奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

今 語れること

2012-05-29 | 心詩~こころうた・己
鬱病となって ようやく
自分がどれだけ
愚かな生き方をしてきたのか
気付くことができた

わずかな時給を得るために
望みもしない職業を選択し
仕事にも人にも適応できず
さまざまな職場を転々とした

そのあげく
「捨てる神あれば拾う神もある」と
感謝すらした雇い主に
心をズタズタにされ
生ゴミのように捨てられた
すべては 人を見抜けなかった
私の落ち度


だが その経験がなければ
今でも同じことを繰り返し
将来を思い描くこともなく
ただ歳を取っていくだけだっただろうと
今は そう確信できる

「わが社を選んだ理由は?」
そう問われて
「お金を稼ぐために決まっている
 入れれば どこだっていい」
そんな言葉を飲み込み
マニュアルどおりの
誰にでも見抜かれるような嘘を付く

こんな生き方ではだめなのだと
皮肉にも 私を再起不能に陥れた
パワハラ上司が気付かせてくれたのだ


鬱病は 負の結果を
もたらしただけではなかった
大怪我をして 身に染みて学ぶことは
きっと どれだけ時間が経とうとも
決して薄れていくことはないだろう

どん底まで落ちてしまったら
あとは 這い上がるしかない
恨みの感情には
もう とらわれないことにした
そこに立ち止まっていては
鬱病以前の 愚かな自分のままだ

「二度と過去の自分には戻らない」
「どんなに苦しくても 同じ轍は踏まない」
そう決心した あの日を忘れずに
新しい目標を定めた
その心が折れないように

今も 辛くて しんどくて
出口なんて どこにも見えないけれど
一歩前に進めた自分に誇りを持って
残りの人生を 大切に生きていきたい

抗えども

2012-05-14 | 心詩~こころうた・己
これは いったい
いかなる試練か
どこまでも続く
逃れられない呪縛

この体を この心を
がんじがらめにして
精神を崩壊させようと
企むものの仕業のように

まんまと罠に嵌った私を
どこかであざ笑う声が聞こえる
ずぶずぶと泥の中に引きずり込み
陰湿な笑みを浮かべる輩(やから)たちの


それは いったい
いかなる者の一存か
人の行く末を
決定する物差しとは

魂に刻まれた
運命という名の遺伝子を
人は どうすることもできないのか

どんなに足掻こうと
すべては淘汰され
与えられた運命を
なぞっているに過ぎないのか


己の努力で補えない人生なら
何を夢見て 何を信じればいい

所詮 決められた運命ならば
こんな茶番のような人生など
最初から なくても良かった


この人生の
意味を見い出せない

愛・絆

2012-05-11 | 心詩~こころうた・己
愛とか 絆とか
ぜんぶ作り事のように
テレビ画面の向こうで
体温も 感触もなく
ただ 視野を横切っていく

愛とか 絆とか
ぜんぶ嘘臭くて
独りきりの部屋で
この乾いた心は
ちりちりと苛立つ


人の善を 信じられなくなった
人の善に 期待できなくなった
それを信じさせてくれるような
人生ではなかったのだから

なぜ 愛を得るものと
愛に飢えるものがいるのか
愛することも 愛されることも
叶わない運命があるのか

すべてを失っても
愛が残ったものに
神様は微笑むのだろうか

すべてに絶望しても
愛を信じられるものに
未来は訪れるのだろうか


愛とか 絆とか
本当はとても眩しくて
本当はとても憧れて

この手に触れたくて
この手で繋ぎたくて

それでも
同じ結末しか見えなくて
手を伸ばすことに
臆病になる

旅の途中

2012-05-09 | 詩詠~うたうたい
遠回りして
また ここへ
戻ってきた

心変わりではなく
旅だったんだ

人は同じ場所で
立ち止まってはいられないだろう


旅の途中で
私はいくつの新しい
出会いをしたのだろう

さまざまな価値観や
数々のぶつかり合いや
落ち込み 立ち止まった時も


新しい傷が また
私を新しくしていく

新しい優しさもまた
私を変えただろう

やがて繋がりゆく
人と人との縁(えにし)の中で
また ここを懐かしみ
ふと帰ってもいいかな




近道したくて
それでも いつも
回り道ばかり

でも それは
私が進むべき道

人は楽な方ばかり
歩いてはいけないのだから


旅の途中で
私はいくつの新しい
格言を得たのだろう

なりたい自分になるために
理想の世界を思い描くために
悩み 唇を噛んだ時も


新しい道が また
私の前に拓かれていく

新しい道連れもまた
私を強くするだろう

やがて別れゆく
人と人との縁の中で
いつかまた かならず
ここへ帰ってくるから

家族を愛するということ

2012-05-05 | 心詩~こころうた・己
人の温もりが愛ならば
私は誰の温もりを感じて
生きてきただろう

人の優しさが愛ならば
私は誰に優しくしながら
生きてこれただろう


当たり前のように
そこに存在している
家族というもの
私の居場所

愛されている自覚もなく
愛しているかと自問もせず
ただ ただ
同じ時を過ごしている


過干渉の母親と
無関心な父親
どちらも私の
反面教師でしかないが

疎ましく思える時も
憎らしく思える時も
次の朝になれば
すべてがリセットされて
また くだらない会話に
声を上げて笑っている


家族の愛は腐れ縁
目には見えない強固な糸で
幾重にも紡がれた 最強の絆

切りたくても
切りたくても
なぜか愛しさがすり寄って

失いたくない
失いたくない
心の中で密かに唱えている


それが家族の愛ならば
私は何も気付かずに
生きてきたのだろうか

それが家族の愛ならば
私はちゃんと
愛せてはいないのだろうか

潜在する病巣

2012-05-05 | 心詩~こころうた・己
どんなに傷付けられても
人を傷付けない
どんなに踏みにじられても
自分自身を貶めない

それだけを誇りに
自尊心を保ってきた


底辺で生きる人間は
どんなに望んでも
這い上がることはできない

登りつめる人間は
どんな手段を使おうと
罰せられもしない

それが 人間世界の掟なのか
それが 人間社会の縮図なのか


歪んだ世界の中で
どれだけ自分を
正常に保てるだろう

ハイエナの餌食となり
精神を食い尽くされても
皮一枚で繋がれた首は
もがきながら息をする

殺してくれと叫ぶ脳に
鼓動は乱され
気力尽き果てた五体は
じわじわと力を失ってゆく


自尊心を保とうとする心が
己自身をゆるやかに蝕む

その浸食を自覚しながら
それでも最後まで
「自分」であり続けることしかできない

もしも風が吹かなければ

2012-05-02 | 詩詠~うたうたい
もしも風が吹かなければ
今日のこの悲しみを消し去るすべを
ひとつ失うことになるだろう

もしも風が吹かなければ
澱んだこの世界を浄化するすべが
ひとつ失われることになるだろう


時に優しく 時に荒々しく
すべてのものを撫でてゆく
どこから生まれ いずこへと吹く

地球の上を幾度もめぐり
人の生き死にや
世界の移り変わりを
見つめてきたのか


そんな大きなものの恩恵を受け
私は 今日の些細な感情を
大空へと吹き飛ばす

今はいずこの空をめぐり
その大きな手で
誰の心を癒すのか


もしも風が吹かなければ
明日の朝 窓を開ける楽しみが
ひとつ無くなってしまうことになるだろう

もしも風が吹かなければ
あの空を超えて どこへでも行けるのだと
気付くすべをひとつ 失うことになるだろう