先日破綻したATTという会社が仕組んでいた循環取引に、KISCOという素材商社(非上場、有報提出会社)が関わっていたという記事。
「ATT(東京・両国)の柴野恒雄社長は6月22日付で取引先に送付したレターで「これまでの中国生産品として処理してきたものは、全て(中略)循環取引です。全て私の一人の指示で(中略)実行してきました」(ママ)などと書き残し行方をくらました。
ここまでは本誌の想定内だったが、次にいささか想定外のことが起きた。翌日から素材商社のKISCO(大阪市中央区)が「海外取引の一部で循環取引詐欺事案による被害可能性を認識した」と主力取引先に出向いて説明を始めたのだ。フィルムをATTから仕入れて中国企業に転売する商流で最大70億7700万円もの焦げ付きが出たという。」
「KISCOは非上場ながら1921(大正10)年創業の老舗で、2016年3月期の売上高は978億円に達する。トーマツの会計監査を受けており、有価証券報告書の提出会社でもある化成品業界の有力商社だ。...
KISCOは17年3月期決算を一旦撤回し、近畿財務局への有報提出を8月末まで延長するとともに特別調査委員会を設置して一連の取引の対象物品の実在等を確認することとなった。
増収で推移してきた過年度の決算訂正も避けられない。「架空売上高は累計で360億円規模らしい」(取引先)と噂されている。...」
EDINETを見ると、8月31日付で、2017年3月期有報や過年度の訂正報告書が出ています。
有報提出に関するプレスリリース。
http://www.kisco-net.co.jp/news/pdf/release20170831.pdf
過年度分として最も影響が大きかった2016年3月期は...

売上の15%ほどが架空だったということになります。前の期から架空売上額は約3倍になっています。監査人は、分析的手続で異常に気がつきそうなものですが...。
過年度分全体で、200億円程度の架空売上です。2017年3月期分を含めると、噂どおり300億円超の売上が架空だったのでしょう。
また、単体決算と連結決算の修正額が同じとなっています。つまり、単体決算での修正ということで、海外子会社の管理がまずかった(そして海外監査人の監査に不備があった)という話ではなさそうです。
調査報告書。
http://www.kisco-net.co.jp/news/pdf/release20170814.pdf
2017年3月期有報の連結財務諸表注記より。
「(特定仕入先が仕組んだ架空取引に基づく損失)
当社は、当社が行う取引の一部に関して、当該取引の対象物品の実在性等の確認のため、社外監査役に加えて社外専門家を交えた特別調査委員会を設置し、平成29年8月14日付で特別調査委員会の調査報告書を受領し、調査結果の概要と今後の対応方針等につき臨時取締役会で承認し、公表しました。
当社は、当社の特定仕入先が仕組んだ取引の対象物品が存在しない架空取引に基づく資金循環に巻き込まれたものであり、当年度における同社からの仕入及び特定の販売先への売上を計上していません。
当該取引に関連した損失について、架空取引関連損失として特別損失に計上しております。
なお、当該取引に関連した税金費用の還付金を含む貸方計上となる項目については、税務上の取扱いが確定した時点で計上する方針です。」
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