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アダニショック、世界揺るがす インド版エンロン事件か(日経より)

アダニショック、世界揺るがす インド版エンロン事件か(記事冒頭のみ)

米国の空売り投資会社ヒンデンブルグ・リサーチの調査が指摘したインド財閥アダニ・グループを巡る不正会計、株価操縦疑惑を取り上げた記事。

告発のタイミングについて。

「ヒンデンブルグがこのタイミングでアダニの疑惑を告発したのは、アダニが予定している2000億ルピーの資金調達計画と無縁ではないだろう。中核のアダニ・エンタープライゼズが実施する公募増資に伴う株式売り出しを巡り、投資家による株式購入の申し込みが27日に始まった。初日の申し込みは全体の枠のわずか1%という惨憺(さんたん)たる結果になった。株の猛烈な売りで仮条件の下限を割り込む水準まで株価が落ち込んだためだ。」

会社側の反論。

「乾坤一擲(けんこんいってき)の巨額資金調達の成功が脅かされる事態にアダニ・グループは黙っていられない。「(ヒンデンブルグの)リポートは下心に駆られ、誤情報と隠された事実で意図的に構成された悪意あるものだ」。関連資料を含め400ページ以上にわたってヒンデンブルグの主張に反対する文書を29日に発表した。巨額の借り入れで急成長を遂げることへの批判について、負債を利益で割ったいわばレバレッジ比率が近年低下している、などとした。」

この会社だけの問題ではないようです。

「「アダニショック」は国内に波及している。国営インドステイト銀行(SBI)は27日に5%安となった。アダニに多く貸し付けているとされ、「万が一」があった場合の経営への影響を懸念した売りが及んだ。国営インド生命保険会社ライフ・インシュアランス・コーポレーション・オブ・インディア(LIC)も3%下落した。アダニ系株を多く保有しているとされるからだ。」

インドの株式市場全体からの資金流出につながりかねないガバナンス(企業統治)の問題が意識され、外国人投資家による売りが殺到している。国立証券保管機関(NSDL)によると、外国人による売越額は1月(27日まで)、1700億ルピーとなり、22年6月以来の売越額になっている。インド株全体では22年下期は堅調な相場が進んでいた。アダニをきっかけに、インド企業全体のガバナンスが足元では揺らいでいる。

もしヒンデンブルグの報告の通りにアダニ・グループが不正に手を染めていたとすれば、市場のさらなる混乱は避けられない。2001年に巨額不正会計を起こした米エネルギー会社エンロンの破綻劇では、市場で企業会計に対する不信感が高まり、投資家心理を冷え込ませた。インド株の不信を招くだけでなく、アジアや他の市場へのマネーの停滞を招く可能性も出てくる。」

インド版エンロンになるのか...。ヒンデンブルグの指摘によれば、アダニは経営者ファミリーのペーパーカンパニーを使ったさまざまな操作を行っているようですが、SPCを多用して利益をつくっていたエンロンと、似てなくもありません。

ヒンデンブルグについて、少し説明している記事。

大勝負に出たNYの空売り投資家-標的はインド屈指の企業帝国アダニ(ブルームバーグ)

「ヒンデンブルグのアンダーソン氏は電気自動車(EV)メーカーの米ニコラと米ローズタウン・モーターズの問題を指摘し、ウォール街で注目を集めた。同氏はツイッター株下落を見越した取引をしていたこともあるが、イーロン・マスク氏がツイッター買収に向け動くと、昨年7月にツイッターに対し強気に転じた。

ただ、小さな企業であるヒンデンブルグがアダニ・グループほどの力のある大企業を敵に回したことはない。ヒンデンブルグにとっての問題は、インドの財界のみならず政界でも幅を利かせているアダニ氏を巡る警告に他の投資家が耳を傾けるかどうかだ。」

「アンダーソン氏のヒンデンブルグはニューヨークに本社を置いているが、正確に言えばリサーチとトレーディングの会社で、外部資金を運用するヘッジファンドですらない。マンハッタンの金融界でさえ、アンダーソン氏はそれほど知られていない。

それでもアンダーソン氏は最近成功を収めている。1937年に爆発したドイツの飛行船「ヒンデンブルク号」を社名の由来とするヒンデンブルグは2020年以降、約30社に狙いを定めたが、ブルームバーグ・ニュースの算出によると、問題指摘の翌営業日、これら企業の株価は平均約15%下落し、半年後には26%値下がりした。」

「アンダーソン氏と同氏のチームは企業を綿密に調べ、不正行為を探っていく。ヒンデンブルグが「うその海」と呼んだニコラのトレバー・ミルトン元会長は昨年10月、投資家を欺いた罪で有罪となった。

アンダーソン氏はコネティカット州の小さな町で育ち、コネチカット大学でビジネスの学位を取得。大学在学中にしばらくイスラエルに住み、ヘブライ大学で授業を受けながら救急救命士として働いた。その後、金融分析会社に勤め、それから富裕層の投資会社のための取引を調べる仕事に就いた。「詐欺を見つけること」が自身の情熱だと同氏は言う。」

アダニのCFOの発言を取り上げた記事(動画あり)(現地メディア?)。監査人として小さな会計事務所を起用していることについて弁解しています。

Adani vs Hindenburg: Group CFO defends auditor Shah Dhandharia, says they support small firms (Business Today)

小規模企業振興のためなのだそうです。

Adani Group, in response to Hindenburg Research’s accusation that they enlisted Shah Dhandharia, a small accounting firm to audit the conglomerate, said that it is their responsibility to ensure that homegrown, small companies get all the support they require to develop into big companies

ヒンデンブルグも、5~10人ぐらいしかいないではないかといっています。小さな事務所が、立派な会計事務所に発展していくのを支援して、何が悪いのだとも述べています。

Adani Group Chief Financial Officer Jugeshinder Singh, in an interview with Business Today Television Managing Editor, Siddharth Zarabi, said that the company that is accusing Shah Dhandharia of being a small firm is itself a company of 5-10 employees, who work out of a WeWork desk. “Look at the irony! Also do you think as a large Indian corporate we have no responsibility to develop Indian vendors? We have no responsibility towards developing the Indian institutional framework? So, if we support the development of a small firm to become a proper, good, accounting firm, how is that a bad thing? Is it not our responsibility? We have 21,000 small vendors,” said Singh. 

ちょっと苦しい言い訳では...

ヒンデンブルグの指摘が影響したのでしょう、アダニは大手会計事務所に監査させるそうです(会社の公式発表ではない)。

印アダニ、グループ会社の独立監査を計画=現地紙(ロイター)

「インドの財閥アダニ・グループは、空売りで知られる投資会社ヒンデンブルグ・リサーチに不正疑惑を指摘されたことを受けて、コーポレートガバナンス(企業統治)と監査慣行を評価するために6大会計事務所の一つを雇う計画だ。インドの経済紙ミントが30日、関係者の話を基に報じた。」

「監査では、特定の関連当事者取引、会計慣行、企業のコーポレートガバナンス基準の順守状況を評価するとともに、ヒンデンブルグの主張の正当性を検討するという。」

中小監査事務所がダメだとは思いませんが、さすがに会社の規模とのバランスは必要でしょう。

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