特に明記しない限り、本稿に述べられる「マレーシア支店」とは、マレーシアの「Companies Act 2016 (CA 2016).」に基づき設立される外国会社をいいます。
外国会社はマレーシア会社登記所(CCM)に登記され、現地の子会社又は支店の形でマレーシアにおける事業を展開することができます。CA 2016においては、外国会社は以下のいずれかに定義されています。
(1) マレーシア国外で設立された会社、企業、社団、協会などの団体
(2) 設立地の法律に基づき訴訟が提起できるか起訴されでき、秘書役などの正式に委任される役員の名義で財産を保有でき、マレーシアに主たる本部又は事業所がなく、法人格もない社団、協会等の団体
支店は外国親会社の延べであり、親会社から独立した法的事業体とみなされないため、商号が外国親会社と一致しなければならず、本社の事業範囲内の活動のみに従事できます。外国親会社は、支店が締結した全ての契約書による法的義務、責任、債務を負います。
支店は本社の同じ事業活動が行えますが、前提として当該事業活動はマレーシアで禁止又は制限されてはなりません。例えば支店は卸売・小売業が行えません。卸売・小売業に従事する外国会社はマレーシアで法人格のある会社を設立する必要があることを、マレーシアの国内取引・生活費省(Ministry of Domestic Trade and Cost of Living)はガイドラインに定めています。
支店はマレーシア在住の代理人を1人以上委任する必要があります。代理人はCA 2016によるコンプライアンスの事項を対応します。支店はCA 2016を違反し、罰則を受ける場合、代理人は全ての罰則に対して個人的に責任を負います。但し、代理人が責任を負うべきではないことを裁判所に承認された場合、この限りではありません。
さらに、支店はマレーシア国内にレンタルオフィスを持つ必要があります。支店は、現地従業員及び外国人従業員の雇用が制限がありませんが、外国人従業員を雇用する前に、当該外国人の就労ビザを申請・取得する必要があります。支店はマレーシアで株式を発行しないため、株式に関する規制の対象となりません。
- 支店を設立するメリット
マレーシアで支店を設立するメリットは次の通りです。
(1) 外国会社は事業拡大のために各国・地域の新たな市場に進出できるようにします。
(2) 支店は法人格を有せず、外国親会社に依存する傾向があるため、外国親会社は支店の活動、経営上の意思決定に対して絶対的な支配権を有します。
(3) 支店は法人格も定款もないため、設立の手続きが簡単です。
- 支店の基本構造
マレーシア支店を設立する基本要件は次の通りです。
(1) CA 2016によるコンプライアンスの事項を対応するマレーシア在住の代理人を1人以上委任すること。
(2) マレーシアでの登録住所を持つこと(郵便箱を会社の登録住所にできない)。
- マレーシア支店の設立
マレーシアで支店を設立するために、外国会社はマレーシア会社登記所(CCM)に商号を登記し、所定の登記料を納付する必要があります。商号が承認されてから30日以内に、次の書類・情報を提出・提供し、設立の手続きを完了します。
(1) 株主、取締役の氏名、身分、国籍、常住地
(2) 外国会社の株主リスト
(3) 外国会社の株主資本の詳細、又は外国親会社の清算の場合に株主が約束した負担すべき金額
(4) 認証済の外国会社の設立証明書、定款
(5) その他の添付書類
支店は5,000~7,000リンギの登記料をCCMに納付します。金額は外国会社の株主資本によって異なります。金額を決めるためには、外国会社の株主資本を当時の為替レートでリンギに換算する必要があります。外国会社は株主資本がない場合、CCMに7,000リンギの登記料を納付する必要があります。
支店は年次申告書、年度納税申告書、及び支店や親会社の監査報告書を関連当局に提出する必要があります。さらに、外国親会社の商号、定款、取締役、登録住所等の事項が変更された場合、支店は所定の期限内に登記変更をCCMに行います。
税務の観点から、支店は通常、税務上の非居住会社と見なされるため、子会社に対する税制上の優遇措置の対象となりません。また、利息、特許使用料、管理手数料の形で本国に送金された利益には源泉徴収税が課されます。
支店は設立後、日常の取引に使われる銀行口座を開設できます。銀行を選択する際に、支店は、銀行の評判、開設の要件、銀行支店の場所、業務の利便性などを考える必要があります。銀行の要求する全ての書類を提供できる場合、マレーシアで口座を開設するのはより簡単です。多くの銀行は顧客のオンライン認証を実行しており、口座開設の手続きはより速く、簡素化されました。
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