フェイスブック句会

主宰・選者:高橋正子
花冠発行所

■第5回フェイスブック日曜句会入賞発表■

2011-11-20 09:51:29 | 俳句
■入賞発表/2011年11月20日■

【最優秀】
★山茶花の長き季節の始まりぬ/多田有花
抒情が削ぎ落とされ、大変シンプルで一筋通った句である。山茶花は早いものは、十月ごろから咲く。本格的に咲き始めるのは、立冬を過ぎてからであろうが、冬の間中の「長き季節」を咲き続ける。今その咲き始めのとき、花あって身辺楽しい季節が過ごせるであろう。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★落ち葉踏み足裏よろこぶ音を聞く/黒谷光子
落葉を踏めば乾いたシャクッという心地良い音。足にはフカッと沈み込む感じが嬉しく、子供のようにどんどん歩く作者の弾む気持ちが伝わります。(津本けい)

★山茶花の長き季節の始まりぬ/多田有花         ​ 
山茶花の花期は長い。初冬から白や、うす紅色、紅色の花を咲かせて目を楽しませてくれます。今年もいよいよ冬が来たとの思いが実感として伝わってきます。(小川和子)

★山茶花や傘弾ませて子が来るよ/後藤あゆみ
お孫さんを待っているのでしょうか、垣根の山茶花に触れながら傘弾ませて近づくのを優し見ています。(祝 恵子)

★干し柿へ晴れの約束朝陽さす/古田敬二     ​     
干し柿に朝日がさしてくると柿の実が輝いてきます。今日も明るくからりとした晴れを予感させてくれます。「晴れの約束」という希望を感じさせてくれる言葉がとても素晴らしいと思いました。(後藤 あゆみ)

★丘登る落葉いろいろ踏み鳴らし/藤田洋子
私の好きな句。童心があって、楽しい句だ。芭蕉の「俳諧は三尺の童にさせよ。初心の句こそたのもしけれ」という教えを思いだす。芭蕉は、巧者の病に触れ、私意を離れろと教えた。(高橋信之)

★クリスマス近しハモニカ吹いてみる/河野啓一
昔懐かしい句だ。そして洒落た句だ。カタカナが効いた。(高橋信之)

★木枯や房総と富士一望に/小西 宏
木枯しがひと吹きして去ったあと、澄んだ冬空の下に房総、富士が見渡せました。広々とした景色の広がりが想像でき、気持ちのよい御句です。(多田有花)

★咳こぼし青年ふたり歩み去る/高橋正子


【高橋正子特選/8句】
★山茶花の長き季節の始まりぬ/多田有花
抒情が削ぎ落とされ、大変シンプルで一筋通った句である。山茶花は早いものは、十月ごろから咲く。本格的に咲き始めるのは、立冬を過ぎてからであろうが、冬の間中の「長き季節」を咲き続ける。今その咲き始めのとき、花あって身辺楽しい季節が過ごせるであろう。(高橋正子)

★きらきらと時雨の後の京ひかる/津本けい
京都は、時雨が似合う。北山時雨という言葉もある。降っては止み、また降る雨に、「京ひかる」と街全体が捉えられ、雅な雰囲気を醸している。(高橋正子)

★きらきらと浅間の星や冬に入る/小口泰與
「浅間」が効いている。冬に入って浅間の夜空がきりっと澄むと、星が神秘的なまでにきらめく。山国の羨しい星空である。(高橋正子)

★冬薔薇の白きに仰ぐ観覧車/小西 宏
手前に白薔薇を描き、その向うに大円の観覧車を描いたグラフィックアートのような印象だ。新しくて、どこかにノスタルジーを感じさせるポスターのような印象でもある。(高橋正子)

★丘登る落葉いろいろ踏み鳴らし/藤田洋子
落葉を踏んで丘を登る晴れ晴れとした楽しさがよく表現されている。「落葉いろいろ」に、落葉の様々な色、また音はもちろん、落葉を落としたいろんな木が想像できて楽しい。(高橋正子)

★冬晴れの海の輝きしらす漁/安藤智久
晴れた冬の空、海がきらきらと輝いています。透き通るシラスも輝いています。大漁にわく海辺の景が明るく詠まれています。(後藤あゆみ)

★牡蠣船の灯揺れて日が暮れる/迫田和代
日暮れの海は物悲しいものですが、そこに牡蠣船の灯が見えると気持ちがあたたかくなります。この時季は毎日牡蠣船の灯とともに日が暮れて、心にも燈が灯ります。(後藤あゆみ)

★お茶の花金色のしべ濡れており/古田敬二
美しい写生句です。お茶の花のしべはそれだけでも十分きれいなものですが、雨に濡れてしっとりとした情感が生まれます。(後藤あゆみ)

