◆秋の夕方、南の空低く大きなS字を描く蠍座の左(東)に射手座が姿を見せています。天の川をはさんで、蠍座と射手座がならぶ姿は印象的です。射手とは「弓を射る人」のことですが、バラバラといくつかの星がちらばっているので、その姿はハッキリしません。右半分の星のならびは弓に矢をつがえた形になり、矢の先はさそりをねらっています。ケイロンの腕と矢の部分にある6つの星がヒシャクの形にならんでるので、北斗七星に対して「南斗六星」と呼ばれています。中国では古くから、北斗の神は人間の死を、南斗の神は人間の生をつかさどると考えられています。
◆ケンタウロス族は上半身が人間で下半身が馬の姿をした乱暴者です。しかし彼らの1人ケイロンは神々から医術や音楽、狩りの技術などを学んで、アキレスやヘラクレス(ヘルクレス座)には武術を、アスクレピオス(へびつかい座)には医術を、カストル(双子座)には馬術を教えました。ある戦いでケイロンは怪物ヒドラ(うみへび座)の毒矢が刺さって死にますが、神々の王ゼウスが惜しんで星座にしたと伝えられています。
◆私たちの銀河系は2千億個もの星々の集まりで、射手座の方向にこの中心があります。そのためこの付近には、双眼鏡の対象になる星雲や星団がたくさんあります。南斗六星の右から2つ目の星に双眼鏡を向けると、球状星団M22とM28を同一視野に見ることができます。さらに、その右には天体写真などで有名な散光星雲M20(三裂星雲)とM8(干潟星雲)も同一視野に見えます。双眼鏡で手軽な星雲星団めぐりはいかがですか。