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KAWORUの山日記~今日も雲の上!

百名山や日本アルプスの旅の記録

プラネタリウムへ行こう~星の劇場「MS-10」

1998-01-01 00:00:00 | 星空の案内

◆紀元前2千年頃、エジプト人は宇宙を四角い箱の中に閉じ込めようとしました。ギリシア時代になるとアルキメデスやプトレマイオスが天球儀を考案し、やがて18世紀のヨーロッパでは惑星や月の動きを精密に表現する機械となりました。現在のようなレンズを使ったプラネタリウムはドイツのカールツァイス社が1923年に試作したものです。日本では1937年に大阪の電気科学館に輸入第1号が設置され、1958年には甲子園阪神パークにミノルタの国産第1号が登場しました。現在、世界の大半のプラネタリウムは日本製です。そして、当館のミノルタMS-10は世界中で使われている投映機です。

◆地球は太陽の回りを公転しています。そして地球自身も自転しています。これらの回転の組み合わせで星空の動きを再現することができます。さらに、観測地点の緯度を変えれば地球上のどこの星空でも表現できます。プラネタリウムはこの年周運動、日周運動、緯度変化とさらに歳差運動という4つの軸で構成されています。これらが複雑に連動して、いつの空でも、どこの空でも見ることができるのです。

◆特徴的な2つの大きな球体は恒星投映球というプラネタリウムの心臓部です。ここにはミクロンサイズの穴があいた原板が入っています。この中の強力な電球の光が原板を通り、レンズで拡大された星がドームいっぱいに映し出されます。さらにその付近には5つの惑星や月、太陽、銀河、薄明、夕焼などの投映機がずらりと並んでいます。興味のある方はぜひ機械をご覧下さい。


プラネタリウムへ行こう~直径12メートルの宇宙

1997-12-01 00:00:00 | 星空の案内

昔はたくさんの星が見えましたが最近は空気が汚れ、夜の街は光があふれ、星を見るのが難しくなりました。皆さんは子供の頃、星を見ながらこんなことを不思議に思ったことはありませんか。

「月の形はなぜ毎日変わるの?」「太陽の高さは季節でどう違うの?」
「誕生日の夜、その星座が見えないのはなぜ?」
「夏の星座は冬には見えないの?」「惑星と恒星の見え方はどう違うの?」
「明けの明星はなぜ朝にしか見えないの?」

皆さんはこれらの疑問に即座に回答できますか。本を読むだけではなかなか理解できないこのような疑問に、プラネタリウムはとても簡単に答えてくれます。

プラネタリウムはたった12mの人工の宇宙ですが、まるで本物のように星空を表現する精巧なシュミレーション装置です。時間や場所に関係なく地球上で起こるどんな天文現象でも表現できます。毎日の惑星の動きや月の満ち欠けも実に正確です。1日の星の動きを数分で再現したり、あなたが生まれた時の星空を、あるいは世界各地の星空を再現することもできます。

私たちをどこへでも、いつの時代へでも運んでくれる夢の乗物。たとえば、ドラえもんの「どこでもドア」や「タイムマシン」みたいなもの、それがプラネタリウムです。


土星へ旅立つ惑星探査機~土星の衛星に生命はいるか?

1997-11-01 00:00:00 | 星空の案内

◆土星や木星は地球と同じように太陽のまわりを回る惑星ですが、いずれも直径が地球の10倍もある巨大惑星で、地球のように地表に立てません。このような惑星は水素やヘリウムからできているので「ガス惑星」「木星型惑星」などと呼ばれています。太陽~土星の距離は太陽~地球の距離の10倍も遠く離れているので太陽の光ははるかに弱く、表面温度は-180度しかありません。土星には美しいリングと18個の衛星が見つかっていますが、そのリングや衛星の大部分は氷でできています。水星より大きい衛星タイタンには、地球より濃い大気(窒素)や有機物が発見され、原始の地球とよく似ています。 

◆この土星には79年にパイオニア11号、80年と81年にボイジャー1・2号が接近して観測しました。そして、97年10月には超大型の土星探査機「カッシーニ」が旅立ちました。土星までの距離が32億kmとあまりにも遠いこと、探査機の重さが約6トンもあることなどから金星や木星などの重力で加速する「フライ・バイ方式」がとられます。2004年には土星の人工衛星となり、そのあと4年間かけて土星やリング、衛星などを観測することになっています。特に衛星タイタンには小型の探査プローブ「ホイヘンス」をパラシュートで投下して大気の成分や生命探査などの調査が行われます。果して土星人はいるのでしょうか・・・


