フェイスブック句会

主宰・選者:高橋正子
花冠発行所

■第9回(立春)フェイスブック句会入賞発表■

2012-02-04 21:07:37 | 俳句
■入賞発表/2012年2月4日■

【最優秀】
★雪原の鉄路陽に映え陽に交じる/黒谷光子
雪原に伸びる鉄路を想像するとこうだ。日が散らばる雪原に黒い鉄路が伸び、日に映え、陽に交じってしまうほど輝く。雪原が明るく、春も隣の感が強まる。(高橋正子)

★立春や光と翳と飛ぶ鳥と/矢野文彦
立春となると光がにわかに明るく感じられる。身辺にも光があり翳がある。空を見れば、自由に飛ぶ鳥も。光と翳と自由な鳥が立春の日に明るく詠まれた。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子
ピアノの鍵盤がすべて押されるのは、調律時くらいでしょうか。で​も、その弦がいちどきに「すべて鳴る」瞬間があります。ピアニス​トも、倍音を聴き、弾かない弦を共鳴させるべく心を砕きますから​、そのように響いたら嬉しいことでしょう。澄んだ陽と程よく乾い​た空気の内に、弦の全てを鳴らすピアノ。こよなく明るい立春です​。(川名ますみ)

★立春や光と翳と飛ぶ鳥と/矢野文彦
リズムがよく、春到来の喜びが伝わってまいります。(藤田裕子)

★風花や青空市で花を選る/祝恵子
「風花や青空」の自然があって、「花を選る」人たちの生活がある。いい風景だ。(高橋信之)

★山門の四角の向こう春の雪/古田敬二
「春の雪」を詠んで、「春」を捉えた。「山門の四角」と「春の雪」との対比がいいのだ。「山門の四角」の堅さに囲まれ、「春の雪」の柔らかさがいいのだ。(高橋信之)

★こんがりとチーズの焼き目春に入る/藤田裕子
明るい生活がある。今日の生活が明るくて、明日もきっと明るいことであろう。(高橋信之)

★鬼やらう子の部屋開ければ子の匂い/津本けい
鬼やらいに豆を撒くが、ほとんど入らない子の部屋にも豆を撒く。ふっと子の匂いがして、幼いころの鬼やらいを思い出されたのではあるまいか。(高橋正子)

★芽木なれば影すっきりと芝に置く/小川和子
芽木のときは、枝に葉もなく、枝の影がそのまま、すっきりと芝生に落ちている。「影すっきりと」が芽木の姿を、降り注ぐ日をよくあらわしている。(高橋正子)

【高橋正子特選/7句】
★風花や青空市で花を選る/祝恵子
青空市で花を選っていると、風花がちらちら舞う。花屋の花ではなく青空市に買う花に、また花を買う作者に風花が美しく添っている。(高橋正子)
晴天の空から降ってくる雪が風花。青空の明るい空の下、青空市で花を買うために選ぶ情景が鮮やかに想われます。青空市の措辞が素​晴らしく効果的で溢れる詩情を感じます。(桑本栄太郎)

★榛名富士むらさきに明けクロッカス/小口泰與
榛名山が紫色に明ける。雄大な山にも、小さなクロッカスが咲いて足元にも春が来ている。クロッカスも紫色であろうか。(高橋正子)

★朝日さし牡蠣小屋の音空高く/迫田和代
牡蠣小屋で牡蠣を揚げたり牡蠣打ちのための準備が朝早くから行われ、朝日が上がる頃は牡蠣打ちの人たちも出揃い愈々音も人も活気づき。小屋の中ではぱきぱきと作業が進んでいます。(佃 康水)

★明日もまた雪の予報や星仰ぐ/黒谷光子
雪の降る日が続き、明日もまた雪の予報が出ているものの、空を見上げれば、星が輝き、ひとときの安らぎをくれる。美しい句である。(高橋正子)

★青空の嶺の定かや春隣/桑本栄太郎
すっきりとした青空に嶺の姿が定かとなって、明るい春もそこまで来ている。「春隣」を空や嶺に感じるのは日本人の繊細な感覚であろう。(高橋正子)

★探梅や今朝ほころびぬ梅の花/多田有花
探梅にでかけたら、今朝ほころびたばかりの梅の花に出会った。さっぱりとした句で、梅の花のよさは、そのかぐわしい匂いも含めての清潔感にある。(高橋正子)