【入選/10句】
★大いなる冬河国境へと流る/小川和子
島国の日本では体感することのない国境。いろんな国境がありますが、自然の大河は国と国の境とは関係なく流れ行きます。スケールの大きな句と感じます。(高橋 秀之)  

★葉を落とすほどに色づく花梨の実/桑本栄太郎
葉を落としながらだんだんと黄色く熟す花梨の実、その明るい色と豊かな香りに季節の喜びを感じます。(藤田 洋子)
       ​       
★黙々と手鍵違わず牡蠣打ち女   ​           
単純作業と雖も、長い間同じ仕事​を一生懸命続ければ、見ていても感動を覚えるほどの職人芸となります。作者の牡蠣の名産地ならではの鋭い観察眼から、働く人の素晴らしい光景が巧みに詠われた。(桑本栄太郎)

★紅葉の葉裏透かして青空へ/足立 弘
紅葉の葉を透かして初冬の青空が見える。陽の光も一緒になって、美しい色彩が嬉しい季節ですね。 (河野啓一)

★冬空に触れて沖ゆく給油船/佃 康水
沖合のタンカーが海と空の境目を静かに進んでいる茫漠とした景が目に浮かびます。「冬空に触れて」がユニークな描写かと思いました。 (河野啓一)

★朝月の海の向こうの村一つ/下地 鉄
初冬の静かな海辺の景ですが、沖縄の四季は緩やかです。冬の海は白っぽくなって来ているのだろうか、島の方々は皆三線を弾かれるのだろうか、といつも勝手に想像して楽しませて頂いています。(津本けい)

★夜が明けて箪笥の奥から冬帽子/高橋秀之
大阪も少し寒い日があり、明日は冬帽子を出そうと夜中に思われたのでしょうか。早速被ってみて温かさを実感されたことでしょう。(津本けい)

★枕辺にどんぐり今朝は割れて在り/川名ますみ
どんぐりを眺めては楽しんでいると、ある日割れ目が出来てがっかりすることがあります。「そろそろ湿った土に返して。」という意思表示でしょうか。どんぐりは命のカプセルですね。(津本けい)

★冬浅しムカゴ飯の湯気あがる/祝恵子
ムカゴは自然薯などの小粒な肉芽で、ご飯に炊き込むと独得の風味があります。お家で炊かれたのでしょうか。炊きたてのムカゴ飯、おいしそうです。(多田有花)

★寒拆の辻に透き居り高階に/桑本栄太郎
高層住宅の階にも響いてくる「火の用心」を呼びかける拍子木の音、都会化しても自治会などで自警されているのでしょう。(多田有花)


■選者詠/高橋信之
★明日がある炬燵出す日の喜びよ
炬燵を出す日。それは「そろそろ寒くなってきた」と感じると同時に「これから寒さが厳しくなる」と予想するとき​でもありましょう。明日の寒さを案ずるのは、明日があると信じるから。その喜びに奮い立ち、長い冬に備えます。(川名ますみ)

★自家製のパン焼きあがる十一月
少し寒くなってきた十一月。自家製のぱんがほかほかと焼き上がる楽しさ。小春日のひと時の風情を感じます。 (河野啓一)

★時雨に散ればユッカ路上に美しき

■選者詠/高橋正子
★うすら日にユッカの花の鈴が鳴る
剣状の葉から高く花芽を伸ばし咲くリュウゼツラン科のユッカ。「鈴が鳴る」の描写に釣鐘形の見事な花を思い浮かべます。初冬の薄日を纏い、気品のある勇壮なユッカの花が印象的です。(藤田洋子)

★咳こぼし青年ふたり歩み去る
★煙草吸う君やすでに冬に入る


■互選高点句
●最高点(9点)
★大いなる冬河国境へと流る/小川和子

●次点(8点)
★冬晴れの海の輝きしらす漁/安藤智久

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。

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19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コメント (河野啓一)
2011-11-20 11:23:00
★紅葉の葉裏透かして青空へ/足立 弘 
紅葉の葉を透かして初冬の青空が見える。陽の光も一緒になって、美しい色彩が嬉しい季節ですね。
★冬空に触れて沖ゆく給油船/佃 康水
沖合のタンカーが海と空の境目を静かに進んでいる茫漠とした景が目に浮かびます。「冬空に触れて」がユニークな描写かと思いました。
★自家製のパン焼きあがる十一月
少し寒くなってきた十一月。自家製のぱんがほかほかと焼き上がる楽しさ。小春日のひと時の風情を感じます。
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お礼 (河野啓一)
2011-11-20 11:37:45
高橋信之先生、正子先生
第5回フェイスブック句会を有り難うございました。何時もご厄介をおかけして相済みません。

