会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「オリンパス監査引き継ぎ」には問題なし-新日本監査法人の外部委(ブルームバーグより)

「オリンパス監査引き継ぎ」には問題なし-新日本監査法人の外部委

オリンパスの監査を調査している新日本監査法人の外部委員会が、調査の途中経過を報告する記者会見で、あずさ監査法人からの引き継ぎに問題がなかったとの認識を示したという記事。

「オリンパスを担当している新日本監査法人について、あずさ監査法人からの引き継ぎと監査判断の妥当性などを検証する同監査法人の外部委員会は、引き継ぎについては問題がなかったとの認識を示した。」

「新日本はあずさを引き継ぎ2010年3月期からオリンパスを担当。同社の損失隠し問題を調査した第三者委員会の報告書が、監査法人のチェック体制に「問題なしとしない」と指摘したことを受け、検証委を設置していた。郷原氏は会見で、第三者委は監査法人の責任について「十分な調査をしていない」とも語った。」

監査法人の引き継ぎ「規定上問題なし」(TBS)

こちらの記事も引き継ぎに焦点を当てています。

「「あずさ監査法人から新日本監査法人への業務の引き継ぎに関して、法令上、規定上問題となる点は見受けられない」(新日本監査法人検証委員会 郷原信郎委員)

 ・・・

 27日の中間報告では、引き継ぎの場において、「新日本は規定で定められた必要な項目はすべて質問した」として、「規定上問題はなかった」という見解を公表しました。

 その上で、オリンパスの第三者委員会の報告書に対しては、「内容が不十分で記述には疑問がある」と反論しています。」

引き継ぎは質問したからいいというものではなく、その質問などの引き継ぎ手続の結果を、引き継いだ後の監査手続や証拠の評価に反映させたかどうかが、問題となります。その点は、十分調査したのでしょうか。

また、オリンパスの第三者委員会報告書に対して反論するのはよいと思います。しかし、新日本が無限定適正意見を表明した訂正報告書は、第三者委員会報告書にそった内容で作成されたと推測され、それを否定するということは、新日本の無限定適正意見にも「疑問がある」との見方にもつながりかねません。(第三者委員会報告書の決算訂正の根拠となった部分は信用できる(したがって無限定意見が出せる)が、監査に関する記述は信用できないという理屈になります。)

監査検証委、オリンパス第三者委の報告を否定(読売)

「オリンパスの決算監査は2009年3月期まであずさが、その後は新日本が担当している。オリンパスの依頼で損失隠し問題を調査した第三者委員会は6日の報告書で、両監査法人の引き継ぎについて不十分な点を挙げて「問題なしとしない」としていた。

 これに対し、新日本の依頼で調査した今回の監査検証委員会は、第三者委の報告書について「監査法人の部分は正確ではない」と指摘した。」

監査法人の新日本、予定の中間報告を先送り(産経)

「同委員会は、新日本と、同監査法人に業務を引き継いだあずさ監査法人とのやりとりが適正だったかなどを調査してきたが、あずさからの協力を得ることができなかったという。

 委員長で元大阪高検検事長の大泉隆史弁護士は「あずさ監査法人からの協力を得られず(中間報告として)結論を出すには公平性に欠ける」と説明。来年2月に目指していた最終報告の取りまとめについて「書面として公表するか検討したい」と慎重な姿勢を見せた。」

あずさとしては、利害が対立する新日本の調査に協力する義務はもともとないのですから、あずさのせいで結論が出せないようにいうのは、不合理です。

オリンパス監査検証委郷原氏「英社買収の全容解明に至ってない」 (日経)

「オリンパス(7733)の損失隠しを巡り新日本監査法人が外部有識者を集めて設置した監査検証委員会の郷原信郎委員(名城大学総合研究所教授)は27日、記者会見し、オリンパスによる英医療機器メーカー、ジャイラス買収を巡る経緯について「調査の途中であり、全容の解明に至っていない」との認識を示した。調査担当の郷原氏は12日、委員会の初会合後の記者会見で、ジャイラス買収に伴う会計処理について、監査法人の交代による引き継ぎと合わせて調査テーマに挙げていた。」

問題となるのは、ジャイラス社優先株の買い取りの会計処理だと思われます。オリンパスの報告書では、監査法人の審査会で議論のうえ、のれん計上を承認したように書かれていたと思います。さらには、オリンパス報告書によれば、監査人はIFRSの規定まで示して、それまで負債に計上されていた優先株を早く資本に振り替えないと、振り替えの際に時価評価しなければならなくなる(したがって損失計上される)というアドバイスまでしています。会社側としては、できるだけ責任を他に押し付けたいと考えるでしょうから、そのような報告書の記述がどこまで信用できるのかわかりませんが、監査人側でも、会計処理を容認した経緯を調べるべきでしょう。

オリンパス監査検証委高田氏、損失隠し理由「恐らく踏み込めず」(日経)

検証委員会の委員の発言です。

「損失隠しはあずさ監査法人の時代から始まり、2009年に新日本監査法人に交代している。新日本監査法人が監査を始めた時期には財テクによる損失を隠すための取引が進んでおり「取引は新日本監査法人の監査対象になっていなく、処理済みだったと理解している」と話した。」

たぶん記事が正確ではないのだと思いますが、オリンパスの報告書やさまざまな報道によれば、ジャイラス社の優先株を買い取って多額ののれんを計上したのは、2010年3月期であり、新日本に交代後です。したがって、隠された損失は「処理済み」ではなかったはずですが・・・。
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