2005・9初出記述
脚本家・倉本聰先生が主宰する富良野塾。大自然の流風を受けながら自給自足の生活を学び、陽が沈むと倉本先生のお話しを伺って脚本執筆に努める。この富良野塾出身のかの方に、一・二度伺ったことがある。
「何が最もこころに残りましたか?」
「そうですね……やはりひとそれぞれなんでしょうけれど、私には生きているということの尊さ、というの か、おぼろげなんですけれどね。
生 . . . 本文を読む
2006・1筆記
懐かしい想い出を手繰り寄せるかのように、忘れかけた頃にめくってみたくなる書がある。堀辰雄『風立ちぬ』。
有名なヴァレリーの詩句「風立ちぬ、いざ生きめやも。」に題を採ったとされるこの小説には、著者が生涯見つめて止まなかったひとの死、最愛の者との儚い別れ、そこから起こる果てしなき心根の葛藤、それらへの連綿たる愁傷感が横溢している。幼すぎて意味も判らず読みかけで終わっていた . . . 本文を読む
“他を批判する者は我が身を丸裸にする”
たとえばこんなドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェの言葉。
○他人に批判的な、或いは他人に厳しい人間ほど、自らを省みない人間も居ない。
○己がどういう人間か、非難されることを承知で他人を批判したほうがいい。
何故ならひとは他人を批判する者に注目するあまり、
その人間がどれほどの素養の持ち主か、無意識に探る生き物だからだ。
○君はその . . . 本文を読む
☆初出:2006・9
もういまではよく知られたことだろうけれど、
わずか28年弱で夭折した幕末の偉人、高杉晋作が
辞世の句として残した歌が
「おもしろきこともなき世をおもしろく」。
昔の偉い功績を残した人々は
みなこの世を去ろうとするとき辞世の句を詠んだ。
俺が歩んできた世の中に
最後にこれだけはもの申したいというわけ。
十代の頃、あの松下村塾にて吉田松陰に師事し学問 . . . 本文を読む
2004・8 記述文拠り
骨
ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ、
ヌックと出た、骨の尖。
それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。
生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこと . . . 本文を読む
(初出;2005・2)
「山城(斉藤道山)が子供、
たわけ(織田信長)が門外に馬を繋ぐべき事、
案の内に候」
……大意・いずれ信長の代になり、
我が家来どもはことごとく
信長の家臣となるであろう。
評する、もひとなり。
美濃の国を盗った、道山。
自身の大望の為に是非にも、
その国が欲しいと睨む信長。
道山の愛娘、
帰蝶の姫が信長に輿入れする前夜、
その眼前に懐 . . . 本文を読む
『金閣焼亡』小林秀雄の文献から。2006/11記述
***小林秀雄「金閣焼亡」について
古い文献をまさぐっていたところ、かの世に『考えるヒント』『無常といふ事』で名高き小林秀雄の評論集が出てきました。しばし、黙読。すると興味深い評論作が。三島由紀夫が『金閣寺』を上梓する以前、書かれた『金閣焼亡』という論文。そこにはすでに今から60年以上も前に現代の狂気とも言うべき有りようを示唆した文章 . . . 本文を読む
その詩にはどこか哀感があって、けれど幼い私にはそれが何故そうなのか、悟る術もなかった。
ちいさい秋みつけた
サトウハチロー
だれかさんが だれかさんが
だれかさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋
ちいさい秋 みつけた
めかくし鬼さん 手のなる方へ
すましたお耳に かすかにしみた
よんでる口ぶえ もずの声
ちい . . . 本文を読む
御近所に、田舎では異相とも思えし豪邸が建った。田畑を整地し、何度も土を入れ、随分長い間、放置されていた為、話題に上っていたが、土建業者をぽつぽつと見かけるようになるとあっというまに三階建てのお城のような家が出来上がった。建てた家主は、私が昔から知るY氏。招かれて酒を酌み交わした。Y氏いわく「これまで散々苦渋をなめてきたから、ようやく手に入れた我が家」いわく「いままで苦労の連続だったから、我慢の連 . . . 本文を読む
筆記2008・3
これでもかこれでもか、と繰り返される連綿とした因習劇。手毬唄や民衆に深く根ざした伝承本、さては芭蕉等に代表される俳諧、これら旧くから伝わる読み書きものを殺人の主材と位置付け、そこに巧妙な近親の怨念劇を織り込む。その文章、構成の巧みさは見事としか言いようがなく、いまだに愛好家が多いのも頷ける。
横溝正史。かの江戸川乱歩が推理小説界に推挙したと伝えられる作家のただならぬ才 . . . 本文を読む
2012・2記述
『あの町この町』
あの町この町
日がくれる 日がくれる
今来たこの道
帰りやんせ 帰りやんせ
お家(うち)がだんだん
遠くなる 遠くなる
今来たこの道
帰りやんせ 帰りやんせ
お空に夕(ゆうべ)の
星が出る 星が出る
今来たこの道
帰りやんせ 帰りやんせ
野口雨情は明治の代に生を受け、
第二次世界大戦終戦 . . . 本文を読む