会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「有報の株主総会前開示」を考える(日経より)

「有報の株主総会前開示」を考える(記事冒頭のみ)

岸田首相が提唱した「有報の株主総会前開示」についてのコラム記事。

「岸田文雄首相は3日、資産運用会社の国際組織トップらとの会合で、有価証券報告書の株主総会前開示について環境整備を検討する意向を表明した。日本の企業統治改革が進むなか、ほぼ唯一、手つかずで残る問題だ。現実を踏まえ、建設的で柔軟な議論をしたいものだ。」

解決策は、(新しいアイデアというわけではないと思いますが)「総会の有報後開催」だそうです。米ディズニー社の2023年度(9月決算)の年次株主総会は、今年の4月3日だったとのことです。

総会の開催時期を決算日から大きく遅らせると、会計監査人の選任(交代の場合)はどうなるのでしょう。会社法上、会計監査人は会社の機関という位置づけで、選任は総会決議が必要です。後任の監査人は、総会で承認されるまでは、新年度の監査に着手しないのが原則でしょうから、新年度の監査になかなか取りかかれないということになります。実際は引き継ぎ業務などとして承認前から手続きをやるのでしょうが限度があります。そうすると、いったん、前任監査人に有報提出後退任してもらって、一時会計監査人として後任の監査事務所を選任するという方法もありそうですが、会社法の規定を無視した脱法行為という批判もあるでしょう。

そもそも、会計監査人を、役員などと同じ会社の機関とするのがおかしいと思います。会社から独立した存在のはずなのに、会社の機関であれば、大きなくくりでいえば、会社の内部者ということになってしまいます。株主代表訴訟の対象にもなって、役員以上の多額の賠償金を請求されることもあります。

むしろ、請負契約として、監査業務を受任するという形がスッキリしています。もちろん、会社の執行部が勝手に監査契約先や契約内容を決めるのはよくないでしょうが、監査役・監査役会や監査委員会が契約の承認に関与するルールにしておけば問題ありません。

(補足)

(会計監査人はいままでどおり会社の機関だとして)別の方法としては、監査人選任の承認を、前倒しでやっておくということも考えられます。例えば、2024年3月期の総会を、2024年10月に開催するとして、その総会では、すでに始まっている2025年3月期ではなく、その次の2026年3月期の会計監査人を選任するようにします。前任からの引き継ぎ時間もたっぷり確保できて、一石二鳥かもしれません。現行の会社法上認められるのかはわかりませんが...。

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