双眼鏡で木星の月を見よう

1997-10-01 00:00:00 | 星空の案内

◆秋から冬にかけて、南の空で明るく輝いている星が木星です。木星は地球と同じころに生まれた太陽系最大の惑星で、地球の1300倍の体積があります。水素やヘリウムなどガスの固まりでできているので、地球や月のように表面に立つことはできません。また、木星は太陽のまわりを12年もかけて1周しているので、星占いの星座の中を毎年1つだけ東へ動いて行きます。このことから木星のことを歳星とも呼んでいます。

◆木星のまわりには16個もの月(衛星)が見つかっています。そのうち特に大きな4つの衛星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストはガリレオが400年ほど前に望遠鏡で発見したので「ガリレオ衛星」とも呼ばれています。イオは地球以外でただ一つ火山の噴火が見つかった星です。その外の3つは氷におおわれた極寒の星です。エウロパの大気には酸素が見つかりました。さらにその地表下には温かい水があると予想され、生命存在の可能性があります。ガニメデは太陽系最大の衛星で、水星より大きな星です。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見つけることができますので、毎日観察していると4つの衛星が木星の回りを右へ行ったり左へ行ったりして動いている様子がよくわかります。

◆2001年宇宙の旅の続編「2010年」では、木星が爆発を起こして第二の太陽になり、エウロパに新しい生命が誕生します。もし、木星が今の100倍も大きければ内部で核融合反応が起こり、この映画のようにもう一つの太陽になっていたかもわかりません。そうすれば、夜空には満月よりはるかに明るい木星が光輝くことになっていたでしょう。


星座になったヘラクレス

1997-09-01 00:00:00 | 星空の案内

◆ギリシア神話では、神々の王ゼウスの子ヘラクレスはギリシアで一番の勇者とされています。彼は赤ん坊のときから毒蛇を握りつぶすほどの怪力の持ち主で、成人してからは半身半馬のケイローン(射手座)に武術を習いました。ある時、彼は女神ヘラの呪いで妻と子をあやまって殺してしまい、罪ほろぼしの旅に出ます。その時にやりとげた12の冒険の1つ目が、ネメアの森に住む恐ろしい人食いライオンの退治です。彼は何日も死闘を繰り返し、やっとのことでこの巨大なライオンを倒すことができました。そのとき退治されたライオンが後に春の星座「獅子座」になりました。2つ目の冒険は9つの頭を持つ怪物ヒドラの退治です。ヘラクレスを憎んでいた女神ヘラは、ヘラクレスと戦うヒドラのもとに一匹の化けガニをつかわしました。しかし相手は怪力のヘラクレスのこと、逆に踏みつぶされてしまいます。そのあと、ヘラがあわれんで星座にしたのが「蟹座」です。一方、ヒドラの方も天に上げられ、蟹座のすぐ下で「うみへび座」になりました。

◆ヘラクレスも星座(ヘルクレス座)になっています。夏の夕方、織姫星のすぐ西隣にあらわれますが、見つけにくい星座です。M13は2万光年彼方にある50万個の星の大集団で、最も美しい球状星団です。ヘラクレスの頭に輝く3等星ラス・アルゲティは700光年彼方にある赤色超巨星で、太陽の800倍もの大きさがあります。この星は明るさの変わる変光星で、中国では「天帝の座の星」とされていました。夜空の星(恒星)は動かないように見えますが、実際は大変な高速で動いています。私たちの太陽系は秒速20㎞もの速さでこのヘルクレス座の方向に向かって進んでいます。


ダブルスターをさがそう

1997-07-01 00:00:00 | 星空の案内

◆夜空をながめていると、肉眼では1つの星なのに双眼鏡を使うと2つの星にわかれて見えることがあります。このようにごく接近して2つの星が並んで見えるものを二重星と呼んでいます。

◆視力検査の星ミザール:北斗七星の柄の先から2番目の星ミザールは、視力のいい人ならすぐそばに小さな星がくっついているのがわかります。この小さい星アルコルは、たまたま近くに見えているだけで、「見かけの二重星」といいます。ミザールとアルコルは実際は2.5兆㎞も離れています。昔のアラビアでは兵士の視力検査に使われた星としても有名です。望遠鏡をミザールに向けると、すぐそばにもうひとつ別の星がぴったりくっついているのがわかります。この星とミザールは、お互いの引力で相手の回りをぐるぐるまわっている星で、二重星の中でも特に「連星」と呼びます。宇宙全体では、太陽のように単独で輝く星より、いくつかの星が連星となっている方が多いそうです。

◆ダブル・ダブルスターε(イプシロン):織姫星ベガのすぐ隣のε星は二重星で双眼鏡では2つの星に見えます。ところが、望遠鏡を使うとそのそれぞれがまた二重星(連星)であることが分かります。二重星の二重星、つまり四重星というわけです。

◆天上の宝石アルビレオ:白鳥座のくちばしにあるアルビレオは美しい二重星(連星)として有名です。高倍率の双眼鏡でもわかりますが、望遠鏡ではオレンジとブルーの星に見えます。


双子座の兄は6つ子?

