会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

メタップス、深夜の決算発表の裏に監査法人との協議難航 ICO巡り (日経より)

メタップス、深夜の決算発表の裏に監査法人との協議難航 ICO巡り (記事冒頭のみ)

先日当サイトでも会社のプレスリリースを取り上げましたが、メタップスがICOの会計処理などをめぐって監査人ともめているという記事。

仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)に関する会計処理問題が浮上している。きっかけが15日に決算発表した、決済代行サービスなどを手掛けるメタップス。昨年ICOを実施したが、会計処理を巡り監査法人との協議が難航。深夜に決算を発表する異例の事態となった。」

問題となっている取引と会計処理は...

「ICOでは企業などが「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行。事業に賛同する投資家はビットコインなど流通性の高い仮想通貨で代金を払う。メタップスの韓国子会社の場合、昨年のICOで仮想通貨イーサリアムを当時のレート換算で約10億円調達した。

その会計処理方法を巡り、監査を担当するPwCあらた監査法人との協議が難航しているもよう。仮想通貨自体の会計ルールについては、日本企業の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)が議論を重ね、昨年12月に公開草案をまとめた。だが、ICOについては法律上の位置づけが明確でなく、会計ルールの策定は見送った。そのため会計処理は個々の企業や監査法人に任されているのが現状だ。

メタップスの場合、ICOで得た資金を貸借対照表(BS)上の負債として取得時価格で計上した。だが前例は少なく「どの勘定科目に計上するかを含め、見当がつかない」(公認会計士)との声もある。BS計上時の価格や、イーサリアムの値上がり益をいつ計上するかも問題となる。」

ASBJも、基準設定の必要性は認識しているのかもしれませんが、へたに基準を作ることによって、ICOというスキーム自体を公けに認めることにもなりかねないので、難しいところなのかもしれません。

なお、会社のプレスリリースによると、もめているのは会計処理だけでなく、監査法人は、仮想通貨の実在性やセキュリティについても、調べているそうです。

このケースに限らず、監査法人は、ICOに対して冷たい態度を取っているそうです。

「訴訟リスクなどを避けたい監査法人としては、できれば関わりたくない案件。中国や韓国でICOが禁止されるなど世界で規制の動きが広がっていることもあり、一部では監査対象企業にICOを実施しないように求めているようだ。」

会社に対して、何かの取引をやらないように求めるというのは、監査人としての権限を超えているようにも思われます。会計処理基準が決まっていないからという理由では、取引を実施しないよう求める理由にはならないでしょう。しかし、その取引が、法令的・商道徳的に相当あやしいという場合には、それをやめるようにとアドバイスすることは、監査人の役割に含まれるのかもしれません。場合によっては、監査人があやしい取引を容認したと取られないように、監査契約を打ち切ることも検討すべきでしょう。

日経記事にもあるように、プレスリリースで監査法人と協議済みであるかのように書いていた箇所を訂正しています。

(訂正)2018年8月期第1四半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出及び承認のお知らせ(メタップス)(PDFファイル)

(訂正)(開示事項の経過)当社連結子会社のICOに伴う会計処理について(メタップス)(PDFファイル)

当サイトの関連記事(メタップスのこの件に関するプレスリリース(訂正前)について)

仮想通貨関連記事。

ビットコインなど仮想通貨が急落、規制強化への懸念で(ロイター)

「韓国の聯合ニュースによると、金東ヨン(キム・ドンヨン)企画財政相はラジオで、政府として「不合理な」仮想通貨投資に対し一連の取り締まりを準備すると示唆したという。

中国でも、中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝・副総裁が仮想通貨の取引所取引や個人・企業が提供する仮想通貨関連サービスを禁止すべきとの見解を示した。同国の当局は昨年、国内の仮想通貨取引所を閉鎖し、仮想通貨の急落を招いたが、後に相場は回復した。」

「最近の売りで、ビットコインは昨年12月半ば時点の高値である約2万ドルから40%前後下落し、時価総額1300億ドル程度が失われた。」

専門家というほどでもないようですが...

専門家が警鐘「仮想通貨ICOはほとんど詐欺」(ハーバービジネスオンライン)

「“仮想通貨は儲かる”という幻想に拍車をかけたのは、昨年金融庁が設けた、ビットコインの取り引きについての法律とガイドラインだという。

「金融庁主導の法律が出て以降、ICOが金の卵を生むガチョウになってしまった。本来であれば、企業のIPOと同じでどんな技術で、どんな運営をしているかを明示しないといけない。ただ、その段階から怪しいものばかりなんですね。東南アジアの政府と連携していると称したり、有名人を呼んで豪華にセミナーをするなど。こういった形で、見掛け倒しがほとんど。今は、多くのベンチャーも参入してきています」」
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