『早くボール投げて』とでも言っているかのような可愛らしい瞳。僕は彼女が可愛くてしょうがない。トイレをしている時の、屋上から帰りたくない時の、ボールを渡してくれない時の、それぞれの表情が愛しくてたまらない。彼女はボール遊びが好きだ。彼女は松ぼっくりが好きだ。彼女は他の犬たちとは違う。彼女は声を荒げたりしない。静かに、かつ的確にメッセージを伝えてくれる。けれど、彼女は寮のアイドルだ。誰にでも平等に愛をふりまく。彼女の表情はみんなのものだ。そんな彼女を見ていると、ちょっぴり切なくなってしまう。僕は彼女と出会ってからまだ日が浅い。これからもっと一緒に過ごす時間がある。だからこの気持ちは、まだ胸の中にしまっておくことにしようと思う。