1997-05-01 00:00:00 | 星空の案内

◆冬の夕方、天頂付近に2つの明るい星が仲良く並んで見えます。このあたりが双子座です。明るい星は弟の星でポルックス、暗い星が兄の星でカストルという名前です。兄はボクシング、弟は乗馬の名人で、2人とも数々の冒険をしたギリシア神話の英雄です。実は兄の星カストルは、肉眼では1つの星のように見えますが、望遠鏡をのぞくと2つの星がくっついているのがわかります。そして、もっとくわしく調べるとそれぞれの星がさらに2つの星からできています。おまけに、すぐ近くにも2つの星がまわっています。つまりカストルは、実際は6つの星からできた「6つ子の星」という、なんともややこしい星です。夜空に輝く星の半分以上は、このように2つ以上の星がお互いのまわりをぐるぐる回っていて、これを「連星」と呼んでいます。

◆北斗七星のひしゃくの先から2番目の星(ミザール)をよく見てください。すぐ近くにもう1つ小さな星がくっついているのがわかりませんか。昔のアラビアでは、兵士の目の検査にこの星を使ったそうです。「ミザールがみえざる者は不合格」といったかどうかは知りませんが・・・。このミザールを望遠鏡で見るともうひとつ星がくっついているのがわかります。双子座の東に見える獅子座にもいくつか連星があります。一等星のレグルスも連星ですが、さらに2つ上の星は、色の大変に美しい連星として有名です。


赤くさびた鉄の砂漠「火星」

1997-05-01 00:00:00 | 星空の案内

◆私たちは幸運にも、木星への彗星衝突、百武彗星の大接近、史上最大級のヘールボップ彗星と「今世紀最大の天文ショー」を次々と目撃しました。これからは火星探査が話題になりそうです。97年7月にアメリカの探査機が火星に到着したのは記憶に新しいところですが、その他にも日本初の惑星探査機「のぞみ」など、各国の火星探査計画が目白押しです。1969年、人類が月に立った時の興奮が火星で再びよみがえるのもそう遠くないでしょう。

◆地球のすぐ外側をまわる火星は、2年2か月ごとに地球に接近します。そしてその不気味なほど赤い色は古くから人々の関心を引いてきました。ギリシア・ローマ時代には血の色を連想させるので戦いの神「マルス」の星とされ、また19世紀には望遠鏡で運河のような地形が見つかり、火星人が住んでいるのではと注目されました。アメリカでは火星人が地球を襲うSF小説「宇宙戦争」がラジオで放送された時、それを信じた多くの人々がパニックをおこしました。

◆太陽系でただ一つ、この惑星だけがなぜ赤く輝いているのでしょうか。火星探査の結果火星の表面のほとんどが赤い砂でおおわれているのがわかりました。そして、この砂の正体が「酸化鉄」、つまり「赤い鉄サビ」だったのです。酸化鉄があるということは大昔、火星にも多くの水があった証拠にもなります。火星は1日がほぼ24時間、重力は地球の3分の1で薄い大気があります。おまけに四季の変化もあります。私たちが将来ほかの惑星に移住するなら、まずは地球によく似た火星が第一候補でしょう。


地球の生命は彗星からやってきた?

1997-03-01 00:00:00 | 星空の案内

◆彗星(ほうき星)は太陽系の彼方から太陽に近づき、そしてまた太陽系の彼方へ帰っていく星で、その正体は数㎞から数十㎞の大きさの汚れた雪や氷のかたまりです。そのかたまりが太陽に近づくとその熱で表面がとけはじめ、蒸発したガスやチリが太陽風に吹き飛ばされて長い尾ができます。彗星がまきちらした物質の中を地球が通りぬける時にたくさんの流星が見られます。これが流星群です。再び同じ彗星を見るには数十年から数万年かかるといわれています。

