シカゴ通信

つれづれなるままに、シカゴでの生活を記録します

「トヨタ生産方式 - 脱規模の経営を目指して」

2006-01-10 02:53:45 | Thought
昭和53年だから1978年の書物。

30年前に書かれた書物とは思えん普遍性があるのは、「大量生産・規模の利益によるコストダウン」ではなく、「多品種少量生産でも、利益の出る体質をめざす」ことを中心に書かれているからだな、と思った。

基本的には生産管理の本ではあるけど、組織で仕事をするときの「組織品質」についての示唆も多い。

内容的にもやさしく噛み砕いてあるし、さすが、と思う。色あせない古典。


いまさら、この書物を読むなんてまた恥ずかしい限りだけど、いやぁ、これ、ほんま勉強になりまっせ。

当然のごとく製造現場の話が主、なんですが、私は、トヨタ式って、ホワイトカラーにも通用する方式だと思ってまして、で、「組織の総合力」「組織能力」「学習する組織」という観点から読んでいますが、それにあたって、忘れていた重要なポイントを抜粋。

「旋盤工はあくまで旋盤工であり、溶接工はあくまで溶接工でなければならないアメリカのシステムと、生産現場において旋盤も扱えば、フライス盤も扱う、ボール盤も扱う、さらには溶接も行なうという、幅広い技術を身につけることの出来る日本のシステムと、どちらが優れたシステムといえるのだろうか。
 優劣を論じにくい問題である。両国の歴史と文化の相違によるところ大であろう。・・・日本のシステムでは、作業者一人一人が幅広い生産の技術を体得することを通じて、生産現場のトータルなシステム、私はそれを「製造技術」と呼んでいるが、それを作り上げることに参画する。そして重要な役割を演じてもらう。それこそが、働き甲斐に通じるであろう。・・・」


いつもマルクスの話になるけど、彼が27歳のときにほとばしる情熱で書いた「経済学・哲学草稿」には、「労働とは本質的に自己実現の過程である」という言葉がある。その意味で「働き甲斐をもつ」というのは非常に重要なこと。(やっぱ、このあたりがオレの仕事哲学の原点の一つやな)


さらに、またチープな事例で恐縮だけれども、「働き甲斐」というのは、マズローの「人間の欲求五段階説」の最高位に属している、「自己実現の欲求」にも対応できるものだと思う。苦痛としての労働・労務から、自己実現の過程としての労働。いかにして、組織を、「自己実現の場所」として活用できるか、そのための、トップの役割とは、リーダーの役割とは。これが私のFundamental problem settingである。


・・・というわけで、話がずれまくったが「トヨタ生産方式」は、生産方式確立までの、苦労話を交えた非常に面白い本です。




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