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ソフトウェア開発したい日記

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EDXにおける諸問題(スペクトルピーク)に関するお勉強

2010年05月05日 20時22分19秒 | 科学
EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)を使っていて、
ふと疑問に思ったことや、使うにあたり気をつけることなどについての勉強。
(に関するメモ)

今回はスペクトルピークの中で、よく見るESCピーク、Sumピークについて。

ESCピーク(エスケープピーク)
ESCピーク(エスケープピーク)は、検出器のSiを励起するのに
蛍光X線のエネルギーが使われたために、
蛍光X線のピーク位置に対してSiのKα線のエネルギー1.74 keVだけ
低いエネルギー位置に出現するもの。

本にはこんな風にありました。これは納得。
でも、走査電子顕微鏡基本用語集にはこんなこと書いてありました。


『EDSの場合、入射したX線により、検出器のSiが励起され、
本来の特性X線ピークの計数が減ると同時に、
SiのX線エネルギー(1.74keV)に相当する低いエネルギー位置に
ゴーストピークが現れる現象』 (引用:weblio 辞書)

この文からだと、入射する連続X線によってSiが励起され、
スペクトルの1.74 keVの位置にピークが出現するみたいに読めてしまう。
実際にそういうったスペクトルが出現する可能性も十分にあるけど、
エスケープピークってのは結構いろんな位置に出現するから
なんかちょっと違う気がする。けど読み違えてるだけで合ってる気もする・・。

あとぜんぜん関係無いけど、エスケープピークって言いにくいなぁ。
何度も何度も噛んだ記憶があります。
特に「エスペーク・・」「エスペープ・・」って言うことが多い。


Sumピーク(サムピーク)
Sumピーク(サムピーク)は、検出器が2つの光子を同時に計数した際に出現する。
高濃度の試料を測定するときに起こりやすく、
2個の光子のエネルギーの和の位置にピークが出現する。
Kα×2の位置だけでなく、Kα+Kβの位置などにも注意が必要。

辞書にも同じようなことが書かれていました。
これはわかりやすいです。
半導体検出器(SSD)では、信号処理時間より小さな時間間隔で
2つのX線が入射すると、和に相当するパルスを生じちゃうんですね。

エスケープピークもサムピークも、出現する位置は決まっているため
通常はソフトウェアで除去処理がされるようで。


とりあえず今日はこの辺で、今度はもうちょっと詳しく&
よく耳にする「サテライトピーク」についても。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
エスケープピークとサムピーク (Kuwata)
2010-05-10 18:35:14
ネットにあるエスケープピークの説明には誤っているものが多くあります。
Si検出素子にX線の光子が入射すると、光電効果によって光電子が生じます。光電子は光子のエネルギーをもらい、Si結晶格子中を走行しながらSi特性X線、オージェ電子を発して次第にエネルギーを失います。それらの相互作用の結果、Si結晶がイオン化されて電子・正孔対を生じ、生じた電荷が入射光子のエネルギーに比例することから信号処理されスペクトルとなります。相互作用によって生じたものがすべてイオン化に使用されれば良いのですが、生じたSiX線光子の透過距離はオージェ電子よりも一桁大きいので、ある確率(1%程度)で結晶外へ飛び出てしまうため、その光子のエネルギー相当分低いエネルギーが約1%の確率で計測されます。それがエスケープピークです。
サムピークも記述が正確ではありません。
EDSは信号処理系の他に、X線光子の入射時間管理を行う信号処理系より時定数の短い検出系を持っています。信号処理時間中に複数の信号が入射したものはパイルアップ信号として除去されますが、検出系の時間分解能よりも短い間隔で入射した信号は一つの正常信号としてみなされますので入射した二つの信号を加算した位置にスペクトルとして表示されるものです。
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おぉ! (kano08)
2010-05-11 21:12:38
コメント&ご指摘どうもありがとうございます。

ものすごく丁寧でわかりやすかったです!
モヤモヤとした部分がほぼ全てスッと解消された気分です。

今度は理論を実験的に検証してみたくなってきました。
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有機ー無機相互作用 (ラマン分光法)
2023-03-05 05:52:39
プロテリアルの某博士の放射光を使って解明したCCSCモデルはトライボロジー関係で話題になっているようですが、オープンイノベーションの情報知りません?
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ハイブリッド理論 (グローバルサムライ)
2024-07-26 16:59:22
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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ベアリング潤滑機素設計の基礎 (鉄鋼材料エンジニア)
2024-10-24 16:37:40
「材料物理数学再武装」なつかしいですね。トライボロジーにおけるペトロフ則とクーロン則を関数接合論でつなげてストライベック曲線を作成する場合、関数の交点近傍でなくても繋げることができる関数としてAI技術の基礎となるシグモイド関数が出てくるあたりがとても印象的でした。
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CAEの基礎準備も (特殊鋼BtoB関係)
2024-10-24 16:40:57
私なんかは特殊鋼の熱処理の焼入れにおけるマルテンサイト変態の際
重要となる焼入れ性評価に用いるTTT曲線の均一核生成モデルでの方程式の解析をPTCのMathCADで行い、熱力学と速度論の関数接合論による結果と理論式と比べn=2~3あたりが精度的にもよいとしたところなんかがとても参考になりましたね。
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ものづくりに大切なもの (品質管理関係)
2024-10-24 16:44:04
私の場合「材料物理数学再武装」を読んだのが非正規分布系の確率密度関数に興味を持ったからだ。品質工学かんけいの怪しげなサイトで「ドミノ理論」なる政治的なにおいのぷんぷんする内容が大体的に語られていたころだった。破壊力学的な確率密度関数がそれにあたるが、ワイブル関数も一つの近似形態だという認識だったのは感動した。あと等確率の原理から微分方程式により正規分布を導出あたりも新鮮だった記憶があります。
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今年のノーベル賞 (製鉄機械技術者)
2024-10-24 16:46:08
日経クロステックの記事に今年のノーベル賞は「「AIの父」ヒントン氏にノーベル賞、深層学習(ディープラーニング)の基礎を築いた業績をまとめ読み」と題して紹介されていましたが、物理学賞、化学賞ともにAIがらみあったんですね。しかしながらブラックボックス問題の解明には至っていないようです。
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