◆私たちの遠い祖先は、バクテリアのようなものだと考えられています。では、その最初の生命のもとになる材料はどこからやってきたのでしょう。約46億年前、太陽系が誕生したころの地球はドロドロにとけた熱い星で、とても生命が生まれることはできません。地球が冷えたあと、海のもとになる水と生命の材料になる有機物が、彗星などに乗って地球にやってきたと考えられています。彗星は氷のかたまりですから生命の材料が冷凍保存されていても不思議ではありません。最近、火星から飛んできた隕石にバクテリアの化石らしいものが発見されて話題になりました。昔は火星にもたくさん水があったそうですから、彗星が生命の材料といっしょに火星まで運んだのかも知れません。

◆97年の春に近づいたヘール・ボップ彗星は久しぶりの大彗星ということで大変話題になりました。太陽をめざして数千年もの旅を続けてきたこの彗星も、今は太陽から遠ざかり、遠い故郷をめざしています。
「はるかな昔、私たちの祖先は彗星に乗って、この地球にやってきた」
こんなふうに考えながら彗星を見ると、親しみがわいてきませんか?


冬空の王者オリオン座ガイド 

1997-02-01 00:00:00 | 星空の案内

◆ただ何となく星空をながめているより、ほんの少し星について勉強すると星を見るのがずっと楽しくなります。たとえば、オリオン座は一等星が2つもある豪華な星座ですが、その一つのベテルギウスは太陽の900倍もの大きさがあるって知っていましたか。しかも、この星は風船のように膨らんだり縮んだりして大きさが変わります。そのほかにも全天一美しいといわれる「M42大星雲」やウルトラマンの故郷「M78星雲」など双眼鏡や望遠鏡で楽しめる星雲があります。また、オリオンのベルトのところにある3つ星は真東から昇って真西に沈みますので、正確な方位を知ることができます。こんなことを知っているだけでも、オリオン座への関心がずいぶんと違ってくるはずです。


神々の王ゼウスの化身(牡牛座)

1997-01-01 00:00:00 | 星空の案内

◆冬の夕方、南の空高く見える星座で、ヒアデスとプレアデス(すばる)という肉眼で見える星団が2つもある豪華な星座です。牡牛の顔を形作っているのがヒヤデスで、その右目に輝くオレンジ色の一等星アルデバランは、太陽の30倍もある大きな星です。プレアデスは誕生したばかりの若い星の集まりで、牡牛の肩のあたりに双眼鏡を向けると、視野いっぱいに数十個の星々が広がります。右の角の先には、大爆発を起こした超新星のなごりの「カニ星雲M1」があります。

◆天上から地中海の国々をながめていた神々の王ゼウスは、フェニキアの王女エウローペにひと目ぼれします。彼はこの美しい王女を誘惑するために、真っ白の牡牛に変身して地上に降り立ちます。その牡牛は王女が背中に乗ると突然海に向かって走りだし、そのまま地中海を渡って対岸のクレタ島まで泳ぎました。その地で二人の間に生まれたミノスは、やがてクレタ島の王になったそうです。現在の「ヨーロッパ」は彼女にちなんで名づけられたといわれています。


空を飛んだ金色の羊(牡羊座)

1996-12-01 00:00:00 | 星空の案内

◆牡羊座は冬の夕方の南の空に現れる星座で2等星、3等星、4等星の3つの星でできた小さな三角形が目印です。一番明るい星ハマル(羊の頭)は地球からの距離約80光年。約2千年前は「春分の日」にこの星座に太陽が輝いていました。当時、太陽の通り道にそって12の星座(黄道12星座)が作られたのですが、この牡羊座が第1位の星座とされました。

◆ギリシア神話によると、テッサリヤの王妃ネフェレーは前の夫のもとに残してきた2人の子供の命があぶないと知ると、神々の王ゼウスに救いを求めました。2人の兄妹が殺されようとするちょうどその時、金毛の羊が2人を背に乗せて、大空高く飛び去りました。途中、妹のヘレが海へ落ちてしまいましたが、無事にコルキスにたどり着いた兄は国王に親切にむかえられます。そして、感謝のしるしとしてその金色の毛皮を王におくり、国の宝になりました。のちに、彼のいとこのイアソンがこの毛皮を奪いにやってくるのが有名な「アルゴ遠征隊」です。牡羊座は、海に落ちたヘレを心配そうに見下ろしている羊の姿とされています。


魚に変身した愛の女神(魚座)

