 経営・イノベーション
ラグビーの平尾監督の話で面白い話が出ていました。

ラグビーで外国人選手、日本人選手を両方管理した立場から、日本人の得意なこと、不得意なこと、について書かれていました。

得意な例としては、
---------------
日本人は、いわれたことはちゃんとやる抜群の資質があります。たとえば、「ちょっと速くボールを投げてみろ」とか、「ポジションをちょっと前に取れ」と指示すると、ほんとうに「ちょっと」、0.1秒とか、50センチとかの微調整をするのです。それは、本人にしかわからないぐらいの微妙な調整です。この繊細さが、1つのフォーメーションやサインプレーを構築する上で、すごく重要な要素になってきます。決められたことをちゃんとやるには、この細かさが効きます。これを見ると、日本の製造業が、すばらしく精度の高い製品を作ったというのも頷けます。
------------

一方、不得意な例としては、
--------------
スクラムハーフに、私は外国人選手を起用しました。スクラムハーフというのは、一番ボールに絡むポジションです。その選手が、試合が始まって10分間、反則をしまくるのです。監督である私は、それを見て内心、「あいつ、何をやっているんだ!」と怒ります。ところが、10分たつと、ピタッと反則しなくなる。これは何でだろうと思っていると、気がつきました。彼は、その10分間で、レフェリーの資質や癖を見抜いていたのです。あ、ここまでならこのレフェリーは反則を取らないな、これをやると取られるかと。
これは日本人にはない感覚です。日本人は、ルールに従ってプレーすることがフェアだと思っています。ところが、ラグビーにおいては、そのルールの適用がレフェリーの主観によって決定される場面が非常に多いのです。たとえば、タックルを受けたら「直ちに」ボールを放さなければならないというルールがありますが、この「直ちに」というのは、別に1秒とかときっちり決まっているわけではありません。レフェリーが「直ちに」ボールを放さなかったと思ったら、笛を吹くわけです。つまり、人によってレフェリングに癖があるのです。
---------------


確かに、こういうことって、なかなか思いつかないな、と思います。


ちょっとコジツケ感もありますが、ベンチャーの世界を見てもそうです。

Google、Overture、そしてweb2.0といった、新しいフレームワークやルールを作り出したりすることは難しいし、あまり得意ではない。

一方、一旦フレームワークやルールが与えられると、その中での勝負はすごく強いと思います。面白いサービスは日本の方が多く生まれる可能性もあると思います。


IBMのパルミサーノ会長に聞く

2006-04-13 16:57:23 | 経営・イノベーション
IBMのパルミサーノ会長に聞く

日経ビジネスの2006年4月10日号を読んだ。世界鳥瞰というコーナがあり、IBMのパルミサーノ会長の記事が載っている。

その中で製品のイノベーションとビジネスモデルのイノベーションの話がある。

以下、引用。

------------------
自社製品は差別化しなくてはならない。だが製品のイノベーションでは間違いなく、すぐに競合他社に真似される。

しかし、ライバルは必ず反応する。1~2年かかるかもしれないが、競合他社がいずれ追いつくのは確実だ。

だがビジネスモデルの革新では、物事を成し遂げるユニークな方法を考え出せば、反応するのははるかに難しい。
-------------------

引用終わり。

当たり前のことを言っているのかもしれないですが、ハード、ソフト、そしてサービス、と次々にビジネスモデルを革新させてきた、IBMならではの説得性を感じました。

知り合いの上場しているネット企業の経営者も同じようなことを言っていました。
「ユーザへの価値はわかりやすく。ビジネスのバックエンドは見えにくく、仕掛けを作る」