◆歌や自動車の名前にもなっている「すばる」という言葉はれっきとした日本語です。おうし座の散開星団「プレアデス」のことで、清少納言の枕草子にも登場しますから、かなり歴史のある言葉です。すばる望遠鏡のあるマウナケア山頂は標高が4200mもあって空気が薄いので、人間が長時間に渡って居ることはできません。ふだんは山麓の「ハワイ観測所」で遠隔観測しています。また、望遠鏡は温度変化に敏感なので、すばるのあるドーム内はエアコンで厳密な温度管理をしています。人間の体温が空気の流れをつくり星がぼやけるのでドーム内は無人です。
◆すばるは反射望遠鏡ですから、レンズの代わりに鏡で光を集めています。この鏡の大きさが8m以上もあります。マウナケア山頂には、36枚の鏡を組み合わせた口径10mの世界最大のケック望遠鏡がありますが、1枚鏡ではすばるが世界一です。望遠鏡の精度を上げるには1枚鏡のほうがはるかに優れています。この巨大な鏡を作るのには大変な労力と時間が必要でした。ガラスを作るのに3年半、鏡を磨くのに4年もかかっています。アメリカで作られた鏡は船でハワイ島に運ばれて、さらに巨大なトレーラーでゆっくりと山頂まで運ばれて据えつけられました。
◆精密に磨かれたすばるの鏡は限りなくツルツルです。その精度は百万分の12㎜という驚異的なもので、鏡の大きさをハワイ島に例えると紙1枚の凸凹しかありません。この精度だと東京から富士山頂のテニスボールを見分けられます。通常、こんな巨大な鏡を作ると重さが百t以上になり、その重みでゆがんでしまいます。ところがすばるの鏡は直径が820㎝もあるのに、厚みはたった20㎝。この薄い鏡の下にはコンピュータで制御された261本の棒があり、もし鏡がゆがんでもその部分の棒が動いてゆがみを修正します。このように、すばるの鏡はいつも完璧な姿を維持しています。
◆さらに、すばるのドームは一般的な半球状ではなくて筒状をしています。望遠鏡の大敵は空気のゆらぎで、これが星の見え方を悪化させます。すばるのドームはこの空気の流れを徹底的に研究して作られました。このように、すばるは数々の最新技術が駆使されたハイテク望遠鏡です。