★雪原の鉄路陽に映え陽に交じる/黒谷光子


【入選/18句】
★雪積もる下にも流る春の水/河野啓一
まだまだ雪は厚く積もっているようですが、地面との境からは融けた水が滲み流れ出てきます。そこに希望の春を感じることができます。(小西 宏)

★石垣に日差す隙間や冬菫/佃 康水
やわらかに日が差し、温められた石垣の隙間にもう菫の花が顔を出している。一足先に目にすることのできた春の喜びに心躍ります。(小西 宏)

★水映る岸辺の草の春立ちぬ/藤田洋子
萌えはじめた岸辺の草、日の光にかがやく水の流れに、立春を迎えた喜びが伝わってきます。(小西 宏)

★梅蕾のふくらみ知らせる病む友に/松尾節子
梅の蕾が日に日にふくらみ、春の到来が間近いことをお友達に知らせる。早くよくなられるといいですね。(小西 宏)

★竹林の動けば寒の陽の動く/多田有花
風が吹き竹が揺れるとそれに連れて日差しの影も動きます。それが竹林ともなれば、林全体が動き太陽の日差しも揺れ動くように感じます。寒の陽も暖かく感じたことでしょう。(高橋秀之)
冬至を過ぎ春がまじかになると日脚が伸び、竹林の動きも太陽の日差しが明るさを増し、春がまじかに近づいているのが、御句のリズムから感じられます。(小口泰與)

★一日を雪にかまけて暮れにけり/黒谷光子
大変な大雪のせいで、雪かきが一日中を占めているのでしょう。お疲れでしょうね。(祝 恵子)

★川波のきらきら光り冬終わる/多田有花
本当に春は光が冬とはちがうと感じさせる。特に波がきらきらと云う表現で春を感じさせてくれます。(松尾節子)

★はなびらにはなびらの影冬の蘭/川名ますみ
冬には室咲きの蘭を飾ることが多い。暖房の効いた部屋ではそれが華やかによく咲き続ける。しかし窓辺に置いた蘭の花にふと侘しげな表情を感じるときがあるのも止むを得ないのかもしれない。「は​なびらにはなびらの影」が「冬の蘭」のそんな一面をよく映しだしている。(小西 宏)

★冬野菜白きものから鍋満たし/藤田裕子
鍋に「白きものから」入れる心配りに、他のとりどりの冬野菜までも目に浮かびます。栄養豊かな冬野菜の鍋に心も体もあたたかく満たされます。(藤田洋子)

★歳時記の「春」をひもどく明るさに/小川和子
大寒も終わりごろになると、気温は低くても光はもう春の兆しで満ち溢れています。その気配に思わず歳時記の「春」を開いて見る、その感覚におおいに共感いたします。(多田有花)

★湖や橇引く馬の脚太し/小口泰與
寒い湖畔を脚の太い農耕馬が、白い息を吐きながら橇を引く光景を風情豊かに詠まれ、馬の息使いや凍てつく空気まで伝わってきました。(津本けい)

★薄氷を押せば動くよ泡の玉/津本けい
薄とお読みになっていらっしゃるので屹度春ちかいのでし​ょう。薄氷とあるのに暖かな感じがします。魅力のある句ですね。(迫田和代)

★冬の雷犬を威して日本海/古賀一弘
冬の雷は低いところで稲妻を放ち、轟き、恐ろしげです。日本海は暗く鈍い色に揺れ、雪を飲み込んでいます。実はわたし、本当には見たことがないのですが、この句からリアルに情景を思い浮かべます。(小西 宏)

★冬木立透かして雲の白さかな/小西 宏
冬の透明感があって、俗なところがない、嬉しい俳句だ。「透かして」、「白さ」といった言葉の働きがいいのだ。ひろびろとした世界に誘い出してくれる。(高橋信之)
落葉樹の冬木立は今枝のみのまったく何もない姿で立っています。そこを透かして見える雲、その明るさが春を感じさせます。(多田有花)

★春近し卵を割れば黄身二つ/今村征一
この句の「主眼」は、下五の「黄身二つ」であるが、それが重くない。上五の季語「春近し」の働きがよく、俳句の良さを生かした。(高橋信之)
黄身が二つ、なんだかラッキーな、いいことがありそうなそんな予感を運んでくれます。春が近づいている、そのことだけでもうれしいのにダブルの黄身、さらにいいです。(多田有花)

