番組のはじめには機械を操作しながら今夜の星空をご紹介しています。たまに、お客様がひとりだけのこともありますが、そんな時でも手を抜かずにしっかりお話しています。ある日の午後、お客様は男性の方がおひとりだけでした。いつものように、天頂付近の星座、続いて西空の火星、東空の木星などひと通り簡単に解説して、番組が終了した後のことです。
「東の空に明るい星が見えるが、あれは何ですか?」
「私は火星をまだ一度も見たことがない。何時ごろ、どの方向に見えるのですか?」
など次から次へと質問されます。質問を頂くのは大変有り難いのですが・・・。私が、たったひとりのお客様のためにじっくりお話したのに、居眠りをされていたようです。でも、きっと美しい星空のもとでくつろいでいただけたことと思います。
そういえば、あれも男性客ひとりの時のことでした。番組開始と同時に爆音、いえ大きなイビキが12mドームに響きわたり、番組終了後、職員に起こされた方がいました。この方はもう一度チケットを買って、今度はしっかりご覧になっていました。居心地が良すぎるのも考えものです。
最近はお客様が少ないときは、誕生日の星座や世界の星空などのリクエストをおたずねしてから解説するようにしています。せっかく来ていただいたのですから、楽しんでいただかないと損ですよね。
ところで皆さんは、日没から星空に変わるまでの演出はどうやるか、ご存じですか?
まず、BGMスタート、昼光50%、ブルーライト50%、太陽点灯、日周運動スタート、昼光をわずかに減光、夕焼け点灯、薄明点灯、外惑星点灯、内惑星点灯、恒星を徐々に増光、昼光を徐々に減光、夕焼けを徐々に減光、薄明を徐々に減光、そして、お客様の眼が暗闇に慣れてきたころを見計らいながらブルーライトを徐々に減光し、天の川を点灯し流星を飛ばします。これで満天の星空の出来上がり。やがて、客席のあちこちから歓声が上がります。
まるで本物のような夜空を再現するのには、ずいぶんと大変なのですが、私たちの腕の見せ所でもあるのです。はじめて操作卓(コンソール)をご覧になった方は、ボタンやダイヤル、計器などずらりと並んで飛行機の操縦席のように思われるでしょう。ここはまさに、星空の操縦席です。