IFRSと中小企業会計に関する、河崎照行・甲南大学会計大学院長へのインタビュー記事。
「――日本では、2015年、または2016年にIFRSの強制適用が始まるが、取り組みを始めているのはまだ一部の大手企業に限られている。中小企業にとって、導入準備にかかる負担は大きい。IFRSには、中小企業向けの例外措置はないのか?
上場企業であれば、原則として全てIFRSが適用される。また、非上場の中小企業であっても、社会的説明責任が大きい場合は、適用を推奨される可能性がある。
よい例が、昨年7月、IASB(国際会計基準審議会)によって公表された「中小企業版IFRS」(『IFRS for Small and Medium-sized Entities』)だ。
これは言わば「簡易版IFRS」というべきもの。内容的には、IFRSのフレームワークを基礎として、中小企業に関連しない項目や複雑な会計方針のオプションが削除されている。
適用対象となる企業は、「社会的説明責任のない企業であり、かつ一般目的財務諸表を公表する企業」となっている。
このようなケースを見てもわかる通り、中小企業と言えどもIFRSと無縁ではいられないのが現状だ。」
中小企業版IFRSについては、IASBのサイトから入手できます(日本語版はまだありません)。
IFRS for SMEs
ただし、金融庁の「誤解」では「非上場の会社(中小企業など)に対するIFRSの強制適用は、将来的にも全く想定されていない」と言い切っています。IFRS中小企業版もどこかで研究はされていると思いますが、これを取り入れようとする動きは日本国内ではまだ見当たりません。
「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」の公表について
河崎教授は英国の制度についてふれています。
「――諸外国には、理想的な制度的対応が行なわれているケースはあるのか?
1つの試みとして挙げられるのが、企業に対して階層的な会計制度を構想している英国のケースだ。
一口に企業と言っても、社会的説明責任の有無や資本金の規模など、様々な側面から区分けができる。上場している中小企業もあれば、非上場の大企業もあるため、そもそも「大企業と中小企業」という区分だけでは、線引きが難しい。
その点、英国が検討しているアプローチは「3層構造」になっている。
たとえば、上場企業や社会的説明責任を有する大規模企業およびその子会社には「完全版IFRS」を適用、社会的説明責任を有さない大規模企業および中規模企業には「中小企業版IFRS」を適用、小規模企業には英国独自の「小規模企業向け財務報告基準」(FRSSE)を適用、といった具合だ。
日本でもこのようなアプローチを考えるなら、まずは「中小企業会計指針」の見直しを検討する必要がある。IFRSの適用が避けて通れなくなった現在、中小企業の会計を含め、わが国の会計制度を抜本的に改革する絶好の機会が訪れているとも言えるのだ。」
日本の場合は、会計監査の対象になっていないような大部分の中小会社は、会社法上ごく緩いルールしかないわけですから、新たな規制を設けないという意味で、あえて野放しにしておくという方法もありえます。もちろん、立派で使いやすい指針ができて、それがデファクト・スタンダードになるという可能性はあるでしょう。
中小企業向け会計基準、来年にも導入 シンガポール(アジアエックスより)
シンガポールでも、中小企業向けの会計基準が導入されたそうです。プレスリリースをみると、IFRS中小企業版を導入するようです。
STATEMENT OF INTENT - SINGAPORE FINANCIAL REPORTING STANDARD FOR SMALL ENTITIES
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