★知らぬ木も花芽を張りぬ朝の空/川名ますみ
木々は芽吹きの準備を着々と整えています。名も知らない木にも春への胎動を感じられ、心晴れ晴れとされた様子が伝わってきます。(多田有花)

★北風が大阪港に波立てる/高橋秀之
「港に波立てる」北風に、寒風吹きすさぶ港の状景、港の寒冷な空気をより強く感じます。大阪港の厳しい北風を身をもって感じていらっしゃるのでしょう。 (藤田洋子)

★見渡せばみどり色なす麦畑/足立 弘
寒気や霜に耐えて伸び、冬枯れの中にみどりの芽が萌えるようになる麦畑。見渡すその美しいみどりに、おのずと心明るく季節の喜びを感じます。 (藤田洋子)

■選者詠/高橋信之
★天あおあお桃の蕾のふくらみに
まだ寒さの残る澄みきった青空のもと、桃の蕾のいのちの息吹に、春の訪れの喜びがあふれます。ふくらむ桃の蕾が初々しく、愛らしく、心和みほぐれます。 (藤田洋子)

★春が来て太鼓の叩く確かな音
★梅二輪寺苑に今日の華やぎを

■選者詠/高橋正子
★立春のピアノの弦のすべてが鳴る
好きな曲の最初の部分かクライマックスか。すべての弦が共鳴しているような響きである。それでなくともなんとなくうれしい春立つ日。ピアノの長調の響きが気持を更に浮き立たせてくれる。(古田敬二)

★立春の朝日に小さき鳥の声
★梅二輪咲いて誰もが覚めておれ


■互選高点句
●最高点(7点)
★立春のピアノの弦のすべてが鳴る/高橋正子

●次点(6点/同点2句)
★風花や青空市で花を選る/祝恵子
★朝日さし牡蠣小屋の音空高く/迫田和代

(集計/藤田洋子)

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。


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21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コメント (小西 宏)
2012-02-05 13:27:28
★冬の雷犬を威して日本海/古賀一弘
冬の雷は低いところで稲妻を放ち、轟き、恐ろしげです。日本海は暗く鈍い色に揺れ、雪を飲み込んでいます。実はわたし、本当には見たことがないのですが、この句からリアルに情景を思い浮かべます。

★雪積もる下にも流る春の水/河野啓一
まだまだ雪は厚く積もっているようですが、地面との境からは融けた水が滲み流れ出てきます。そこに希望の春を感じることができます。

★石垣に日差す隙間や冬菫/佃 康水
やわらかに日が差し、温められた石垣の隙間にもう菫の花が顔を出している。一足先に目にすることのできた春の喜びに心躍ります。

★水映る岸辺の草の春立ちぬ/藤田洋子
萌えはじめた岸辺の草、日の光にかがやく水の流れに、立春を迎えた喜びが伝わってきます。

★梅蕾のふくらみ知らせる病む友に/松尾節子
梅の蕾が日に日にふくらみ、春の到来が間近いことをお友達に知らせる。早くよくなられるといいですね。
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お礼 (迫田和代)
2012-02-05 14:18:24
信之先生
正子先生
立春フェイスブック句会を開催していただき有り難う御座いました。そのうえ正子先生の特選7句にお入れ戴き感激致しております。ますます俳句に魅せられます。何遍だって頭を下げたいです。

藤田 洋子様
お世話になり何時も感謝しております。
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コメント (多田有花)
2012-02-05 15:08:05
★知らぬ木も花芽を張りぬ朝の空/川名ますみ
木々は芽吹きの準備を着々と整えています。名も知らない木にも春への胎動を感じられ、
心晴れ晴れとされた様子が伝わってきます。

★春近し卵を割れば黄身二つ/今村征一
黄身が二つ、なんだかラッキーな、いいことがありそうなそんな予感を運んでくれます。
春が近づいている、そのことだけでもうれしいのにダブルの黄身、さらにいいです。

★冬木立透かして雲の白さかな/小西 宏
落葉樹の冬木立は今枝のみのまったく何もない姿で立っています。そこを透かして
見える雲、その明るさが春を感じさせます。
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御礼 (矢野文彦)
2012-02-05 16:31:43
高橋信之先生。正子先生。藤田洋子様。
立春句会の開催ありがとうございます。
「立春や光と翳と飛ぶ鳥と」を最優秀にお取り頂き、また信之先生特選にも加えて頂き、嬉しく御礼申し上げます。
藤田裕子様。同句にコメントありがとうございます。