「クリスマス近しハモニカ吹いてみる」を高橋信之特選/8句の中にお加えくださり、有難い句評も賜りまして心からお礼申し上げます。

同句に選を頂きました後藤あゆみさま、川名ますみさまにお礼申し上げます
また「冬霧の中に生駒を遠望す」に選を下さいました小川和子さまと安藤智久さま、どうも有り難うございました。
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お礼 (迫田和代)
2011-11-20 14:28:08
信之先生
正子先生
第5回フェイスブック日曜句会を開催くださってとても感謝しております。日曜日が、楽しみです。よい勉強になります。正子先生には 「牡蠣船」の句を特選にお選び二重の喜びで舞い上がっております。これからもご指導をお願い致します。

多田様 後藤様
お世話様です。良いことをなさっていると、感心しております。
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御礼 (小口泰與)
2011-11-20 14:34:31
高橋正子先生
「冬に入る」の句を特選8句の1句にお選び頂き、その上、正子先生には、素晴らしい句評を賜わり大変嬉しく感謝申し上げます。有難う御座います。
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コメント (後藤あゆみ)
2011-11-20 17:47:15
★冬晴れの海の輝きしらす漁/安藤智久 晴れた冬の空、海がきらきらと輝いています。透き通るシラスも輝いています。大漁にわく海辺の景が明るく詠まれています。

★牡蠣船の灯揺れて日が暮れる/迫田和代
日暮れの海は物悲しいものですが、そこに牡蠣船の灯が見えると気持ちがあたたかくなります。この時季は毎日牡蠣船の灯とともに日が暮れて、心にも燈が灯ります。

★お茶の花金色のしべ濡れており/古田敬二
美しい写生句です。お茶の花のしべはそれだけでも十分きれいなものですが、雨に濡れてしっとりとした情感が生まれます。

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お礼 (後藤あゆみ)
2011-11-20 17:55:08
信之先生、正子先生、第5回fb日曜句会を開催していただきありがとうございました。
信之先生の特選句に「山茶花や傘弾ませて子が来るよ」をお選びいただき、自分でも好きな句でしたので大変嬉しく御礼申し上げます。同句に選を頂きました藤田洋子様、選とコメントを頂きました祝恵子様、誠にありがとうございました。
「初冬の月円かなるエアポート」に多田有花様、安藤智久様、高橋秀之様、「流水に洗う冬菜の柔さかな」に迫田和代様、佃康水様、黒谷光子様、選を頂き大変励みになります。ありがとうございました。

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コメント (津本けい)
2011-11-20 18:49:02
★朝月の海の向こうの村一つ/下地 鉄
初冬の静かな海辺の景ですが、沖縄の四季は緩やかです。冬の海は白っぽくなって来ているのだろうか、島の方々は皆三線を弾かれるのだろうか、といつも勝手に想像して楽しませて頂いています。

★夜が明けて箪笥の奥から冬帽子/高橋秀之
大阪も少し寒い日があり、明日は冬帽子を出そうと夜中に思われたのでしょうか。早速被ってみて温かさを実感されたことでしょう。

★枕辺にどんぐり今朝は割れて在り/川名ますみ
どんぐりを眺めては楽しんでいると、ある日割れ目が出来てがっかりすることがあります。「そろそろ湿った土に返して。」という意思表示でしょうか。どんぐりは命のカプセルですね。
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お礼 (津本けい)
2011-11-20 18:56:25
信之先生、正子先生
第5回フェイスブック日曜句会を開催いただきまして有り難うございます。正子先生の特選の1句に「きらきらと時雨の後の京ひかる」をお選び下さって有り難うございました。また素晴しい句評を賜り嬉しく拝読させていただきました。今後ともご指導をよろしくお願い申し上げます。黒谷光子様には同句に貴重な選を頂き有り難うございました。
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お礼 (小西 宏)
2011-11-20 19:47:54
高橋信之先生
「木枯や房総と富士一望に」を【高橋信之特選/8句】にお選びくださり、たいへんありがとうございました。
高橋正子先生
「冬薔薇の白きに仰ぐ観覧車」を【高橋正子特選/8句】にお選びくださり、また、嬉しい句評をお添えくださったこと、深くお礼申し上げます。
迫田さま、佃さま、藤田さま、多田さま、津本さま
拙句に選を賜り、たいへん嬉しく、感謝申し上げます。
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お礼 (黒谷光子)
2011-11-20 20:06:14
信之先生、正子先生、第5回フェイスブック日曜句会を開催いただきまして、ありがとうございました。
信之先生には「落葉踏み足裏よろこぶ音を聞く」の句を先生の特選にお選びいただきまして有難うございました。
けい様、泰與様、康水様、栄太郎様、「落葉」の句をお選びいただきまして、ありがとうございました。
また、けい様には同句にうれしいコメントをいただきまして、有難うございました。
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