ベンチャーキャピタル(VC) ブログ

ベンチャーキャピタル(VC)、プライベートエクイティ(PE)投資、イノベーション関連の雑記

Sequoia CapitalのMachael Moritzへのインタビュー

2006-08-15 12:07:39 | VC(ベンチャーキャピタル)・PE
今日はうれしいニュースを発見。

シリコンバレーの超一流VCである、Sequoia Capitalのパートナーである、Machael Moritzへのインタビューに、まさに”我が意を得たり”、と言うべき記事が載っていました。

彼はGoogle、Paypalへの出資を行ったことで有名です。

内容は、ハーバード大のMBAの学生に向けられた記事のようです。


インタビュワーが、過去の間違いから何を学んだかを、マーク・モリッツに聞いています。


以下引用。太線部は私が強調しています。

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Harbus: We believe that people learn from their mistakes, could you elaborate on a lesson learned from a mistake you've made in the business.

MM: Well, our history is littered with carcasses of investments that have not worked. We try to adopt the lessons of the successes that we've gotten from the companies that have flourished and not to forget the lessons of yesteryear. Probably, the biggest of the lessons is that capital intensive businesses are not suited for venture capital investing. So we had an investment in a calamitous fiasco called Webvan which was an enormous, capital intensive undertaking. Those sorts of infrastructure investments are best left to others. The best venture returns are those that come from investing very small amounts of money.
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いや、本当にそうです。この言葉を全てのベンチャーキャピタリストは肝に銘じるべきでしょう。

魅力的な投資案件の定義③成功する為の資金、時間が少なくてすむ

2006-08-14 16:18:59 | VC(ベンチャーキャピタル)・PE
①、②までの定義を見ると、そんなの当たり前ではないか、ということばかりです。しかし、③の定義を考えてみると、①、②の条件とのバランスが出てきます。

では、それはどんなことかというと、

『成功する為の時間、資金が少なくてすむ』、ということです。(⇒ここはかなり厳密に議論すべきところです。人によって感覚も違います)

ベンチャー企業は、1)サービス・製品開発のリスクと、2)顧客・市場開拓のリスク、と2つのリスクを背負っています。

ビジネスの構造的に、①と②が非常に魅力的であっても、③の観点からリスクの大きいものは、投資案件としての魅力に欠ける、ということになります。

例えば、非常に精緻な製造業の場合、1)の製品開発に関するリスクは、構造的に、ネット関連企業やサービス業と比べて非常に高い、と言えます。

顧客・市場開拓のリスクという点からも、代理店の存在や大口顧客の存在が、それを容易なものと考えてしまいがちですが、顧客が固定的である場合(大手家電メーカしか買わないもの、通信キャリア向け等)だと、買い手の政治的な都合で、売上計画が決まってしまうこともあります。

従って、②の点で、製造業は成功すると大きな営業利益を上げることが可能になるので、魅力的だと議論されますが、③の定義を加味すると、なかなか難しい投資になるケースが多いです。

個人的に知る例では、成功する為の時間、資金が少なくてもすむのは、圧倒的にサービス業、特にネット関連企業です。

例えば、資金が少なくてすむ例としては、ネット・メディア、会員制サービス等があり、時間が少なくてすむ例としては、ライセンスビジネス、フランチャイズが挙げられます。

これらのサービス業は参入障壁が低いことも多く、過度な競争にさらされますので、一般的に②の要件である、営業利益率が低くなる傾向があります。

そこで、高い営業利益率を持てるようなビジネス構造、オペレーション構造、チームを持っている投資案件を見つけ出す、ということが、今後の投資に必要になってくると思います。



魅力的な投資案件の定義② 成功すれば高い営業利益率がでる

2006-08-04 14:09:16 | VC(ベンチャーキャピタル)・PE
平たく言えば、固定費が一定で売上がスケールするもの。

例えば、ネットメディア(広告媒体の集合)、会員制ビジネス、ライセンスビジネス、フランチャイズビジネス、製造業、等。

どのような業界であれ、どのような新技術を活用するのであれ、多くの場合、過去からある何らかのビジネスモデルと似た形になります。

魅力的な投資案件の定義① 個人投資家受けするテーマ

2006-08-03 17:40:24 | VC(ベンチャーキャピタル)・PE
投資先のビジネスが、多くのサラリーマンや個人投資家にとって、これは「これは次来るよね!」というコンセンサスのあるテーマに沿っていると、投資案件として魅力的、ということになります。

IPO市場の参加者は、理解しやすい、テーマ性のある企業を高く評価する傾向があります。あまり難し過ぎる技術やわかりにくいサービス(B2B)は、VCにとっては不利です。

例えば、同じ売上・利益でも、消費向けサービスの方に高い評価がつきやすい傾向にあります。

理解しやすいテーマ、そのレベル感としては、「日経ビジネス」や「ガイアの夜明け」で特集が組まれるようなものが良いか、と思います。

例えば、アクティブシニア、ヘルスケア、中国、ワンセグ、少子化、というようなテーマです。

これらを連想させると、ああこれは伸びそう、という感覚を持ってもらえます。

個人投資家に受けるかどうか、なんてビジネスの本質と関係ない、というのは、ビジネスを行っている当事者にとって至極最もなのですが、VCにとってはパフォーマンスを左右する大事な用件です。

魅力的な投資先とは何かを規定する

2006-08-03 17:05:50 | VC(ベンチャーキャピタル)・PE
久しぶりの投稿。

VCにとって魅力的な投資先に投資するのは当たり前のことである!

ハズですが、多くのVCがこの「魅力的」の厳密な定義が出来ていないのが実情です。

Youtubeがすごいことになっている。この案件は日本版のYouTubeになりそうだ。投資しよう!

とか、

オンラインゲームが上場してすごい値がついている。ここも大化けするかもしれない!


といった議論がなされ、投資を正当化する文書が作られ、投資が実行される、といったケースはあります。


しかし、人(VC)によって何を魅力的と思うかは、実は結構マチマチです。にもかかわらず、その定義をしないまま、

あそこは経営陣がすごい、なかなかない技術を持っている、売上がかなり伸びている、だからいい(魅力的だ)という話にいきなり入ってしまうことが多い。

どのベンチャーも、いい面をみればいいし、悪い面を見れば悪いところがあります。従って、何をもって魅力的か、という思考のフレームワークが無ければ、何を議論しているのかわからなくなってしまいます。

経験上、これ無しで投資してしまった案件は、本当に失敗する確率が高くなっています。又、成功したのに投資倍率が著しく悪い、といったケースもあります。


ですので、何をもってその案件が魅力的なのか、をまず初めに規定することが必要です。



では、VCにとって魅力的な案件とは何か?


VCを8年やってきて思うのは、「魅力的」案件とは、


①個人投資家受けするテーマ

②成功すれば高い営業利益率が出る

③成功する為の時間、資金が少なくてすむ



の3つに大きく集約されるような気がしています。