会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

三菱UFJ、2千億円の特損計上へ 子会社の株価が低迷(朝日より)

三菱UFJ、2千億円の特損計上へ 子会社の株価が低迷

三菱UFJフィナンシャル・グループが、2019年4~12月期決算で2074億円の特別損失を計上する見込みだという記事。昨年末に会社が発表したそうです。

「出資先で4月に子会社化したインドネシアの大手銀行バンクダナモンの株価低迷の影響。」

「傘下の三菱UFJ銀行が17年末から出資しており、4月末には約4200億円を追加で出し、出資総額が約6800億円になった。出資比率は94・1%に高まり、邦銀による海外銀行買収では最高額。しかし、4月30日時点で8850ルピア(約70円)だった株価がその後、4千ルピア台で低迷。12月30日時点では3950ルピア(約31円)だった。」

メガバンクはどこも海外で上場しており、海外向けには海外基準(米国基準・IFRS)を使っているはずですが、日本向けには日本基準を使っています。今回の特別損失は、上場子会社の株価が下がって単体決算で子会社株式の評価減をすると、連結決算上ののれんもそれに合わせて償却するという日本基準独特の処理によるもののようです。

2020 年 3 月期第 3 四半期決算(日本基準)におけるのれん一括償却に伴う特別損失の計上について(三菱 UFJ フィナンシャル・グループ)(PDFファイル)

「2019 年 12 月 30 日時点のバンクダナモン株式の市場価格が取得原価と比較して 50%以上下落したことに伴い、三菱 UFJ 銀行は当該株式の減損処理を行います。その結果、MUFG は連結決算において、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の規定に基づき、本償却を行うことといたしました。」

「本償却は、2020 年 3 月末におけるバンクダナモンの株価が回復した場合には、2020 年 3 月期通期決算において戻入れを行いますが、株価が回復せず 2020 年 3 月期通期決算においても一括償却した場合は、その後戻入れは発生いたしません。」

企業会計基準委員会では、「子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係」ということで、基準見直しのテーマにあがっていますが、特に進展はないようです。

「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」の改訂(2019年12月)(企業会計基準委員会)(再掲)

「(2) 子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係

(主な内容)

日本公認会計士協会から公表されている会計制度委員会報告第 7 号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」に定められる連結財務諸表におけるのれんの追加的な償却処理について、子会社株式及び関連会社株式の減損とのれんの減損の関係を踏まえ、検討を行っている。

(検討状況及び今後の計画)

2017 年 10 月より検討を開始している。開発の目標時期は特に定めていない。」

実質的には、のれんの減損処理なのでしょうが、形式的には別扱い(償却処理)なので、注記も不十分なのでしょう。また、単体決算で評価減したからといって、連結上、減損会計基準を無視して、損失処理するというのも、理屈に合わない面があります。ただ、単体決算と連結決算の整合性という点では、メリットはあるのかもしれませんし、日本基準ののれん減損基準は海外基準と比べて甘すぎる、別ルートでの損失処理も認めるべきという見方もあるでしょう。
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