台風の進路にひやひやしながら、
8月最後の着物に袖を通した。

秋の気配などみじんも感じさせないコーデ。
どうしても、この麻の帯を締めたくて。
麻といえば盛夏用だが、芯がしっかり入って透けない帯は
たとえ麻でも暑い、暑い。
今日まで出番がなかった…。

銀座でいくつか用事を済ませ…向かったのは帝劇ビル内にある
出光美術館。
何百年経ってもつるりとした色白美人が、少しお高くとまった風に
並んでいる。
それもそのはず、この企画は「観賞陶器」-実用ではなく飾られ愛でられた作品の展示なのだ。
展示は大きく「官」と「民」に分かれる(何だか政治っぽい)。
絵葉書はどちらも「官」で、右が明(永楽)時代の景徳鎮官窯で創られた皿、
左は清時代のやはり景徳鎮官窯で創られた瓶。
2つの時代には約300年の開きがある。
明時代のお魚も十分精緻だけど、
清になると、色も絵付けの技術も多彩になり、「超絶技巧」というキャッチがぴったり。
一方、「民」の方も時代が下るにつれ、創造性豊かな作品が増え、
明時代後期には、「官」からの注文を受けるまでになったとか。
でも、柄の感じや全体のフォルムはやっぱり奔放というか、あまり「きっちり」している
感じはせず(「官」を観た後なので余計にそう感じたのかも)、
美しさを求めるというよりは、陶磁器そのものの表現の可能性を、
割と自由に探っていたのではないか、と作品を観ながら思った。
なお、ちょっと興味があったので、
明(永楽)時代(1403-24年)、世界はどうなっていたのかを少しだけ調べて
…と思ったら、今はウィキペディアで簡単にわかるんだ! いい時代
日本-室町時代中期。割と安定しているころ。でも15世紀終わりには戦国時代に突入!
ヨーロッパ-(東)ローマ帝国滅亡寸前。1450年以降は大航海時代に突入!
日本が戦国時代の幕を開けたころ、コロンブスがアメリカ大陸到達!
アメリカ-…というわけで、15世紀終わりにコロンブスに発見される。
アステカ、インカ文明が栄えていたらしい。
室町時代は、公家文化と武家文化が共存、融合して豊かな多様性を持ち、
日本文化の基礎になったとも言われているようだし、
中国は明が一応、安定していて、この展示のような美しい文化が生まれ清へと引き継がれたし、
ヨーロッパは、小国同士の小競り合いはあったものの、権力者が芸術を護ってくれたイタリアで
ルネサンスが花開いたし
当然といえばそうだけど、今、こうして歴史を語る美術品たちは、
平和あってこその遺産といっていいだろう。
…21世紀の今、日本で産声をあげた“美術品”は、
果たして600年後の人たちに観てもらえるのだろうか。
↓ 9月には山種美術館でこのような展示も開かれるそうです。
