■第２回フェイスブック日曜句会入賞発表■

■入賞発表/2011年10月30日■

【最優秀】
★秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花
秋の天に高く伸びてゆくものを読み手はいろいろ想像する。鉄塔であったり、高層ビルであったり、聳える木であったり。秋天にある飛行機雲も。秋麗の日差し、空気、まさに「秋」がよく表現されている。（高橋正子）

【高橋信之特選/７句】
★機首上げて旅の始まり鰯雲/藤田洋子
今日の当地もそうでしたが、穏やかな秋晴れの空に飛行機で旅立ちとはとても心地よく軽快な喜びです。（桑本栄太郎）

★椎の実のほのかな甘み噛んで見る/河野啓一
子供の頃炒って食べた味が思い出されます。しんなりとした白い実の仄かな甘味です。椎の実を手に思わず噛んでみたくなるお気持ちが伝わってまいります。（後藤 あゆみ）

★結納を終え秋光の庭へ出る/安藤智久
すがすがしい句。秋光の透明さと眩しさ、新しい人生へのけじめと希望と決意、そうしたものがきりっと一句の中に納まり響きあっています。（多田 有花）
結納の席は堅苦しく緊張されたと思います。恙なく終わってほっとなさりお庭に出られたら秋の陽が光っていたと言ういい句ですね。（迫田 和代）　　

★その赤き林檎まぶしみつつ選りぬ/小川和子
「その」は、みんなの知っている林檎の「その」赤さのこと。その林檎の赤さを、ことに美しいと思いながら選んだ幸せなひととき。新鮮な林檎の赤が眩しい。（高橋正子）

★秋冷の朝すっきりと赤白帽/迫田和代
赤い帽子と白い帽子の児童か園児であろう。秋冷の朝は、とくに赤白の色の対比が露けく、鮮やか。それを被る子どもの姿もくっりきと浮かぶ。（高橋正子）

★仏器磨く窓辺明るく秋日射す/黒谷光子
★秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花

【高橋正子特選/７句】
★仏器磨く窓辺明るく秋日射す/黒谷光子
秋の日射しが麗らかに窓辺に入る。そこへ仏器を持ち出して、丁寧に磨くと秋の日射しに輝く。秋の光に包まれた、穏やかな世界が生まれている。（高橋正子）

★入りくる霧閉じ込めて列車発つ/津本けい
霧の深い朝であろうか。濃い霧が列車の中にまで入り込む。その霧も閉じ込めたまま列車が発車する。幻想的な霧の風景が映画のシーンのようだ。（高橋正子）
霧深い駅に停まる列車。ドアから霧が入りきて、そのまま​閉じ込め出発する。霧と同席する車中は、しっとりと幽玄でしょう。次第に見えなくなり、次の駅でまた新しい空気と入れ替わってゆきます。（川名ますみ）

★コスモスの故郷は山ばかりなり/足立 弘
コスモスが咲く故郷は、言ってみれば、「山ばかり」。山ばかりの故郷に咲くコスモスへのいとおしさが、素直に詠まれている。（高橋正子）

★黄昏の空まだ広き鱗雲/小西　宏
鱗雲が広がって、暮れ切らない黄昏の空はどこまで続くのだろうか。黄昏が、よけいに遥かを思いみさせてくれる。（高橋正子）

★新薬を滑らすコップの秋の水/川名ますみ
透き通った秋の水に滑らせて飲めば、すっきりと良くなるような新薬と窺える。きりっと爽やかな気持ちが表現されている。（高橋正子）

★茶の花の蕊に夕陽の影生まる/佃　康水
茶の花に斜めから夕陽が射しこむと、蕊のひとつひとつに影が生まれる。茶の花を繊細に愛らしく表現した。（高橋正子）

★機首上げて旅の始まり鰯雲/藤田洋子
★秋天に伸びゆくものの数多あり/多田有花

【入選/１０句】
★柿紅葉おのが根元に吹き溜り/後藤あゆみ
柿の葉は朱、紅、黄の入り混じった独特の美しい色に紅葉して、その柿の葉が根元に集まり美しい色模様をあらわしている素敵な景ですね。（小口泰與）

★さざ波の小さく聞こえ月の浜/下地 鉄
月の夜の浜辺はさざ波の音も微かに聞こえ、月光に波も砂浜も耀いていることでしょう。おだやかで美しい海辺の光景です。（黒谷 光子）

★校門の桜紅葉にチャイムかな/桑本栄太郎
チャイムが鳴って下校時の校門。春には桜が爛漫と咲いていて、今は桜紅葉の色付きが。季節の流れと生徒たちの成長が思われます。（河野啓一）
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★行く秋や鈍行列車里山へ/小口泰與
秋も深まりどこかへ出かけたくなる句ですね。ゆっくり鈍行に揺られながらの旅先は里山の空気を浴びにです。（祝 恵子）
里山を行く鈍行はきれいな紅葉を見せながら、ゆっくり走って乗っているだけで楽しめるように思います。客は少なく侘しさもあり、そこが又いいところです。秋の終わりの風情が素敵です。（津本 けい）

★丘の辺の風に吹かれて野紺菊/河野啓一
風のさやぎに可憐な野紺菊の色波が優しく、丘に佇む作者の清爽の感が快く伝わります。（藤田 洋子）

★鴨群れる夕陽眩しき輪の中に/黒谷光子　　　　　　　​　　　　
日に日に鴨が増えて来て観察に行くのが楽しみで​す。夕陽が宝石の様にきらきら耀いてその中で波に任せて群れて居る鴨はもうすっかり安心して住民になりきって居る様に見えて嬉しくなります。（佃 康水）
夕陽の眩しさが自然の大きな情景を、鴨の群れが作者の視線の動きを捉えておられ、目に浮かぶような素敵な景色がうかがえました。（高橋秀之）

★秋果みないろ深まりて店頭へ/小川和子
りんご、柿、ブドウといった秋の果物がいろいろ店頭に並びます。完熟のさまを「いろ深まりて」と表現され、収穫と味覚の喜びが伝わってきます。（多田有花）

★一面の星空高し静かな夜/高橋秀之
お昼の空が高くなっておれば、同時に夜空も高くなっていますね。深まる秋の澄んだ夜空、そこに輝く星たち、清浄な空気に満たされます。（多田有花）

★時鳥草やっと晴れたる空に浮く/祝恵子
時鳥草はあの独得の模様で目を引く花です。雨模様のどんよりした空が続いた後に現れた秋の晴天。そこに映える時鳥草です。（多田有花）

★野良静か鍬の柄ひとつ赤とんぼ/古田敬二
農作業の途中で一休みされているところでしょか。使われていた鍬の柄に赤とんぼが来て止まっています。静かなのは野良であり、詠者の心境でもあるのでしょう。（多田有花）

■選者詠/高橋信之
★白椿見し眼の仰ぐ空青き
★わが歩けば秋青あおとして高し
★秋川の己が重さを引き流る

■選者詠/高橋正子
★うす桃の菊の日差しも写し撮る
薄桃色の確たる菊の花。しかし詠者はそれに似合う麗かな​秋の日差しも写し撮られた。それによって、秋の空気のすべてが語られ、読者の心に響き届く。（小西宏）

★茶の花に日はふっくりとあたたかし
★サッカーの練習熱帯ぶ野菊咲き

■互選高点句
●最高点２句(５点)
★機首上げて旅の始まり鰯雲/藤田洋子
★結納を終え秋光の庭へ出る/安藤智久