フェイスブックに慣れませんで選句は失礼致しました。お詫び申し上げます。
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御礼 (小口泰與)
2012-02-05 17:38:20
高橋信之先生、正子先生
立春句会を開催して頂き有難う御座います。
正子先生には「クロッカス」の句を特選七句の一句にお選び頂き、素晴らしい句評を有難う御座います。
また、「橇」の句を入選十八句の一句にお選び頂き有難う御座います。
津本けい様には素敵なコメントを有難う御座います。
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お礼 (多田有花)
2012-02-05 18:37:20
信之先生、正子先生、フェイスブック立春句会を開催いただきありがとうございました。
洋子さま、いつも集計のお世話をいただき、まことにありがとうございます。

「探梅や今朝ほころびぬ梅の花」を正子先生特選7句にお選びいただき、けいさまには
選を頂戴し、ありがとうございます。
「竹林の動けば寒の陽の動く」を入選句にお選びいただき、秀之さま、泰與さまには貴重なコメントを、
宏さま、節子さま、裕子さまには選をいただき御礼申し上げます。

「川波のきらきら光り冬終わる」に節子さまのコメントを、康水さまには選をいただき、
ありがとうございました。

「山々に太鼓轟き鬼やらい」に栄太郎さまの選を、「冬​尽きぬ身を切る明るさの中に」へは
恵子さま、ますみさまの選をいただきました。ありがとうございました。
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御礼 (桑本栄太郎)
2012-02-05 20:24:29
高橋信之先生、正子先生
フェイスブック立春句会をご開催頂き、大変有難うございます。
藤田洋子様にはいつも集計の労をお取り頂き、大変有難うございます。
正子先生には「青空の嶺の定かや春隣の句を特選7句の1句にお選び頂き、素敵なコメントもお添え頂きまして大変有難うございます。
藤田洋子様、津本けい様には「自転車の轍交わる雪の橋」の句を、古田敬二様には「村役の農夫裃追儺の夜」の句に貴重なる選を頂戴しまして大変有難うございます。
皆々様大変有難うございました。
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お礼 (小西 宏)
2012-02-05 20:42:48
高橋信之先生
高橋正子先生
「冬木立透かして雲の白さかな」を【入選/18句】にお選び下さり、たいへんありがとうございました。
小口泰與さま
同句に選を賜りとても嬉しく、ありがたく思っております。
信之先生、多田有花さま
とても嬉しいお言葉をお送りくださり、勇気百倍です。これからも努力いたします。
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お礼 (佃 康水)
2012-02-05 20:48:24
高橋信之先生、正子先生
フェイスブック立春句会を開催いただきありがとうございました。また、「冬菫」の句を入選18句にお選び頂き誠に有り難うございました。これからも精進して参りたいと思います。
小西 宏様 「冬菫」の句に心温まるコメントを頂き心より感謝申上げます。
松尾節子様 「冬菫」と「立春」の句に貴重な選を頂き有り難うございました。
藤田洋子様 祝恵子様「雪」の句に貴重な選を頂き有り難うございました。
藤田洋子様 何時も集計のお世話を頂き有り難うございます
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お礼 (津本けい)
2012-02-05 21:26:47
信之先生、正子先生
フェイスブック立春句会を開催下さいまして有難うございました。信之先生の特選句に「鬼やらう子の部屋開ければ子の匂い」をお選び頂き大変嬉しく御礼申し上げます。正子先生には私の想いのままの句評を頂きまして、嬉しく読ませていただきました。子は夫々中年になりましたが、大騒ぎで豆撒きをしていたのが、ついこの前のようです。
入選句に「薄氷を押せば動くよ泡の玉」をお選びいただき有難うございます。迫田和代様には素敵なコメントを添えていただき有難うございました。「薄氷」の句に桑本栄太郎様、迫田和代様、祝恵子様、多田有花様の貴重な選を有難うございました。「鬼やらう」の句に佃康水様、古田敬二様、川名ますみ様の選を頂戴致しまして有難うございました。高橋秀之様には、「万両」の句に選をいただき有難うございました。
藤田洋子様、いつもお世話下さいまして有難うございます。
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