◆恒星間宇宙飛行はSFだけのお話ではなく、多くの科学者が真面目に研究しています。より速く、より光の速度に近づくために原子力ロケットや核パルスロケットが考えられてきました。最近ではレーザー推進ロケットが実験段階で、その他にも太陽光帆船、反物質(光子)ロケット、ラムジェットロケットなどが未来の宇宙船として有望です。
◆宇宙船の燃料には「反物質」が理想的です。わずか数キログラムの反物質は通常の物質と出会うだけで、地球規模の大爆発を起こして消滅(対消滅)します。反物質はいかにもSFの作り物と思われますが本当にあります。150億年ほど前、生まれたばかりの宇宙は物質と反物質で満ちていましたが、やがてお互いに衝突して光になり消滅しました。この時、物質のほうが反物質よりわずかに多かったため、消滅せずに残った物質(正物質)が私たちの物質世界を作ったと考えられています。
◆この反物質は核エネルギーの千倍もあるので究極の宇宙船が作れます。これが完成すれば、太陽系に一番近い恒星までわずか数十年です。スタートレックのエンタープライズ号や不思議の海のナディアのノーチラス号には反物質エンジンが使われていますし、新世紀エヴァンゲリオン(六)の陽電子砲は反物質の武器です。
◆反物質は地球に降り注ぐ宇宙線の中で発見されました。そして、数年前には人工衛星が銀河系の中心に発生源を観測しています。しかし、宇宙全体ではその量はほんのわずか。「なぜこの宇宙は物質だけからできているのか?」 この謎にせまるため、99年4月に日本とアメリカで人工的に作った反物質と物質を衝突させる実験が始まります。これからは反物質をめぐって日米間の競争が注目されそうです。