じいばあカフェ

信州の高原の町富士見町:経験豊富なじいちゃん・ばあちゃんのお話を
聞き書きした記録です
ほぼ一ヶ月に一回の更新です

集落の中の地名

2005-06-06 09:36:23 | Weblog
 (かまなりくぼ)
 「おらっと、言い伝えで聞いてるだけだが・・・。 そうだねえ。 にしっぱらのお墓のところを上がっていくと、ちょっとしたくぼったみがある。 そのくぼったみのあたりを、“かまなりくぼ“と言っとる。 あんまり深い沢じゃないけんど。 なに、”かまなりくぼ“の由来かい。そのへんは、冬に西風の強いとこでさあ、その風が林の木をヒューヒューと鳴らしていたさ。その音が、ご飯が煮え立って釜とふたの間を蒸気が吹き立つじゃん、そのヒューヒューっていう音とおんなじだから、“かまなりくぼ”って名づけたんじゃないかと思うがの。」

(次から次へと)
 葛窪の平出さんの口からは、次から次へと、集落の中の小さな地名が出てきた。 「“くらいし”ちゅうところは、お蔵のような大きい石がたいへんあるところでな。うちのたんぼのとこなんざぁ、トラックにも載らないような石がごろごろしてたから、そういう風につけたかなと思うし、“いしはら”は、今は基盤整備できれいになっとるけど、昔は石だらけで、水が縫って流れるような、川原みたいなとこだったさ。 そのそばには、“だいろくてん”ちゅうとこがあるな。ここは、どうろくじんの親戚の神様のだいろくてんという神様が祭ってあったところで、そこか
らつけたと思うな。 村のみんなが知っとる場所もあるが、うちだら、うちだけの衆がそう呼んだところもある。“だいろくてん”はうちの衆でないとわからんら。 葛窪の中だけでも、“しゅうとだい“ ”ひがしっぱら“ ”めえだ“ ”ごべっとうばら“ ”むこうぞり“ ”きつねくぼ“ ”とのさまだいもん“ ”にしっぱら“ ”とんがりいし“ ”いずみさき“ ”からぎつけ“ ”よつうね”
”ふきがはら“ ・・・まだまだある。 今の言葉なら、あざ字ちゅうことだと思うが、一口に言って場所がわかるってこんだ。」

 (“うまふせば”と“うますてば”)
 「これは場所の名前とは違うかもしれんが、“うまふせば”といって、冬中小屋にこもっていた馬が、春先カッカとするもんで、首だろうと思うけど、管かなんか差し込んで、どうやってか血を抜くことをした場所があった。そのそばには、“うますてば”といって、死んだ馬なんぞを、穴を掘って弔った場所もある。今だって、犬やら死んだら、埋めてもいいだよ。そのあたりには、旅から来て、なくなった衆を弔う場所もあったし、“のちざんぼち”というのもあったな。」  

 こういった小さな地名は、野良仕事や日々の暮らしと密接にかかわりながら、生まれてきたものだと思う。平出さんによれば、地名を聞いてどこだかわかるのは、70代以上の人たちだけになってしまったという。昔の人たちが、一つ一つにいろんな思いを込めて名づけた小さな地名たち。何とか残していく事は出来ないものだろうか。


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