タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書) 志賀 櫻 岩波書店 2013-03-20 by G-Tools |
宣伝文句より
「税制の根幹を破壊する悪質な課税逃れ。そのカラクリの中心にあるのがタックス・ヘイブンだ。マネーの亡者が群れ蠢く、富を吸い込むブラックホール。市民の目の届かない場所で、税負担の公平を覆すさまざまな悪事が行われている。その知られざる実態を明らかにし、生活と経済へ及ぼす害悪に警鐘を鳴らす。」
著者によればタックス・ヘイブンで行われている悪事には「高額所得者や大企業による脱税・租税回避」だけでなく、「マネー・ロンダリング、テロ資金への関与」「巨額投機マネーによる世界経済の大規模な破壊」もあるそうです(6ページ)。本書では、タックス・ヘイブンとは何かを説明したうえで、そのような悪事を具体例を交えて解説しています。著者は、大蔵省、国税庁、金融監督庁などにおいて、国際的な租税回避やマネー・ロンダリングへの対策にかかわっており、OECD、各国政府、日本政府などの対応についてもふれています。
監査法人であれば、特に、金融部や国際部所属の人は、読む価値がありそうです(この程度のことは知っている、実際の取引も経験しているという人は別ですが)。オリンパス事件にも軽くふれています(96ページ)。この本に書かれているような知識をオリンパスの監査チームが共有していれば、タックス・ヘイブン国の銀行に預けられた巨額の預金のリスクを正しく把握できていたかもしれません。
当サイトでも何回か紹介した「タックスヘイブンの闇」もよい本ですが、本書は、日本の個人や企業が関与した事件、日本の税制などにもふれており、また、簡潔に全体像を説明しているので、より読みやすくなっています。
タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている! ニコラス・シャクソン 藤井清美 by G-Tools |