1996-11-01 00:00:00 | 星空の案内

◆魚座は、冬の夕方の南の空に現れる星座で、2匹の魚がリボンで結ばれた姿をしています。リボンの結び目の星アル・リスカ(結び目)は肉眼で見ると1つの星ですが、実は2つの星が720年の周期でお互いの回りを回っています。この双子のような星を「連星」と呼びます。星空の星の半分以上がこの連星の仲間です。この星を右にたどると西の魚、上にたどると北の魚になります。この星座は暗い星ばかりですが、秋の四辺形を目印に、大きなLの字をさがすと見つけられます。魚座は、春分の日に太陽がここに来て昼と夜の長さが同じになるので、天文学上重要な星座とされています。

◆ギリシア神話によると、愛の女神アプロディテ(ビーナス)とその息子エロス(キューピッド)が川岸を散歩していると、百の頭を持ち、口から火を吹く怪物テュホンがあらわれました。驚いた2人は近くの川に飛び込み、魚に変身して逃げ去ります。そして、逃げる時にはぐれてしまわないように、お互いの体をリボンで結びました。その時の2匹の魚が天に上げられて魚座になりました。


ゼウスにさらわれたトロイの王子(水瓶座)

1996-10-01 00:00:00 | 星空の案内

◆秋の夕方、南の空に現れる星座で、水ガメを肩にかついだ少年の姿をしています。暗い星ばかりですが、水ガメの部分に4つの四等星が「三ツ矢マーク」の形にならんでいるのがわかります。水ガメから流れ出た水は南の地平線へ落ちていき、「南の魚座」の魚の口に流れこんでいます。その魚の口に輝くのが、秋の星空でただ1つの一等星フォーマルハウトです。秋の夜空は明るい星がめっきり減ってさびしいものですが、この星が南の空にポツンと輝いているので、日本では「南の一つ星」「秋の一つ星」と呼ばれました。また中国では「北落師門」、西洋では「ロイヤルスター」と呼ばれ、昔から大切な星とされました。この一等星を目印に、北(上)にたどれば水瓶座は簡単に見つかります。

◆ギリシア神話では、トロイの王子ガニメデスはたいへん美しい少年でした。オリンポスの神殿では毎日のように宴会があって、神々の王ゼウスの娘がみんなの食事の世話をしていました。ところが彼女が結婚したために代わりの者を探すことになりました。ある日、天上から下界をながめていたゼウスが、トロイの国で羊の番をしているガニメデスを見つけました。さっそくゼウスはワシに変身して彼をさらってしまいます。となりの鷲座がゼウスの変身したワシです。それ以来、ガニメデスは水ガメで神々の給仕をすることになりました。この水ガメには英知の源となる酒が入っています。ゼウスは、息子をなくした両親をなぐさめるためにガニメデスを天に上げて星座にしたといわれています。

◆三ツ矢マークの右手に明るい球状星団M2があります。付近に明るい星がないので、条件が良ければ双眼鏡でもぼんやり見えます。その他にもこのあたりには土星状星雲NGC7009や惑星状星雲NGC7293などが見られます。


変身に失敗した森の神(山羊座)

1996-09-01 00:00:00 | 星空の案内

◆秋の夕方、南の空低く3等以下の暗い星々が、逆さまの三角形にならんでいます。これが秋の星座の一番手、山羊座です。この三角形はギリシアでは「天国の入口」と見られていました。やぎといっても実は射手座のケイロンと同じく不思議な姿をした想像上の生き物です。やぎのツノのところに光るアルゲディ(子やぎ)は肉眼で見える2重星で、4等と5等の星がならんで見えます。秋の空には山羊座のほかに水瓶座、南の魚座、魚座、くじら座など水に関係のある星座が数多く見られます。これは古代の昔、このあたりに太陽がやってきた時が雨期にあたり、川が氾濫したためといわれています。

◆ギリシア伝説では、森の神パーンは上半身は人間ですが下半身はやぎの姿で、頭にはやぎの耳とツノが生えていました。彼はいつもほら穴に住んでいましたが、陽気で歌や踊りが上手でした。ある日、ナイル川のほとりでオリンポスの神々の宴会が開かれました。パーンが葦笛を吹いて宴が盛り上がっているちょうどその時、百個の頭を持つ恐ろしい怪物テュホン(台風の語源)が現れ、宴会の場は大混乱。驚いた神々は、色々な動物に変身して逃げ去ります。パーンも魚に変身して水の中に逃げようとしたのですが、あわてていたので水につかった下半身は魚、水面に出ていた上半身はやぎという、何とも奇妙な姿になりました。この姿があまりにも面白かったので、神々が嫌がる彼を夜空に引っぱりあげて山羊座になったといわれています。