特に明記しない限り、本稿に述べられる「マレーシア会社」とは、マレーシアの「Companies Act 2016 (CA 2016).」に基づき設立される非公開株式会社をいいます。
21世紀初頭以来、テロ資金供与及びマネーロンダリングが世界中では大きな注目を集めています。犯罪者は、さまざまな事業体の抜け穴を悪用し、違法資産を隠します。例えば、ペーパーカンパニーを利用するか、又は株式持分構成が複雑な会社、パートナーシップ、財団、信託などを設立し、法執行機関の検出を回避します。上述の事業体は実質的支配者の透明性が欠如しており、世界各国の政府が犯罪行為を取り締まる障害となっています。
これに対して、マネーロンダリングとテロ資金供与対策を担当する金融活動作業部会(FATF)は意見書を発表しました。各国は事業体の実質的支配権の情報を特定・確認でき、各事業体は充分・正確・有効な実質的支配権の情報を管轄当局に提供して法執行官に提示できるよう義務付けられている。これは、汚職、マネーロンダリング、テロを対応するために政府が講じた重要な措置です。
「Anti-Money Laundering, Anti-Terrorism Financing and Proceeds of Unlawful Activities Act 2001(AMLA)」に基づいて指定された全ての非金融法人、専門家、及びその他の非銀行金融機関(会社秘書役を含む)は、実質的支配権の情報を入手することに重要な役割を果たします。これは、金融システムにおける会社が悪用されるのを防ぎます。
従って、マレーシア会社登記所(CCM)は「the Companies Commission of Malaysia Act 2001」による権利を行使し、CCM管轄下の全ての事業体の実質的支配権報告のガイドラインを発表しました。
- 実質的支配者(Beneficial Owners)とは
実質的支配者とは、事業体を最終的に保有又は支配する自然人です。2016年会社法(the Companies Act 2016)第2条では、実質的支配者は株式の最終的な保有者として定義されますが、代理して株式を保有する者が含まれません。実質的支配者の定義は、同法第8条と併せて解説する必要があります。
CCMのガイドラインは、「株式の最終的な保有者」に保有権及び実質的支配権が含まれることを明確にしました。
- 実質的支配権報告の対象となる事業体
免除事業体(マレーシア銀行、証券委員会によって管理されるか又は証券取引所で取引されている企業)を除き、全ての会社、有限責任パートナーシップ、独資企業、合弁企業は実質的支配権報告の対象となります。免除されない限り、政府所有企業も国営企業も、当該規定を遵守しなければなりません。
- 実質的支配権の情報の責任者
実質的支配権の取得は様々な関係者が関与しているため、それぞれの役割や責任を十分に理解することが不可欠です。
会社の場合、実質的支配権の情報に責任を負う関係者は以下の通りです。
3.1 取締役会
取締役会は、2016年会社法第56(1)、(2)又は(3)条の権利を行使し、株主全員又はその他の者に通知書を発行し、実質的支配権について書面で回答するよう要求する責任を負います。さらに、取締役会は実質的支配権の情報を受け取った後、実質的支配者登録簿に正確に記載することを確保しなければなりません。
3.2 株主
2016年会社法第56(1)又は(3)条に基づく通知書を受け取った会社の株主は、実質的支配者もしくは受託者であるか、又は保有する議決権が契約もしくは約束に基づき第三者に制限されていることを、会社に報告する必要があります。
株主は場合によって、会社が委託者又は契約もしくは約束の当事者を特定するために、当該者の詳細を会社に提供する義務を持っています。
3.3 第56(2)条に基づいて通知を受けたその他の者
第56(2)条に基づいて通知を受けた会社の株主でない者は、実質的支配者であるか、又はガイドラインに記載されている基準の1つ以上を満たしていることを、会社に報告する必要があります。同じく、その者は、その受託者の身分を通じて議決権株式を保有する人の詳細を提供する必要があります。
3.4 会社秘書役・代理人
第56(4)条に基づき、会社秘書役は、実質的支配権の情報を実質的支配者登録簿に正確に記載することを確保する必要があります。さらに、会社秘書役は実質的支配権の情報をCCMに提出する責任もあります。
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